とんだ失敗。人を殺してしまった。
とんだ失敗をしてしまった。
間違って、人を殺してしまった。
といっても犯罪を犯したわけではない。
私は、ある土地の買収の依頼を受けて、1ヶ月くらい前から所有者のお宅を訪問していた。
買収依頼は隣接者の方からのもので、過去に何度か話をしたけど売ってもらえなかったということだった。
可能性の薄いことは重々承知のうえでの依頼で、ぼちぼちやってくれたらいいということだった。
だめもとでも、所有者とお会いして再度売っていただくようお願いしなくてはいけない。
まずは、登記簿で所有者の住所を調べることから始める。
住所を調べ、住宅地図で所有者の家を探してみた。
甲斐さんという姓なのだが、住宅地図に、名前が違うが甲斐さんという家が見つかった。
登記簿にある所有者は甲斐○○さんなのだが、住宅地図では甲斐△△さんとなっている。
住所と同じところに、同姓の甲斐さんだから、親族と同居しているのだろうと思って、そのお宅を訪問することにした。
そこは、2軒長屋形式の古い貸家だった。
買収予定の土地は、想定金額1,500万円くらいを予定している。
その土地の地主さんがどうして、こんな古い貸家住まいをしてるのだろうと思いつつ表札を確認した。
確かに甲斐とある。ここに違いない。
声をかけるが不在のようだ。
電動カートが置いてあるので、足の悪い老人なのだろう。
電動カートがあるということは、外に出かけるときは電動カートに載って出るのだろうから、電動カートがあるのに不在にしているということは、デイサービス当の介護施設を利用しているのかもしれないと思って、その日は帰って来た。
その後何度か訪問するが、電動カートはあるのに不在という状況が続く。
病院に入院しているのか、どこかの施設に入所しているのではないかと思いながらも訪問を続けていた。
訪問すること10数回。先週の土曜日、これまで閉じっぱなしだった窓が開いている。
窓越しに年配の男性と目が合った。
「甲斐さんですか?」と、たずねると、「そうだ」との答え。
「実は、××町の土地のことでご相談があるのですが・・」と話を切り出してみる。
「それは、うちではないよ」と答えながら、室内の荷物を軽トラックに運び込んでいる。
「引っ越しですか?」と訪ねると、2日前に、ここに一人住まいしていた甲斐さんが急に亡くなったので、部屋の引渡しのために荷物を持ち出しているのだという。
いろいろ話をききたかったのだが、荷物整理の途中で、ゆっくり話もできないので、その日はそれで分かれた。
そして、買収依頼者に土地所有者が亡くなったことを報告した。
依頼者に所有者が亡くなったから相続の手続きに時間はかかるかもしれないが、相続が終われば売る可能性が出るかもしれないという話もした。
月曜日、一昨日部屋の片づけの手伝いをされていた隣家に、甲斐さんのことを聞きに行ってみた。
その方もそんなにつきあいがあったわけではなくて詳しいことはなにもわからなかった。
大家さんなら、入居者の際に保証人等をとっているから、何かわかるかもしれないと思い、大家さんを訪ねてみた。
親切な大家さんで、親切に話を聞いていただいた。
「亡くなられたのは、甲斐○○さんですよね?」と聞くと、「いや甲斐△△」さんだよ」
「甲斐△△さんは、甲斐○○さんのお父さんかなんかですか?」
「甲斐○○さんは甲斐△△さんとはなんの関係もないと思うよ」
「でも、甲斐○○さんもこの長屋に住んでいたのでしょう?」
「うん。甲斐○○さんも住んでいるけど、甲斐○○さんは違う棟に住んでいるよ」
なんと土地所有者の甲斐○○さんは生きていると言うのだ。
甲斐○○さんが亡くなったというのは、私の早とちり。
あわてて、土地買収依頼者に電話した。
もう一人、甲斐さんの現住所を調べるのにお世話になったAさんにも連絡した。
Aさんには、土曜日に甲斐さんが亡くなったかもしれないという報告をしていたからだ。
恐縮して訂正の報告をする私に、Aさんは、「亡くなってないことは知ってるよ。あなたの勘違いだったね」と言うではないか。
「ボクは甲斐さんとは仕事で会うことがある仲だらか、あの日(土曜日)、すぐに甲斐さん宅に行ってみたんだよ」
甲斐○○さんは、土曜日で仕事が休みで自宅におられたそうだ。
同じ地番の土地に、棟割り長屋が5棟あって、別な棟に甲斐○○さんは住んでいたのだった。
住宅地図で、それがわからずに、私は一カ月以上、関係のない甲斐△△さんを訪問していたのだった。
Aさんが、そんないきさつを甲斐○○さんに話をしたところ、「知らないところでオレは殺されていたのか」と笑っていたそうだ。
私がAさんに甲斐○○さんの家を聞いたけど、詳しいことは知らないと言ってたのだけどなあ。
とんだ大失敗だったけど、これで本命の甲斐○○さんの所在がわかった。
気を取り直して、買収の商談をかけてみることにしよう。
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