悪徳不動産屋日記 悪徳お客
昨日、電話の問い合わせがあった。
当社が立てている土地についての問い合わせだったが、話をしていて条件にぴったりと思う物件があったので、そのまま案内することになった。
商売をするということで、中古の店舗物件を案内した。
中を見せると、今回始めようと思っている商売に、立地も規模もちょうどいいとのこと。
外装はきれいでそのまま使えるし、内装も数十万円クロスの張替えくらいでやれるということで大変気に入られた様子だった。
価格を伝えると100万円安くしてくれれば買うので価格の交渉をしてくれと言う。
いとも簡単に100万円と言うが、もともとの売出し価格が600万円程度の物件で、適正と思われる価格だから、無理だと思われる話だった。
売主様の人柄も充分存じあげており、こんな話しを持って行っても、絶対にのらないだろう。
下手をすると、私が怒りの対象になりかねない。
しかも私は悪徳不動産屋。努力が嫌いだ。
それで私は、「それは無理だと思いますよ。そんな値引き交渉をした時点で話は打ち切りになってしまいますよ。」と答えた。
ろくに物件も見もしないで買うと言い、しかも当然のように2割くらい値引けというのだ。
私は、「100万円値引きの交渉をしてくれとおっしゃいますが、間違いなく買うんですか」と聞いてみた。
すると、間違いなく買うという。
当地(宮崎県の北端の街、延岡市)のような田舎町でも、5~600万円ですぐに商売ができるような物件は無い。
そもそも売地の看板に問い合わせしてきたのだから、土地から買って建物を建てたら1000万円の予算でも、そうそうに物件は無いだろう。
まだきれいな建物がついていてそのまま商売ができるのだから、価格は高くはないのではないかと、この物件の良さを説明したら、100万円までは安くならないまでも、多少なりとも値引き交渉をしてもらえないかと言う。
本気で気に入っているのなら価格交渉をしてもいい。
しかし、なんだか気が乗らない。
お客さんの言葉に重みを感じないのだ。
そこで、「本気で買うというのなら『買付け証明書』に署名してしてもらえますか」
「買付け証明書」というのは、この値段になれば間違いなく買いますという意思表示をしてもらう書面だ。
売主としても、買うか買わないかわからないままに値引き交渉をされても了解するわけがない。
それで、価格交渉に入るに当たって買い手の意志を書面にして売主と交渉することになる。
物件案内の後、そのまま当社の事務所に来ていただき、買付け証明書に署名をもらった。
買付け証明書には買い手の希望価格、契約予定日及び代金決済予定日まで記載してある。
私は、「この希望価格での了解は取れないと思いますが、精いっぱい努力します。ただし、万が一希望価格での了解がとれたら間違いなく契約していただかないと困りますよ」と念を押した。
すると、「この価格になれば間違いなく買います。この価格にならなくても、多少安くなれば再度検討します」ということだった。
普通なら、すぐに売主のところに行き価格交渉に入るのだろうが、悪徳不動産屋の私はすぐには動かない。
なんだかこのお客さんに信頼感を持てないのだ。
それで、売主との価格交渉は1日時間を置くことにした。
予想は的中。
今朝、昨日のお客様から電話が入った。
「家に帰って相談したら、もっと安い物件があるのではないかという意見が出たので、今回の話は見合わせたい」と言う。
私が悪徳不動産屋で動きが悪かったから良かったものの、私がやる気のある動きの速い不動産屋だったら、昨日の内に交渉して、一所懸命説得して、売主を口説き落としていたかもしれない。
もしそうなっていれば、売主は激怒したことだろう。
買付け証明書まで書いて、大幅な値引きをさせて買わないとはなにごとか。
嘘をついたのは買い手なのだが、売主は買い手と顔を会わせていないので、不動産屋に不信感を持つことになる。
かくして、「不動産屋はいいかげんだ」と言われてしまうのだ。
悪徳不動産屋という言葉があるが、悪徳不動産屋の私から見ると、悪得お客の方がもっと多いんだなあ。
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