敷引特約有効、最高裁が初判断
地震と津波の話から逃れることのできなかったこの2週間だったが、世の中はそればかりではなくさまざな出来事が起こっている。
国連安全保障理事会の制裁決議を受けてのリビアでの多国籍軍との戦争も、世界に大きな影響を与える重大事件だ。
当地、宮崎県では新燃岳の噴火が続いている。
いろんな事件が起こっているが、東日本大震災の被害の大きさに、すべてがかき消されている。
そんな中で、私の仕事にからむ重大な事件が報道されていた。
賃貸住宅の敷金から、家主が無条件に一定額を差し引くと定めた賃貸借契約の「敷引特約」が消費者契約法に基づき無効かどうかが争われた訴訟で最高裁第1小法廷(金築誠志裁判長)は24日「不当に高額でなければ特約は有効」とする判決を言い渡した。
差し引かれた敷金の返還を求めた借り主側の上告を棄却し、請求を棄却した1、2審判決が確定したというものだ。
敷引特約は関西地方や福岡県などで慣習化しているもので、賃貸契約において契約終了時に敷金のうち一定額を返還しない旨を定めた契約だ。
同種訴訟では地裁や高裁で特約を無効とする判断が相次いでいたが、判決は「特約にはあらかじめ敷金から差し引く額を決めてトラブルを防止する意味があり、貸主の取得額が賃料などに比べて不当に高くなければ有効」と述べた。
訴訟の原告となった京都市の借り主は、06年の入居時に敷金40万円を納めた。退去時に特約に基づき21万円を差し引かれたため「部屋の傷や汚れと無関係に一定額を差し引く特約は無効」と訴えていたものだった。
そもそも、「市民相互の財産や身分を規律する私法」の基本となる「民法」では、公共の福祉や公序良俗に反するものでない限り、契約自由の原則が認められている。
だから、それぞれ、敷金から一定額は差し引くことに同意して締結した契約は有効だと言えるわけだ。
しかし、消費者契約法施行後、賃借人からの敷金返還訴訟が相次ぎ、賃借人の訴えを認める判決が相次いだ。
そのため、消費者金融機関に対しての過払い返還請求の次は、敷金返還請求で一儲けしようという弁護士、司法書士の動きもあったくらいだ。
確かに、一部の家主や不動産業者に、不当に高額な現状回復費用を請求するものがあった。
私の個人的な意見としては、自然損耗については敷金から差し引くべきではないと思っている。
しかし、長年の不動産取引の習慣で、畳・障子・襖の取替についてや、退去時のハウスクリーニングを借主の負担で行なうという特約に合意して契約したものであれば、その契約は有効だとも思う。
敷金返還について問題になるのは、具体的な説明がなく、契約終了時には原状回復費用を負担するという内容の契約だ。
賃借人も敷金から一定の金額を差し引かれるとは了解しているので、大きなトラブルになることは少ない。
しかし、賃貸契約終了にあたって敷金が一切戻ってこなかったり、ひどいときには部屋全部の壁や天井のクロスを張り替え、敷金以外に追い金を請求するというものまであった。
そもそもは、このような不当に高額な現状回復費用について敷金返還請求訴訟が起こされていた。
そういった場合の判決の中では、現状回復について、自然損耗は借主に請求するべきものではなく、賃貸物件の損傷については家主の負担と判断されたた。
すると、その判決を自分に都合のいいように過大に解釈して、常識的な敷金精算についても訴訟を起こす賃借人が出てきた。
インターネットの世界では、敷金返還交渉を請負サイトなるものが現れた。
何の資格も持たず、弁護士法に抵触するのではないかと思われるサイトが数多く見られるので要注意である。
先にも言ったが、民法では契約自由が原則で、それぞれが充分納得して契約した契約は有効だ。
しかし、弱者を救済するために新たな法律を制定する。
そうすると、法律をたてに不当に契約を反古にして自己の利益を図る悪質な賃借人が現れた。
敷金返還請求の中には、そんな不当な請求も混在していた。
充分に納得して契約をして、正当な範囲で敷金の処理を行なうことに異論をはさむものはいないだろう。
納得の上契約をしておきながら、それを後になって不当だという訴訟がまかり通れば、契約の自由が成り立たなくなる。
今回の最高裁の判決は、非常に良識のある判断下したものと言える。
自己の利益のみを考える利己的な訴訟が頻発することに対して釘を刺した判決だ。
敷引きというのは、関西地方や福岡以外の地区ではなじみのない制度だが、敷金返還についても大きく影響を及ぼす判決だ。
ただし、「不当に高額でなければ」というところが今後、微妙な取り扱いになるところだろう。
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