田舎暮し 農家になるには
日経新聞に「これからの田舎暮らし」という連載コラムがある。
テレビでおなじみのエッセイスト玉村豊男さんが、自分の田舎暮らしの経験をもとに、田舎暮らしに憧れる定年目前の男たちへ助言のコラムだ。
田舎暮らしの良さだけを紹介して、田舎暮らしをすすめている本が少なくないが、このコラムでは田舎暮らしの大変さもしっかり伝えているのが良い。
私の好きなコラムのひとつで、毎週楽しみに読ませてもらっている。
先日、「農家になるには」というテーマで、田舎暮らしで農業をやるにあたって、農地をどうやって手に入れるかという話をされていた。
その中で農地を買うにあたっての注意事項にも触れられていた。
私のように田舎町で不動産屋をやっているものにとって、必須の知識である。
わかってはいるが、おさらいのつもりで読ませていただいた。
ちなみに、私の住んでいる延岡市(宮崎県の北端の街)は、人口13万人。
旭化成を中核企業とした工業城下町だが、東に太平洋、西に九州山脈の山々を背負った自然豊かな町でもある。
市の中心部から海岸線にかけては、旭化成の工場の大きな煙突が象徴する工業都市。
旭化成を中心として商店街も賑わいをみせていた。
そんなわが町も、昨今は全国の地方都市同様、旧商店街は衰退し、ロードサイドでは大型商業店舗が活況を呈している。
そんな中、商工業と併せて町を形作ってきたのが農業である。
町の中心部では工場群とともに田園が広がっているし、ちょっと中心部をはずれると農村の風景も見られる。
そんな町で不動産屋をやっていると、農地を宅地化して分譲することも多々ある。
玉村さんのコラムには、「農地は農家にしか買えない」とあったが、それは正しいとも言えるが正確には正しくはない。
昭和45年に制定された都市計画法で、都市計画区域と都市計画区域外の線引きがなされた。
さらに、都市計画区域内においては、市街化区域と市街化調整区域が定められた。
都市計画法により、都市計画区域外の農地及び市街化調整区域の農地については農家でしか買えない。
しかし、市街化区域の農地については農地を農地以外のものに転用するという届け出を出すことによって、農家でなくても農地の購入は可能だ。
さらに、市街化調整区域の土地についても県知事の許可があれば購入は可能となる。
玉村さんがおっしゃるのは、主に都市計画区域外の農地について言及されておられるようだ。
この場合は、玉村さんがコラムにておっしゃっている通りの手続きをふむまなければ農地の取得はできない。
すなわち、農地を取得しようと思う地域の役場の農政課や農協に、新規に就農したいので農地を取得したいということで買える農地を紹介してもらう。
そして、農業委員会に営農計画を提出する。
農業委員会がそれを認め、土地の購入手続きが終われば、晴れて農家として農地の取得ができることになる。
一般的に、5反(1,500坪)の田んぼを取得することが条件になる。
ただし、5反全部を購入しなくても、借りるということでも条件を満たすことになる。
また、昨今は規制緩和により、県や地域により面積の緩和措置がとられている。
※当地(宮崎県の北端の街、延岡市)でも、面積緩和措置がとられることになって説明会を受講したことを思い出したことを、このブログを書きながら思い出したが、そのときの資料が見つからない。
ただ、農業委員会に農家として認可を受けるのは至難の技である。
過去に私がお付き合いしていた後輩の不動産屋さんが、農業従事者として農業委員会に認可を受けるべく、米を作ったり畑を耕したりと努力を重ねていたが、結局認可をうけることはできなかった。
実際問題として、田舎暮らしをして農業をやりたいのであれば、比較的容易に農地を貸してくれる人は見つかるだろうから、趣味でやる程度の農業であれば農地を借りて、自分が食べるだけの米や野菜を作ればいい。
玉村さんが言っていたけど、農業は思っている以上にはるかに重労働なのだから、あわてて農地を買い込むこともない。
蛇足だが、農業委員会の斡旋で農地を農地として売買する場合には、売主は800万円の税金控除が受けられる。
この800万円控除は、あくまでも農業委員会の斡旋によるものでなければならず、不動産業者が仲介すると控除は受けられない。
だから、農地を農地として取引することについて詳しい不動産業者は少ない。
だけど、私は詳しいよという、ちょっと自己自慢をしてみた今日のブログなのだ。
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