悪徳不動産屋日記 蜂の巣
朝、電話が鳴った。
電話をとると、女性の声で「佐藤(仮名)ですけどわかりますか?」
悪徳不動産屋としては、一瞬どきっとする。
あの女性だ。
ずっと連絡がなくてホッとしていたのに、何だろう?
「わかりますよ。どうしました?」と答える。
半年ほど前に一戸建の貸家をお世話したお客さんだ。
入居の日に、ちょっとしたトラブルがあった。
引越し屋さんが、引越しのじゃまになるということで、隣接したお宅の自転車をかってにどけて、挨拶も無しにその方の敷地を通って引越し荷物を運び込んだものだから、隣の人から苦情を受けた。
このお客さんが悪いのではなく、引越し屋さんが悪いのだが、苦情は当社に来た。
引越しが終わると、こまごましたクレームが続いた。
この物件は、リフォームはしていたものの築後30年を経た古い住宅で、しかも数年間空き家にしていたものだった。
それで、入居してから小さな故障がいくつか出た。
家主も貸家の家主になるのは始めての人で、お金がかかる修繕についてはなかなか応じようとしない。
入居して1カ月くらいは、何度も物件に足を運び、電気屋さんなどに修繕箇所の見積りをしてもらい、家主に料金の了解を受け、仕事を発注し、公示結果を確認し、家主から修理代を預り業者さんに支払い、その領収書を家主に届ける。
思いがけない手間がかかったが、それは全部サービス業務。
悪徳不動産屋の言い分としては、仲介手数料は入居を決めることでいただくもの。
手数料以上の仕事を受けかぶって、不満たらたらの仕事であった。
このところ何のクレームも無かったのに、久々に何が起こったのだろうと不吉な予感がしたというわけだ。
「あのーですね、ベランダがあるでしょう」ときた。
外付けのベランダがあったのだが、古くて危ないというのだろうか。
「こないだから、ベランダで蜂が飛び回っているんですよ」(それがなんだってんだ)
「で、よくみると蜂が巣を作りかけていたんですよ。」(蜂の巣を取ってくれというのかな?)
「それで、その作りかけた巣は小さい内に取ってしまったんですけど、また作ろうとしているんですよ」(また、巣ができる前に取ってしまったならいいじゃないか)
「それで人に聞いたら、蜂は同じところに何度でも巣を作るという話なんですよ」(そんな話し聞いたことが無い)
それで、「蜂が来ないようにする業者というのはいないのか?」というのだ。
私は、私にやれというのでなかったので、ホッとした。
そして、白蟻駆除の業者で何とかできないものかなあ、なんて思いつつ、自分の経験では蜂の巣をきちんと取り除けば、その後は蜂がいなくなったという説明をしてあげた。
すると、このお客さんの本当の依頼が出た。
「人に相談したら、不動産屋がなんとかするものだと言うんだけど、なんとか蜂が巣を作らないようにしてもらえませんか」
私を誰と見る。
私は、悪徳不動産屋なのだ。
「蜂の巣ができあがる前に取り除くしかないでしょうね。そして、それは私の仕事ではないですよ」と冷たく断ることにした。
知らない間に大きな蜂の巣ができていて、棄権だからなんとかしてもらえないかという相談を受けて、バズーカー砲みたいな蜂専用殺虫剤で蜂の巣の駆除をしてあげたことはある。
殺虫剤は結構高かったが、サービス業務として無報酬。
悪徳不動産屋なのに、下から頼まれると断れない情け無い悪徳なのだなあ。
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