朝日新聞、住宅の夢、競売
今朝の朝日新聞の1面トップ記事は、不動産会社や不動産販売会社の関係者にとって、どきっとする内容だった。
「住宅の夢 そばに奈落」という見出し。
副題は「競売09年度6万件」
09年度に新築された住宅は80万戸。
マイホームの夢をかなえた人の陰で、競売以外で売却された分も含めれば、その1割相当の「住宅ローン破綻」が起きているとみられる、という記事だ。
確かにそういった傾向はあるだろうと思う。
しかし、少なくとも私の住む町延岡市では少し様相は違っていると思う。
まず、ここ数年新築住宅の受注が非常に低迷している。
不動産業者が口を揃えて言っているのは、「土地が動かない」という言葉だ。
そして、次に出てくるのが「中古住宅が売りにでてこない」という言葉。
競売になる物件がまったくないというわけではないのだが、その数は少ない。
新築物件が売れにくいので、新築の建売業者さんの活動もあまり活発ではない。
小さな町なので(といっても人口は13万人あるのだが)、地縁血縁、友人知人、知り合いだらけで、あまり強引に売りつけるような商売をしている会社はいない。
数年前に圏外の新築マンション販売会社が新築マンションを分譲したが、その会社の販売方法は地元業者にはまねができないほどの熱心さがあった。
のんびりしている宮崎人からみれば、ときとしてその熱心さは強引とも思えるような営業にも思える。
日頃の自分の商売がなんとのんびりしていることかと、見習うべき点もあった。
最近私が相談を受けたお客さんは、圏外のマンション販売会社からマンションを購入していて、支払いが困難になってどうしたらいいかという相談で来られた。
今日の新聞の内容と同じような状況でマンションを購入されたようだ。
地元の銀行では借りれなかったけど、その販売業者さんの提携の金融機関で融資を受けられるとこになって購入を決心したというわけだ。
新聞記事と同じように、マンション販売会社の口車に乗り、そこと提携している銀行から融資を受けたわけだ。
今日の記事では不動産会社と銀行がが諸悪の根源みたいに書かれていた。
たしかに直接的な原因は不動産会社や新築販売業者だろう。
そしてそれに加担する銀行ということになるのだろう。
しかし、一番の現況になっているのは国の経済対策なのだ。
建築は経済的に大きな需要を喚起する。
だから、国は不況対策として建築需要を刺激するような税制改正を行い、金融対策をして新築需要を喚起にやっきになってきた。
それに乗っかったのが不動産会社であり銀行なのだ。
今日の記事で被害者的に扱われている方は、「もともとも無理な借金だった。不動産会社の言いなりになってしまった」と後悔ばかりが口をついていたということだ。
この記事の中で、「銀行や不動産会社に『家賃と同じ返済額と言われ』頭金なしで家を買う人がいる。だが、頭金がない人はぎりぎりで暮らしてきた人。家を買うとローン以外の負担も増え、返済が苦しくなる。」家計の相談に乗るファイナンシャルプランナー藤川太さんはこう警告する。」とあった。
私は不動産業をやっていながら、藤川さんと同じことを言っている。
まずいことに私は言葉の選びかたが悪くて、もっと直接的な言葉で助言する。
「家賃を5万円も払っている。家賃を払うだけでは馬鹿らしいから、家を買いたい」というお客さんに、決まってする話がある。
なにかの事情で今の収入が得られなくなって、家賃を6カ月滞納したら貸家を退去しなければならなくなるだろう。そのときには30万円借金ができることになる。
低利で長期のローンを組めば、月々の返済額5万円で1500万円借りれるのかもしれない。
このローンの返済を6カ月も延滞したら、一括で1500万円支払えという支払い命令がくることになる。
そして、次には競売で売却ということになるわけだ。
競売というのは銀行などの申し立てにより、裁判所が入札により強制的に売却するという制度だ。
競売での価格は市場価格の半値から3割引きくらいなる。800万円から高く売れても1000万円くらいでしか売れないだろう。
競売で家を売却されても、借金は消えるわけではなく売れた価格の残額は借金として残り、金融機関から残額を取り立てられることになる。
だから、安易な考え方で、家賃を払い続けるのはもったいないから家を買うというのだったら、そこのところをよく考えて計画したほうがいいですよ。
という話をする。
この話は常日頃から周りの人によく言っていることで、私の言っていることは正しいと賛同してくれる人が多い。
しかし私の話しに賛同してくれるのは、自分に対して言われたことではないからなのだ。
私は親切だと思って言っているのだが、言われたお客様のほとんどは気分を壊されるようだ。
私の言い方も悪いのかもしれないが、「家賃並みでの支払いで家を買いたい」というお客様にこの話をすると、そのほとんどの方は「自分を貧乏人扱いにした」という感じで気分をこわしてお帰りになる。
頭金が無いお客様についても、藤川太さんと同じ考えなので、「今まで貯金をしない生活に慣れている。家を買ったら節約してなんとか支払いができるというお考えでしょうが、相当気持ちを入れ替えないと支払いが厳しくなりますけど、大丈夫ですか」と、つつ言わなくてもいいことを言ってしまう。
こんな私の無神経とも取れる老婆心的助言に対して、「今までは、これこれの事情で貯蓄はできていないが、これこれの方法で支払いできる家計設計ができているので、家を購入したいのだ」というお客様が、まれではあるがいらっしゃる。
そういった方だったら、私も安心して物件をおすすめできる。
だが、そういった奇特なお客様がごくまれにしかいらっしゃらない。
私は大半のお客様を怒らせてしまっています。
私は不動産に従事して30年、「よくぞ家を買うことを思いとどまらせてくれました」と、お客様に感謝された記憶はない。
一人だけ、「あなたに言われていた頭金ができたので本格的に物件を探して欲しい」とお見えになったお客様がいらっしゃった。
他のお客様のほとんどは、私の助言を余計なお世話と思い、他の不動産会社を訪れていることだろう。
そんなお客様が、自分の考えを肯定してくれる不動産会社と出会い、自分の意にそって物件をすすめてもらい、無理やりにでも銀行ローンをとおしてもらって、その結果支払いが困難になると「不動産会社の言いなりになった」と、すべてを人のせいにして後悔しているということも多いのではないだろうか。
不動産に限らず、詐欺的な投資話なんかで、儲け話に「口車にのってしまった」という言葉をよく聞く。
確かにだますほうが悪いのだが、だまされた方も人の責任だけにはできないように思える。
長くなったけど、今日の新聞記事から徒然なるままに。
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