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2013年5月23日 (木)

悪徳不動産屋日記 ペテンにかかった悪徳不動産屋

 車から降りて事務所に向かっていると、前から見覚えのある初老の女が来る。

 あの女だと思ったのだが、あのころよりちょっとやつれて見える。

 見ず知らずの人なら挨拶はいらない。あの女なら挨拶はしなくていい。

 そう思いつつ歩をすすめていた。

 すれちがいそうな距離になったとき、女が軽く会釈をした。

 やっぱりあの女だったようだ。

 私は挨拶する女を無視して事務所に入った。

 あんなことをしておいて、よくも私の店の前を通れたものだ。

 4~5年前の腹立たしい思いが沸き上がってきた。

 そのできごとは、こんな話だった。

 不動産業にまつわる話で、正確に書くと、私のブログを読んでいる何人かは、この女の正体がわかると思うので、物件内容と価格はちょっとアレンジしてお話ししよう。

 あのころは月に1回、定期的に新聞広告を出していた。

 ある日、広告に掲載していた中古住宅に問い合わせがあった。

 問い合わせしてきたお客は、顔見知りの人だった。

 年は60過ぎの女性。この女性をAさんとしよう。

 Aさんは、何年か前にご主人が亡くなっていた。

 ご主人といっしょにちいさな商売をやっていて、ご主人が亡くなったあとはAさんだけで店を切り盛りしていた。

 700万円ちょっとの安い中古住宅への問い合わせだった。

 その中古住宅は、狭小物件であることとで、こんな価格だが、ほとんど補修することなく充分住めるものだった。

 しかも、Aさんのやっている店から歩いていけるところにあった。

 Aさんの店は貸し店舗で、自宅も近くに借家を借りていた。

 店舗の家賃はしかたがないが、住宅の家賃を払い続けるより700万円くらいだったら買った方がいいのではないか。

 それに、年も年だし、終の住処を持ちたいという気持ちもあるとのことだった。

 さっそく案内することになった。

 Aさんは、友だちにも見てもらって意見を聞きたいということで、友だちのBさんといっしょに見に来られた。

 Bさんも、私の知っている人だった。この方もご主人を亡くされた60台の女性。

 BさんもAさんのお店の近くで商売をやっている。

 ご主人生命保険で、多額の保険金が入ったという噂もある人だった。

 おんな2人で、あれこれ言いながら部屋の隅々まで見てまわっていた。

 おばさんの2人連れは厚かましくて、押し入れまで開けようとする。

 差し支えのありそうなところはご遠慮願ったが、好きなように充分見てもらった。

 ちいさな3DKだが、一人暮らしには充分。

 しかも、修理が必要なところはない。

 年齢的にローンは組みたくないし、現金で買いたい。

 店からも近い。

 条件はぴったりで、気に入った様子だった。

 ついては、年も年で現金を少しでも残しておきたいので、もう少し安くならないかと言う。

 条件は私の査定では、700万円はちょっと高い気がしていたので、「買うということであれば、売主さんに価格の相談はしてみます」ということにした。

 売主に相談してみると、売主としてはあまり安くしたくはない。

 それは、常に当然のこと。

 私は、私の査定の価格を再度提示して、駐車場がとれていないことと、20坪弱の狭小物件で、当地における不動産取引動向からすると対象となるお客さんが限られるので、多少価格に不満があっても売ってしまったほうがいいのではないかという話をした。

 売主は、なんとか50万円の値引きは承諾してくれた。

 ただし、それ以下であればこの商談は打ち切ってほしいとのこと。

 Aさんに、その経緯を報告すると、なんとかもう少し安くならないかと言う。

 それ以上の値引きは難しいと伝えると、もう一度友だちに見てもらって意見を聞くので、再度内見をさせてくれという。

 Aさんは、またしてもBさんをともなって見に来た。

 そして2人で、タンスをどこに置くとか、あの荷物はどうするとか、ここをこうしたらいいとか、いろいろ話し合っている。

 Bさんは「もっと安くしてもらいね」と言っている。

 余計なことを言う女だなあと思いつつ、これ以上安は売らないと言っていることを説明する。

 それなのに、「600万円にならんとけ」なんて言う。

 「それは無理だと思いますよ。少し時間をかけたら、650万円なら間違いなく売れる物件だと思いますよ」

 と、私は本音の意見を述べた。

 駐車場は小さな車しか停められないし、部屋は狭いが、利便性のいい立地にあるので、そんなに苦労しなくても売れると思っていた。

 私は売主の説得よりも、買主を説得するべきと思って、その後何度かAさんとの折衝を重ねた。

 Aさんは、決心がつかないと言って、それからもう1度物件を見に来た。

 そのときもBさんはいっしょだった。

 そして、600万円なら絶対に買うから、だめかもしれなくても、もう1度600万円で交渉してみてくれという。

 私は、600万円は無理だが、あと10万円でも20万円でも安くなれば買いそうだなと思って、売主さんと交渉することにした。

 「買手は650万円では買わないと言っている。600万円なら間違いなく買うと言っているが、あと10万円か20万円でも下げていただければ買うと思います」といって、20万円の値引きをお願いしてみた。

 そして、売主にあと10万円だけ値引きを了解していただい。

 売主は、「これが最終の話だ。実は、息子の友だちの不動産屋さんがあなたより高く買うという商談を持ってきている。しかし、あなたには以前にお世話になっているし、いままではあなたの話を優先していた。」と言うのだ。

 そして、これ以上の値引きを言うのだったら、息子の知り合いの不動産屋と契約すると言われた。

 私は、640万円まで了解をいただいたので、それで契約決めてもらおうとおもってAさんを訪ねた。

 すると、それでは買いたくない。もう一度交渉してくれと言う。

 私は、無理とは思いつつ、売主さんを再度訪問し、今回の商談はあきらめますと、引き下がることにした。

 引き下がるにあたって、だめもとで「あと10万円くらいなんとかならないですよね」と投げかけてみた。

 すると、「前にも言ったように、息子の友だちの不動産屋さんから、もう少し高く買うという話が来ているのよ。だから、悪いけど今回はそちらで契約します」と言われた。

 私は、もう一度だけAさんを訪ね、このことを報告し、多少の価格の不満はあっても買っておいた方がいいのではないかと最後の念押しをした。

 その結果は、やっぱり現金をもっていたほうがいいので今回は見合わせるということになった。

 私は、売主さんに、「今回の商談はまとまりませんでした。いろいろ申しわけありませんでした。」と最後の挨拶に行った。

 売主さんは、「いろいろ面倒をかけましたが、もうしわけないけど別の不動産屋さんと契約します」と言われた。

 残念だが、しょうがない。

 こんなこともあるのが不動産業。

 そう思って、このことは終わっていた。

 しかし、その後びっくりする事実を知ることになったのだ。

 この物件がその後、私の付き合いのある不動産業者が賃貸物件として管理しているという話を聞いた。

 それで、その会社の管理担当の社員さんに、「あの物件はボクも商談していたんだけどね、誰が家主になったの?」と、なにげなく聞いた。

 その答えを聞いてびっくり。なんとその物件の家主はBさんというではないか。

 私は、愕然とした。

 当地(宮崎県の北端の街、延岡市)のような小さな町では、ちょっとした商売をしていたら知り合いだらけになる。

 この商談でも、AさんもBさんも、そして売主さんも、商談になる前から私の知り合いだった。

 おそらくBさんは売主と知らぬ仲ではない。

 それで、Aさんを使って私に価格交渉の商談をさせたのだろう。

 そして、自分は別な付き合いのある不動産屋をつかって、私がやっている交渉価格よりちょっと上の価格を提示すれば、自分が値切ったということにもならず、きれいな顔をして取引することができる。

 そんな作戦だったとしか思えない。

 なんせ私の案内するAさんといっしょに3度も見に来ているのだ。

 そして、「もっと安くしてもらいね」なんて言っていたのだ。

 私は悪徳不動産屋の名を汚す、情け無い悪徳不動産屋。

 愕然とはしたが、文句の一つも言えず、黙って泣き寝入り?しているのだ。

 そんな仕打ちをした女が、臆面もなく私の事務所の前を通っていた。

 そして、軽く会釈をした。

 せめてもの報復は、ただ無視することだった。

 悪徳不動産屋の看板が泣いている。 

 それにしても、悪徳不動産屋の私をだませる不動産屋にはおめにかかれないが、私がだまされてしまう悪徳消費者は数多い。

  

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