悪徳不動産屋日記④ 「3度目もウソ」その1
先日、当社のご近所の方から相談を受けた。
『この方』は、大黒様みたいな柔和な顔をされた、みるからに人の良さそうな方である。
相談は、自己所有の住居付店舗を貸すにあたって、家賃をいくらくらいにしたらいいかということだった。
『この方は』、以前、「隣接地が売りにでているので、おたく(当社)を仲介業者として購入できないか」という相談に来られた方。
その土地は「この方」の住居兼店舗の隣接地で、『この方』が駐車場として一括で賃借していた土地だった。
土地の所有者は遠方にお住まいの方で、売却することを賃借人である『この方』に話をせずに、他の不動産会社に相談して、その不動産会社から『この方』に買わないかという持ちかけられたという。
ついては、どうせ不動産屋が入るのだったら、『この方』は私に仲介に入ってもらいたいというのだ。
不動産の取引にあたって、売主側の不動産会社と、買主側の不動産会社が協同で売買契約をするということは珍しい話ではない。
ただし、物件を持ち込んだ不動産会社は、売主と買主両方からもらえるはずだった手数料が半分になるので、簡単にはゆずれない話だ。
不動産業をしていて逆の立場を考えてみると、物件を持ち込んだ瞬間に「購入するかどうかは自分のつきあいのある不動産屋に相談する」と言われた場合は、しかたがないとするが、商談が進んだ後の話だったら、すんなりは引き下がれない。
それで、相手方の不動産屋とどういう話をしたのかと聞いてみると、「自分がいない間に物件資料を持ってきただけ」という。
それなら、私の出番もあると思って、さらに詳しく話を聞いた。
持ち込まれた土地の価格は、私が見て、適正かむしろ安いと思う価格だったのだが、すぐには売れないとタカをくくって、もっと安く買えるのではないか思っていたようだ。
私は、隣接地であること。この土地が他に売れてしまったら、近辺に駐車場として借りれる土地はないこと、詳しく説明をして、値切らずにでも買うべきことを納得させた。
幸い、相手方の不動産会社は、私のつきあいのある会社だったし、営業マンも知っている人だったので、ことの成行を説明したら、当社が買主側の不動産屋として了承してもらえそうな話だった。
「相手の不動産屋は資料を持ち込んだだけですね」と念を押して、相手の不動産会社に電話しようと思ったら、『この方』からがっかりするような言葉が出た。
「今回の話は(自分が持ち込んだ話だから)手数料をまけてもらえるでしょうね」と言うではないか。
なんのことはない。私に相談をかけてきたのは、手数料をまけてもらおうと思ってのことだったというわけだ。
15坪という狭小な土地で、当地(宮崎県の北端の街、延岡市)の土地価格だと、売買の仲介料は15万円程度でしかない。
手数料を引いて商談をまとめることはしない主義なのだが、今回のように、できあがった話の仲介に入るときには3割引すると決めている。
その説明をして、「手数料を値引きすることはしないが、当社の規定で3割引の10万円でやりましょう」と答えた。
すると、またまたびっくり。「えーーー。そんなに取るんですか」ときた。
こちらが「えーーーーー!」である。
「いくらにしてくれというんですか?」と聞くと、「5万円でやってもらえないか」と言う。
そんなプライドを捨てたような仕事はできない。
ムッとする気持ちを抑えて、5万円ではお受けできない。持ち込まれた不動産屋さんと直接話をしてください伝えた。
私の剣幕に、これ以上値切るのは無理と思ったのだろう。10万円でいいから、やってくれと言う。
相手方の不動産屋だとびた一文まけてもらえないから、10万円でもいいと判断したのだろう。
最初に話を聞いたときの感謝の気持ちは、まったく失せ、成り行き上気乗りはしないのだが、相手の不動参会者に電話をした。
ことのなりゆきを説明して、当社が購入側の不動産屋として話を進めていいか了解をとろうと思った。
しかし、これまたびっくり。
相手の営業マンの返事は、「隣接地であるし、駐車場として借りてもらっているので、一番最初に話を持っていった。その後、何度か結果を聞きに行ったけど、返事をもらえないので、他のお客様に紹介して、そのお客さんが検討中だから譲れない」と言うではないか。
なんのことはない、価格が気に入らなくて、すぐには売れないだろうとタカをくくって返事をしないでいたら、相手方の不動産会社の別なお客が、この土地を何度も見に来だして、測量まで始めた。
それであわてて私に相談をかけてきたということだった。
あげくの果てには、手数料をまけさせようという魂胆。
あきれ果てて、もうどうでもいいと思いつつ、「残念だけど他の商談がかかって、そちらで売れてしまいそうだとのことですよ。不動産のことは下駄を履くまでわからないから、その商談がつぶれたらまた話がくると思いますよ」と言って、お引き取りねがった。
それから数日後、また『その方』が来社された。
あの後すぐ、相手方の不動産会社の社員がきて、「商談がまとまらなかったので、よければ買わないか」との持ちかけがあったので、そちらで買うことにしたという報告だった。
私の想定通りの流れで、「それはよかったですね」と答えた。
すると『その方』は、私にどんなお礼をしたらいいのかとたずねてきた。
「お礼なんかいらないですよ」と言う私に、『この方』は、「あなたは本当にいい不動産屋さんなんですね。次に不動産の話があるときは必ずあなたに相談に来ます」と言って、帰っていった。
見送る私は、「気持ちがあるのなら、菓子折りのひとつくらい持って来い」と、心でつぶやく悪徳不動産屋であった。
この話は、過去に書いたことがあるかもしれない話なのだが、「3度目もウソ」という題名にしたので、再度になることにもかまわず書いてしまった。
長くなってしまったので、続きはまた明日。
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