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2011年1月 8日 (土)

「追い出し規制法案」について思う

 昨日の朝日新聞に「追い出し屋 なお横行」との見出しで、「追い出し規制法案」の問題を取り上げていた。
 
 弱者である家賃滞納者を救うために、緊急に「追い出し規制法案」を仮説するべきだという趣旨の記事だ。

 「追い出し法案」がたなざらしになっている間に、被害はなお続いているというのだ。

 この「被害者」というのは家賃を滞納した人のことなのだ。

 「被害者」といわれる「家賃滞納者」に家賃を滞納されて「被害」を受けているのは家主は加害者扱いなのだろうか。

 確かに、家賃が1日遅れただけで脅迫的な督促をしたり、追い出しにかかったりするようなやり方があるとすれば問題だ。

 しかし、それは本当に一部の業者なのだ。

 朝日新聞の記事によると、「追い出し屋規制法案」がたなざらしになっていて、一方では不動産業者ら10万2千社が加盟する政治団体の全国不動産政治連盟が、小規模な個人家主を法案の規制対象から外すことなどを求め、12万5千人分の署名を集めたことを批判的に論評している。
 
 全国不動産政治連盟や全国賃貸住宅経営管理協会政治連盟が「一部の悪徳業者を規制するために、善良で零細な個人家主まで対象にするのは納得できない」という訴えを、「追い出し規制法案を事実上骨主にする動きである」と報じている。

 これまた、すべてを十把ひとからげにした単視眼的な考え方だ。

 これにからむ問題として、私は「家賃滞納者のデータベース化」(10.12.21)について書いた。
 家賃滞納者を弱者として家賃滞納を甘受せよというが、家賃滞納は将来に向かって増え続け家主の経営を逼迫させるのだ。

 正当な家賃の督促ができなくなるかもしれないから、入居審査を厳しくして家賃滞納を防衛するというのは当然の流れだろう。

 それで、広がりつつあるのが「家賃滞納者のデータベース化」なのだ。

 家賃滞納歴のある人の入居を制限しようというわけだ。

 朝日新聞はこれについても弱者いじめという理論展開をしていた。

 しかし、再度声を大にして言いたいのは、多くの家主もまた弱小なのだということだ。

 10世帯12世帯の小さなアパートを経営していて、1、2件家賃滞納をされることは家主にとっても死活問題なのだ。

 家賃滞納者は滞納家賃が負債として溜まるだけだが、家主がアパート建築のために借りているローンの支払いを滞納したら、金融機関は家主に対してローンの残債務の一括返還を求めてくる。

 家賃滞納者がいて支払えないから待ってくれと言っても、金融機関は待ってはくれない。

 借り入れ残債務の一括返還を求められ、次には競売にかけられることになる。

 土地・建物といった財産を失い、さらに借金が残ってしまうこともある。

 家主にとって家賃収入は命の綱なのだ。

 家賃滞納者は弱者だから家賃の猶予をしてやれと言われても、余裕のある家主は少ない。

 家賃滞納も入金の目処があればまだしも、いつになったら払えるようになるかわからない状態の滞納者は、家主に対する被害を増大させていくわけだ。

 悪質な家賃滞納者も少なくない。

 私もそんな家賃滞納者に出くわしたこともあるが、最終的には溜まった家賃はどうでもいいから早く退去してもらいたいという気分になる。

 1カ月分の家賃が払えない人が3カ月、6カ月分の滞納家賃を払えるわけがない。

 早く退去してもらって、次の入居者を入れてアパート経営を健全化したいという気持になる。

 法的な手順を踏んで退去の手続きをすると、半年1年とかかってしまう。

 その間、滞納家賃は膨らむ一方なのだ。

 家主にそれを甘受せよというのであれば、行政が滞納者を受け入れる施設を作るべきだろう。

 ただ、ごく1部の業者とはいえ「追い出し屋」と呼ばれる強引な取り立てをする業者があるのも事実。

 私のブログの「全国自死遺族会」(10.9.28)や「自殺者遺族に高額慰謝料」(10.11.8)に、ぽつりぽつりではあるが訪問者がとぎれない。

  強者とされる家主さんから、私の意見に同感というコメントもいくつかいただいている。
 
  私は、どちらか一方に与する(くみする)ものではない。
   
  ただ、一部の突出した事象をとりあげて、十把ひとからげで法規制するという流れにならないよう、双方の立場を冷静に判断してもらいたいと切に願っている。
 

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