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2010年8月20日 (金)

闘牛場、牛が乱入

 昨日、スペインの闘牛場で牛が客席に飛び込んで観客に襲いかかるというニュースを見た。

 興奮した牛が高さ数メートルの柵を飛び越え、フェンスをよじ登って客席に飛込み、逃げまどう観客に襲いかかる様子が中継画像で映し出されていた。

 テレビの画面は、最初に闘牛場にひっぱりだされた牛を映していたが、自分の置かれている立場がわかっているのか、牛は怒りをあらわにして観客席を睨み付けていた。

 この時点で、闘牛場で牛が暴れて人に襲いかかるニュースなんだなというのはわかったが、まさか2メートル以上ありそうなフェンスを乗り越えて客席に飛び込んでいくとは思っていなかった。

 テレビ画面でアップになった牛が、やおら観客席に突進してフェンスをよじ登ろうとしている姿を見て、「頑張れ!乗り越えろ!」と牛を応援していた。

 客席に飛び込んだら観客が危険なわけで、本当なら観客の心配をしなくてはいけなかったんだろうけど、なぜだか私は牛の応援をしていた。


 闘牛というと、ナポレオンの軍服みたいな衣装を来た闘牛士が赤い布を使って牛を興奮させて、襲いかかってくる牛を直前でさっとかわすという光景だけが印象に残っているが、その繰り返しの中で闘牛士は牛の背中に剣を刺していく。

 それも一気に致命傷になるようなさし方ではなく、急所をはずして何本もの剣を刺していき、最後にとどめをさすということだ。

 私たちはテレビや映画なんかで最初のうちの華やかな部分だけしか見ていないからスペインの伝統文化として何の疑問もなく見過ごしているが、背中に何本もの剣をひきずって、血を流しながら自分に襲いかかる闘牛士という凶悪な敵に向かって勝ち目のない闘いを続け、最後には殺されていく牛を楽しい芸能を見るかのように見続けることのできる日本人は少ないのではないだろうか。


 自然界は弱肉強食の世界で、弱いものは強いものに食べられ、その代わりに弱いものは膨大な子孫を残すということで種を保存させるという食物連鎖の中ですべての生物が生きているわけで、自分が生きるために他のものを殺しているのであって、殺すことが楽しみで他のものを殺すのは人間だけなのではないだろうか。

 人と人が争って、その究極は戦争だろうけど、戦争に限らず人が争う中で相手を拷問にかけるということがあるが、そんなとき相手が苦しむ姿を見ることに喜びを覚えるような心理状況に陥る場合があるようだが、他の動物が人間みたいに他の生き物を意味もなく痛めつけて苦しむ姿を楽しんでいるという話は聞いたことがない。


 人間に特別に頭のいい人やそうでもない人がいるように、牛にも普通の牛に比べると特別頭のいい牛もいるわけだろうから、昨日のニュースの牛がそんな牛で、人間の理不尽な楽しみのために自分の命がもて遊ばれる理不尽さに怒りを感じて、最後の力を振り絞って人間に反撃しようとしたのではないだろうか。

 スペインの伝統的な文化遺産としての闘牛も、最近では動物虐待にあたるのではないかという議論が高まっているようで、スペインでも闘牛禁止条例を採択した州もあるようだ。

 私は、闘牛で牛が殺されていく様子を最後まで記録したドキュメンタリー映画を見た事があるが、胸が痛んで最後までは直視できなかった。

 勝ち目のない闘いを強いられた中で、怒りと悲しみをいっぱいにした牛の表情を見ていて、いたたまれない気持になった。

 日本の捕鯨に反対して世間を賑わす「グリーンピース」は、どうして闘牛を放置しているのだろうか。

 闘牛場にこそ乗り込んで、無法な殺戮を阻止すればいいのだ。

 この牛は、すぐに捕らえられてその場で殺された。

 怪我をした方々はお気の毒だが、大怪我がなかったことは幸いだった。

 私は、非道な人間たちに一矢むくいたかった牛に、やっぱり声援を送り続けたい。

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