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2010年12月11日 (土)

鹿児島裁判員裁判無罪判決②

 鹿児島の裁判員裁判による無罪判決について、マスコミ報道は総じて好感を示す解説をしている。
 
 判決後の記者会見で、被告の白浜さんの笑顔を見て、無罪という判決が正しかったように思えてきた。

 2人も人を殺した人間が、あれほど「すがすがしい」笑顔で話ができるものだろうか。

 それほど「すがすがしい」笑顔だった。

 「疑わしきは被告人の利益に」という刑事裁判の原則を貫いた事は正しい判断だったと改めて思った。

 今回の事件は、犯行に結びつく直接の証拠はなかった。

 それで、判決は「被告が犯人でなければ合理的に説明できない事実関係が含まれている事を要する」とした。

 これは、今年4月、大阪市平野区母子殺人事件の最高裁判決における基準を踏襲したものだだった。

 元裁判官で法政大学法科大学院の木谷明(刑事法)教授は、「判決で、被告が被害者宅にいったことがないとウソをついていると断定しているが、こういう場合従来なら被告に対する心証が悪くなり一気に有罪認定に傾く事がおおかった。」

 「それが裁判員裁判で踏みとどまったように思う」と言っている。

 また評議のなかで、「100回以上振り回しているスコップに、被害者のDNAはついているのに被告のDNAがついていないのはおかしい」

 「70歳の被告が100回もスコップを振り回せるのか」など多くの疑問点が指摘されている。

 まるで、私が以前ブログで書いた、映画「12人の怒れる男」を再現するような話だ。

 「疑わしきは被告の利益」の言葉通り、無罪の心証から裁判をスタートさせたことは意義ある裁判だった。
 
 日本の裁判を批判する本に、検察が起訴した事件に対して有罪という判決を書くのには手間がかからないが、無罪という判決を書くのにはその何倍もの労力がかかる、と言うようなことを書いていた。

 判事も検察も法曹を職とする国家公務員で、判事から検察になることもある。

 そんななかで、検察を否定するような無罪判決を出すと、あとあとの出世に響くことがある。
 というような内容があった。

 裁判官も人の子。良心は無罪に傾いても、現実問題として国家権力の代表とも言える検察に一個人としては抗えないところがあるのかもしれない。

 裁判員裁判によって、裁判員の判断を後ろ楯にすることによって、無罪判決が出しやすくなるという局面があるのかもしれない。

 そうであれば、そこには裁判員裁判の意義を認めざるを得ない。

 しかし、できることなら裁判員をなくしても、裁判官のみでも今回のような判決を導き出してほしいものだ。

 今回は冤罪で犯罪者にさせられたかもしれない人を救ったのであれば、裁判員裁判の功績となる。

 それでは、真犯人は誰なのだろう。

 白浜さんを無罪と認めたとき、警察・検察は新たな真犯人探しをする気力をもてるのだろうか。

 被害者の遺族は無罪判決に対して、「今でも被告が犯人であると思っている。控訴して、上級審で正しい判決がなされることを期待する」との談話を出している。

 結審前に4人の遺族全員が極刑を求めた。

 三男の方は、「遺族が再スタートを切るには、死刑にすべき人は死刑にすべきだ」と裁判員に訴えたという。

 大切な身内を惨殺された遺族が、その犯人を極刑に処したいという気持はわかる。

 しかし三男の方の言葉の通り「死刑にすべき人を死刑にすべき」であって、遺族が再スタートを切るために、無実の人を犯人にして極刑にすることがあってはならないだろう。

 白石さんが無実だとすれば、遺族が恨むべきは、思い込みによる逮捕によってその後の捜査を放棄してしまった警察であろう。

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