一昨日のこと、高校の同級生のF君から「義兄が不動産のことで相談があると言っていたので、相談に乗ってやってくれ」との依頼があった。
大分(県)に所有している中古住宅の売却についての相談だという。
どういう内容かはわからないが、不動産業者にとって売却の以来を受けることが一番うれしいことだ。
その日の午後、F君の義兄さんが来社された。
ファイルを入れている封筒を持参されている。
義兄さんは封筒から資料を取り出し、「実は、湯布院に姉が住んでいた住宅があって、そのことについて相談したい」とおっしゃる。
「ん!住宅の売却の相談か?」と思いつつ、話の続きを聞く。
「売却を現地の不動産会社に頼んでいるのだが、長いこと売れないんですよ・・」という言葉を聞いて、「なかなか売れないので当社にも売却を依頼したいといことなのかな」「しかし、現地の不動産会社が売れないものを頼まれても、なかなか売れないだろうな」などと勝手なことを考えながら、さらに話を聞く。
依頼してある不動産会社の内容をたずねると、「専任媒介契約書」という書類を取り出した。
媒介契約というのは、不動産業者に土地や建物の売却や購入を依頼する場合に、依頼者と不動産業者との間でを締結する契約のこと。
媒介契約には、一般媒介契約、専任媒介契約、専属専任媒介契約の3種類がある。
簡単に説明すると、一般媒介契約というのは複数の不動産業者に売却の以来をするもの。
専任媒介契約は、一社だけに依頼し、依頼した業者以外に重ねて依頼する事ができない契約。
専属専任契約は、一社だけにしか依頼できないのは専任媒介契約と同じだが、自ら発見した相手方との売買契約もできないというものだ。
つまり、専任媒介契約は一社だけにしか依頼できないが、自ら発見した相手方との契約をすることはできる。
義兄さんが契約しているのは、専任媒介契約。
これだと当社が重複して売却の依頼をうけることはできない。
専任媒介契約の締結日を見ると、今年の二月になっている。
まだ専任媒介契約を締結して二ヶ月足らずしか経っていない。
媒介契約の有効期限は、法律で最長三ヶ月を限度とすること規定されている。
その契約書を見て私は、「まだ依頼して二ヶ月足らずじゃないですか。二ヶ月くらい売れないというのは珍しい事ではないですよ」と助言するしかなかった。
悪徳不動産屋とすれば、あと一カ月待って、「専任媒介契約が切れたときには当社にも依頼してください」と言うべきところなのだろうが、私にはそれができない。
なんとも、私は、悪徳不動産屋の風上にもおけない気弱な不動産屋なのだ。
私の言葉に、義兄さんは、「そうじゃないんです。最初に依頼したのは4年以上前なんです。そのときには、売却価格1280万円で契約したのです。
しかし、まったく商談が進まないまま、その都度価格を下げて媒介契約を更新してきているというのだ。
今年の二月に契約をし直したときの価格は780万円。
資料を見ると、温泉の権利もついているようだが、780万円でも売れないのだろうかと思いつつ、義兄さんの話を聞く。
義兄さんのおっしゃるには、「年をとった姉が不動産屋にまかせっきりにしていて、話が全然すすんでいなかった。聞くと、こんなに安くなってしまっていたので、自分が友人に声をかけたら、この値段なら買ってもいいと言う話になった」
ついては、専任媒介契約を締結している不動産会社を入れずに売買することはできるか、ということだった。
また、そのとき、不動産会社から手数料等の請求は受けないものかということも気にしておられた。
答えは簡単。
不動産会社抜きで売買契約はできる。そして、手数料の請求は受けないが、契約違反の違約金の請求を受けることはあり得る。
私は、義兄さんが持参された媒介契約を提示して、簡単に説明してあげた。
媒介契約書の約款はたった17条でしかない。
約款というと難しく思えるが、各条項に簡易な見出しがついていて、見るだけで内容がわかるようになっている。
さらに、約款の内容で重要な箇所を表題部でわかりやすく説明している。
重要点はたった3点。
大きな見出しで、1 成約に向けての義務(不動産会社の業務上の義務)
2 媒介業務の内容(媒介にかかる不動産会社の業務内容)
3 違約金等(ここに、お互いが約束違反したときの違約条項の説明がある)
たった、これだけの内容だ。
日本語がわかる、一般成人であれば誰でもわかる内容だ。
私は、この違約条項の説明文を指し示す。
そこには、こう記載されている。
違約金等
1.甲(依頼者)がこの媒介契約の有効期間内に乙(依頼した不動産会社)以外の宅地建物取引業者(不動産業者)に目的物件の売買又は交換の媒介又は代理を依頼し、これによって売買又は交換の契約を成立させたときは、乙は、甲に対して約定報酬額に相当する額を違約金として請求することができます。
2.この媒介契約の有効期間内において、甲が自ら発見した相手方と目的物件の売買若しくは交換の契約を締結したとき、又は乙の責めに帰すことのできない事由によってこの媒介契約が解除されたときは、乙は、甲に対して、この媒介契約の履行のために要した費用の償還を請求することができます。
こんな文章の意味くらいは理解していただきたいものだ、と悪徳不動産屋である私は思うのだ。
つまり、1.は、依頼した不動産屋以外の不動産会社で契約した場合は手数料を請求しますよということ。
2.は、自ら発見した相手方と契約した場合は、「この媒介契約の履行のために要した費用の償還を請求することができる」ということだ。
そう説明すると、義兄さんは「いくらくらい払わなくてはならないんでしょうね?」と聞いてくる。
私は悪徳不動産屋であるから、優しく教えることができない。
「それは私にはわかりません。契約書には『請求することができる』とあるけど、『払わなければならない』とは書いてないですよね」
「その不動産屋が、この何年か売却に向けて動いた費用を請求できるということだから、その不動産屋がどう考えているか次第でしょうね」
と、ぶっきらぼうな答え方になってしまう。
ちなみに私であれば、4年以上も売ることができなかったのなら、請求はできないだろう。
なにせ、私は悪徳不動産屋の風上にもおけない気弱な不動産屋なのだから。
今回の不動産屋さんの立場を考えると、不動産業者として適正な価格を指導しても、売主さんがそれを納得せず、高い価格を希望していて売りそびれることがある。
それでも、なんとか売ろうと一所懸命努力して、それでも売れずに、ようやく売主さんが実勢価格を納得するということが多々ある。
売主が納得するまでの不動産屋の努力がまったく認められないというのであれば、不動産屋としてそれは悲しいことだ。
だから、それを強く主張して報酬を請求する不動産会社もあるだろう。
今回の相談では、そんな深い経緯がわからないので、確定的な答えはだせなかった。
「自分の知り合いに売ることは問題ないですよ」
「ただし、不動産会社からは報酬を請求されることがありますよ」
「その請求額については、私には検討がつきません」という、なんとも曖昧な答えしかできなかったが、義兄さんはそれなりに納得して帰って行かれた。
「憲法改正についてはもっと世界の実情を知る必要があると思います。
あなたの考えはマスコミの影響をかなり受けているように思えます。
ご自分でインターネットで調べて下さい。
あなたがデータに基づく情報発信をされることを期待しています。
一読者より
延岡に行くこともありますので、その時は直接、議論させていただきたいと思います。
因みに、映画のリンカーンは本当のリンカーンの何パーセントを表現していたのでしょうか?
映画と実態は一致しているのでしょうか?
映画に基づく判断は信頼出来るのでしょうか?
あなたに対する素朴な質問です。」
「いつも読んでます」という方からのコメントで、まったく悪意の無い正統なご意見だった。
さっそくコメントで私の考えをお答えさせていただいた。
今日は、そのコメントを記事にさせていただいた。
「 リンカーンは映画だから、そのまま内容を鵜呑みにしているわけではありませんが、映画の中でリンカーンが、上・下両議院の3分の2の票をかき集めている姿を見て、逆にマスコミ報道に疑問を持ったのです。