羊の顔での依頼。トラブルに巻き込まれたかも。
私は、お客様を神様とは思っていない。
不動産屋というと、まだ「悪徳不動産」というイメージをもっている人もいる職種だ。
「千三つ」と言う言葉もある。千の内本当のことはたった三つしかないという意味である。
そんなイメージ通りの不動産屋もいるのは確かなのだろう。
しかし、私が仲良くつきあっている不動産屋さんの多くはお人好しだ。
歳も同じで、しょっちゅう話をする不動産屋さんがいるのだが、私と同様よくお客さんにただ働きをさせられたり、泣かされたりしている。
二人で会うと、傷の舐め合いになる。
どんなふうにお客さんに泣かされたかというのは、私のブログの、カテゴリー・不動産情報館日記に私の愚痴を何度か書いているので、よろしければ読んでいただきたい。
ということで、今日は、泣かされはしなかったけど、昨日体験した「お客さん、それはちょっとずるくないですか?」という出来事を書いてみる。
昨日、近くの商店から電話があった。古い歴史のある商店で名前は存じあげている。
この商店の社長さんは、以前は結構不動産取引をされている方だった。
なぜ当社に電話があったのだろうと思って話を聞く。
「月極め駐車場の契約なんかをしているのか?」という問い合わせだった。
「やってますよ」と答えると、このお客さんが経営している月極め駐車場を借りたいというお客さんがいて、その人に貸すことはきめているのだが、ついては間に入って契約を締結してくれということだった。
決まった話の仲介をさせていただけるという話で、一見ありがたい話であるが、私には大いに違和感を感じる話であった。
「それはありがたく、やらせていただきますけど、いかがいたしましょうか?」とたずねると、「ちょっと来てもらえないか」とのこと。
気が進まない話だが、せっかく電話をいただいた手前、すぐにお伺することにした。
一応、当社が使っている駐車場契約書を持って行って、契約書の内容の順番に話を聞くことにした。
まずは、契約当事者のお名前、そして駐車場の所在地。
契約相手の名前は紙に書いているものを提示された。
所在地は、社長の自宅の真向かい。この駐車場は自宅の目の前ということで、ご自分で管理をしていたはず。
次に、賃貸料金を聞き、駐車の位置と、契約期間についてたずねると、なんだか口ごもって明確に答えない。
すでに車は置いているのだという。
予感的中。なんか訳ありな話だ。
気がつかないふりをして、話を続けた。
「すでに置いているということですが、いつから置いていていつからの契約にしたらいいのですか」とたずねる。
すると、もともと駐車場を借りてもらっていたのだが、今回契約主だけが変更になるとのこと。
「?? 置いてある車は同じで、契約主だけ変わるのですか?」とたずねる。
「今まではいっしょに住んでいる女性が契約していたのだけど、今度からその女性の彼氏が契約主になるので、契約書をちゃんとしたい」と言う。
ほれほれ、おかしな話になってきた。
もともと契約していたお客さんが結婚かなにかで、男性の方を契約者にして契約しなおすというのだろうか。
今まで、不動産会社に依頼せずに自分で管理していたのに、契約をわざわざ当社に依頼するということは、相手の男性が恐そうな人なのかもしれない。
地主として、借り主に不安を感じているからわざわざ依頼してきたのだろう。
しかし、それも仕事。頼まれれば断り難い話だなあと思って、話を続けた。
「当社に頼むと仲介手数料が発生しますが、どなたがそれを払うんですか?普通は借り主が払うのですが、今回は知り合いどおしで直接決めた話だから、借り主は手数料を払いたくないから不動産屋はいれないでやってくれというと思いますよ」と話を投げた。
ここで、仲介手数料は自分の方が払うからやってもらいたいと言われたら、断る理由を見つけるのは難しい。
それで先手を打って、「当社が契約に関係して契約を締結しても、駐車料金の集金は別問題ですよ」という話をした。
管理料をいただいて集金もするけど、その場合はお客様の選択の窓口も当社で行い、ある程度の人物判定をした人と契約するという説明をした。
そして、今回の話をつっこんで聞いてみると、今まで貸していた人が駐車場の支払いが度々遅れ、それが重なって8ヶ月分の駐車料滞納になっている。
それで、契約解除を解除して即刻退去してくれと申し渡したら、その女性の彼氏が現れて、「自分の車を置いていて、今までも彼女には駐車料としてお金を預けていた。それなのに、彼女がそれを使い込んで払っていなかった。今後は自分が契約主になって責任をもって支払っていくので、継続して車を置かせて欲しい」と言って4ヶ月分は持ってきたというわけだ。
私は、直感力が強い。だから、電話をもらった瞬間に、嫌な予感がした。
嫌な予感があったから、依頼を受けるにあたって、いろいろな話をしながら内容を探っていたわけだ。
なにも気がつかずに、お客様からの依頼に感謝して、単純に相手の名前を聞いて契約をすませていたら、地主かは駐車料の滞納について不動産業者として責任をとらせようとしていたはずだ。
本件、駐車料は5000円。2台分の契約だから、仲介手数料は1万円。
たなからぼた餅で1万円稼いだと喜んでいたら、さっそく来月はいやな思いをしたかもしれない。
賃貸契約の仲介をしたからといって、入居者の滞納家賃を集金する責任はない。
しかし、入居させた不動産業者の責任にして、督促の依頼をしてくる家主(地主)が少なくない。
近くの商店主の好意で当社に依頼があったと勘違いして、詳細の話をせずに契約していて、滞納して地主に督促の依頼を受けてその説明をしたとしたら、この社長はなっとくしなかっただろう。
賃料滞納の不安があって、それを隠して私に仕事を依頼しようとしていたわけだ。
さりとて、仲介料を自分が負担する気持ちはなかったようで、「私に依頼すると余計な仲介料が発生するから相手の方の了解を取ってください」という私の言葉に、「自分が手数料は払うからやってもらえないか」という言葉がないのを幸い、持参していた駐車場契約書を無料で提供して早々においとまさせていただいた。
油断もすきもあったものではない。
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