野球賭博の罪、テレビの罪
元千代大海(佐ノ山親方)が野球賭博疑に関与していたと週刊新潮が報じた。
朝のワイドショーはいっせいにこれを取り上げていた。
本人は、全くの捏造記事でウソばっかりだと言っているようだ。
しかし、テレビの報道のやり方は半ば犯人扱いをしている。
犯人扱いのような話をしているのだが、「週刊誌報道によると」と一言添えるのを忘れない。
朝ズバのみのもんた氏の取り上げ方は完全に犯人扱いだった。
アシスタントの局アナが、みの氏の会話をさえぎって「週刊誌の報道ではそう言われています」とフォローしていた。
ここがテレビ報道の許しがたい悪行だ。
報道しているのは週刊誌であって、当のテレビ局ではない。
もし、佐ノ山親方の言っていることが事実で、週刊新潮の記事が捏造だったとしても、報道したのは新潮社であってテレビ局にはなんの落ち度もないということになる。
報道の自由は保証それなくてはいけないと思うが、報道される人の人権も尊重されなければならない。
週刊誌や新聞は、独自の取材で自らの責任で記事を書いている。
一方テレビは、ことに最近のテレビは独自の取材を忘れているように思える。
ワイドショーのみならずニュース番組においても、「週刊誌によると」とか、「○○新聞によると」と言う前置きをつけて報道する。
週刊誌が、いくら売れたところで100万部は売れないだろう。
テレビの報道たるやその数倍、数十倍の人が目にするであろう。
その影響力をもって、週刊誌の記事を垂れ流し報道する。
しかも報道の内容については責任をとらなくていいように、「週刊誌によると」であったり「新聞によると」という報道のやり方をする。
さらに話の面白い部分だけを誇張してくり返し報道する。
万一報道内容が間違っていたとしても、悪いのは週刊誌であり、新聞社になるわけだ。
マスコミは、松本サリン事件を忘れてしまったのだろうか。
松本サリン事件は、私の心に深い傷を残している事件だ。
あのときマスコミは、被害者の河野さんを犯人扱いにして報道していた。
犯人と断定することはしなかったが、視聴者や読者に、河野さんが犯人だと思い込ませるような情報ばかりを報道していた。
私も、河野さんが犯人に間違いないと思っていた。
あのとき、私の身の回りのすべての人が河野さんを犯人扱いしている中で、私の妻が「あの人犯人じゃないと思うけどなあ」と言っていた。
河野さんの話し方は、温厚で誠実で、嘘をいっているようには思えないと言っていた。
そんな妻に対して私は、河野さん以外に犯人は考えられない。
犯人だからこそ善人を気取っているんだ。
何人もの人を殺していて、おまけにその影響で自分の奥さんまで重体にさせておいて、被害者面しているのは許せない。
河野さん以外に犯人はいないという理論を、これでもかこれでもかと挙げて家内を罵倒したものだった。
しかし、河野さんは犯人ではなかった。
被害者だった。
サリンにより奥さんは意識不明のまま14年を過ごし、その間松本さんはずっと奥さんを介護し続けた。
サリンに最愛の奥さんを奪われた悲惨な被害者だった。
そして、さらに大きな被害は、被害者として同情もされずに、犯人扱いにされて日本中に過激な報道をされたことだろう。
このとき、私が河野さんを犯人だとした情報は、すべてマスコミから与えられたものだということだった。
情報はマスコミが、マスコミの思惑にそってたれ流したものだった。
私が自分の意見と思って喋っていたことは、ワイドショーでどなたかが喋っていたことの受け売りだった。
結局、河野さんはサリンの被害者と同時に冤罪の被害者になった。
私は、この時のことを忘れない。
さすがにこのときは、各マスコミともに反省の弁を述べた。
マスコミは、このことを忘れてしまったのだろうか。
容疑者は推定無罪であることを心して報道にあたるべきだ。
足利幼女殺害事件で無期懲役が確定していた菅家利和さんが無実になったことは記憶に新しい。
つい最近では、同じく無期懲役の判決を受けていた布川事件の桜井昌司さんと杉山卓男さんの再審が始まった。
いずれも、冤罪事件としてとりあげられ、冤罪事件を起こした警察、検察、裁判所の責任を追及するような報道をしていたが、当の自分たちも冤罪に加担したことへの反省の言葉を聞くことは少ない。
野球賭博も罪だが、罪のない人間を罪人に仕立て上げる罪に比べたら、はるかに小さな罪だろう。
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