額面だけでは判断できない土地の価格
「これからの田舎暮らし」という日経新聞の連載コラムがある。
エッセイストの玉村豊男さんが書かれているもので、田舎不動産屋の私には仕事にも関連する話があって面白く読ませてもらっている。
今日は「他人の土地見」という話だった。
玉村さんは東京生まれの東京育ちだが、1991年から長野県に居を移して田舎暮らしにひたっておられる。
最近になって、団塊の世代である玉村さんの友人たちが、「隠居世代に入ったせいか」田舎暮らしへの移住を希望する者が増えてきているという。
それで、久し振りに旧知の不動産業者と会い、いくつかの物件を見せてもらった話だ。
一つは、町から離れた森の中にある4000坪の山林。価格は坪6000円。
上下水道は来ているが、下水道は無いので浄化槽をつくらなくてはいけない。
しかし舗装道路に接しているし、伐採された平面が多いからほとんど造成の必要がない。
二つ目は、周囲は農地だが、そこだけが転用済みの宅地になっている800坪。坪3万円。
上下水道は引けるが、とりつけ道路は簡易舗装の必要がある。
三つ目が、町に近い、眺めの良い山麓の宅地。150坪で坪10万円。
「もっと安い山林の土地なら坪5000円くらいからあるが、安い土地は使えるようにするのが大変で、土地の造成や給排水の確保、接道義務などの要件を満たすのに多額の経費がかかるから、坪5000円のつもりが5万円になった、というのはよく聞く話だ」と言っておられる。
だから「田舎の土地は額面だけでは簡単に判断できない」とも言っておられるのだが、これは「田舎の土地」だけのことではない。
都会の土地でも、土地の中までは水道管の入っていない土地もあるし、浄化槽の設置が必要な土地もある。
建物を建てるときに、道路に埋設している水道管から自分の土地に水道を引き込む工事に十数万円から数十万円かかる。
古い家が建っていた土地でも、その家を取り壊して建て直そうとすると、建築の許可が出ない土地もある。
都市計画法や建築基準法その他数々の法令で、思い通りの建物が立てられないこともある。
以前話をしたことがあるが、大都会でも工事中に土地の中から文化遺産が出てきて工事がストップしたという話は珍しい話ではない。
かくのごとくに、土地の価格は額面だけでは判断できないのは、田舎も都会も同じなんだなあと思った、今日は8月23日。
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