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2010年8月 5日 (木)

所在不明高齢者問題と個人情報保護法

 所在不明の杉並区113歳の女性については、年金の給付はなかったということだったので、年金受給が目的での事件ではないと思っていた。

 年をとった親が行方不明になっているのに平然としている態度には信じられない思いがあったが、他人にはわからない複雑な親子関係があったのだろうと漠然と思っていた。

 しかしその後の報道で、この113歳の女性には、元都職員の夫の遺族扶助料が支給されていたことがわかった。

 遺族扶助料というのは恩給にあたるものだということだ。

 この遺族扶助料が目的だったとしたら、所在不明の理由に納得がいく。

 足立区の111歳の男性のミイラ化した遺体発見という事件が発覚してからというもの、全国で次々と所在不明の高齢者の存在が見つかっている。

 「関係機関は、家族からの申請がない限り本人を確認する手段がない」

 「記念品等を届けに行った際に、本人に会わせてもらおうとしても、家族がそれを拒否すれば強制的に確認する手段はない」と言う。

 さらに加えて、調査ができない理由として「個人情報」の問題がネックになっているという言を何度も聞いた。

 この「個人情報」というのがくせものだ。

 役所を始めとして、巷で「個人情報だから、お答えできない」「個人情報だから、詳しく聞くことはしない」と言って問題の本質に触れないという風潮がある。

 「個人情報の保護法(個人情報の保護に関する法律)」の制定にあたっては、マスコミでも大きく取り上げられた。

 私も、不動産業という自分の仕事上での個人情報の取り扱いについてどのような注意が必要なのか知っておこうと思い、同法の成立後すぐに同法に関する手引き書を購入した。

 この法律の制定でどんなにややこしい制限がでるのだろうと心配だった。

 しかし、本を開いてすぐに、「自分にはあまり関係のない法律だ」と理解した。

 「個人情報保護法」及び「同施行令」では、5000を超える(5001件以上)の個人情報を個人情報データベース等として所持し事業に用いている事業者を個人情報取扱事業者として、個人情報取扱業者が個人情報を漏らした場合や、主務大臣への報告等の適切な処置を行なわなかった場合に刑事罰が科されるというものだ。

 ここで、知っておかなくてはいけないのは「5000を超える個人情報を個人情報データベースとして保持する」「事業者」を規制する法律だということだ。

 「5000件超の個人情報データーを保持する」「事業者」というと、結構大きな事業者ということになる。

 つまり、「個人情報保護法」は私のような零細会社とは無縁の法律とも言えるわけだ。

 日常会話としての「個人情報」という語感だけで、個人のことには一切立ち入れないわけではないのだ。

 「個人情報」という言葉だけが一人歩きして、いろんな所で必要なデータをだしてもらえずに困っているという問題が発生している。

 関係省庁も「個人情報保護法」の法律的意味を正確に運用するために労を惜しんではいけない。

 蛇足ながら、ちょっとだけ言わせてもらうが、法律は必ず目的があって作られている。

 法律の条文の一番最初の第一章には(目的)もしくは(主旨)が書かれている。

 そして、次に定義が書かれていることが多い。

 法律を知るには、面倒だけど条文に目を通すことだ。

 なにも勉強をすすめているのではない。

 自分の身を守るために、自分にかかわる法律にはちょっと興味をもって老いた方がいいと思うのだ。

 法律家になるわけではないから、条文をながめるくらいでいいと思うが、読んでおくと自分が助かる。

 話を戻すと、「個人情報」の壁があって調査ができないというのは、まったくのまやかしだ。

 1度や2度じゃなく、50年の長きにわたる話である。

 近所の人もなんかおかしいと思っているわけだ。

 本人に会えない理由として、家族の人が「本人は今体調が悪いから会えない」と言われたというものが多い。

 こんなのは、理由にならない。

 本当に体調が悪いのなら、医者にはかかっているのか調べる必要があるだろう。

 本当に体調が悪いのに医者にみせていないのなら、医者にみせる指導をするべきだ。

 個人情報保護法が障害になって調査ができないなどという、まやかしのようないい訳はしないことだ。

 本気で会おうと思えば、法律を味方につけることだ。

 私の身の回りを見る限り、80歳をすぎると多少認知症が入る人が多い。

 認知症がひどくなった場合、法律的には成年後見人という制度がある。

 重度の認知症になって判断能力を欠く状態にある人が行なった行為は無効とされる。

 本人に、まったく判断能力がなくなった場合、裁判所に後見開始の審判の申し立てをして後見人を決めてもらう必要がある。

 そして、その後見人は本人に代わる代理権や取消権をもつし、財産の管理をすることになる訳だ。

加えて、療養看護義務も持つと定められている。

 関係省庁や市町村は、年金が適正に本人のために使われているかどうかを調査する義務と権利をもっていると理解してもいいのではないか。

 法律は運用のやり方次第で敵にも味方にもなる。

 面倒なことにまきこまれないためのいい訳にしないで、常識的におかしい物はおかしとして毅然とした運営をしてもらいたいものだ。

 余談だが、幼児虐待の児童相談所にも同様に、常識的にあきらかに異常だと思ったら強権を発動するべきではないだろうか。

 本気で解決しようと思ったら、法律は味方してくれる。

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