悪徳不動産屋日記 直接売買
朝、店を開けるのを待っていたように、お客さんがお見えになった。
お客さんは、私の家内の方の縁戚である。
土地の売却の依頼を受けているのであるが、3年以上になるのに売れていない。
こんなに長い間売れていないのは、一番には駐車場がとれないこと。
地形がいびつで建物が立てにくいこと。そして隣接にお墓があることだ。
20年くらい前、私がお世話した土地で、中古住宅付きの土地として買った。
そのときの事情は、県外からもどってくる叔母さんを住まわせるための家で、現在の所有者の家から近くて、かかりつけの病院にも近いことが条件だった。
その条件にぴったりあてはまる物件だった。
その叔母さんも亡くなり、家を取り壊して土地として売却を頼まれていた。
当時はバブルの終わりころで、坪20万円くらいで買ったのだが、現在の近隣の取引相場は坪13万円~15万円といったところだ。
しかし、この土地については前述のように悪条件が重なっているので、近隣の相場より安く売らざるを得ない。
私は、坪10万円程度まで価格を落とせば割安感で売却可能と判断していた。
その腹積もりで何度か商談をしたのだが、前述の3条件がひっかかって、前向きに進む商談がなかった。
実際、前述の条件を考えると、坪10万円以下も考えるべきだが、購入の際に私がかかわっていて、購入価格を知っているだけに極端に安い価格提示はしにくかった。
ただ、最近売り主も事情がわかってきたこともあり、またお金の要りようができたこともあって、価格をもっと下げてもいいという話が出ていた。
それで、再度、隣接者の方に商談をもちかけた。
隣接者の方の土地は狭いし、安くなればぜひ隣の方か買うべき状況なのだ。
私は、お隣のお宅であれば坪10万円を切って500万円程度で話をつける(坪数は53坪ある)から買っておかないかと話を持ちかけた。
すると、そんな値段になるなら検討するということになった。
数日後、息子の家を建てるために買っておこうと思ったのだけど、息子は別の土地を買うことになっていて、今回は見合わせるという返事が来た。
そんな商談をしたのが、今年の8月。
その後商談も途切れているので、明日の広告掲載物件に予定してたところだった。
その矢先に、売り主の来訪。
もっと安くしてもいいから早く売ってくれという催告に来たのだと思って、お客さんに椅子をすすめた。
すると、お客さんは、開口一番、「例の土地の売却については、いろいろ努力してもらっていて申し訳ないが、自分の方で買い手を見つけた」と言うではないか。
私は、ぴんと来た。
「知り合いの方ですか?」と聞くと、「隣の方だ」と言う。
やっぱり、そうだ。
売却金額を聞くと、私が提示していた価格より100万円安い400万円という。
これまでに何度も広告に掲載し、近隣の相場としては安いから商談がかかるが、悪条件のために商談が進まないということの繰り返しだった。
それで、その都度価格の見直しをするように提案して、売り主がやっと売れてもいい価格に踏ん切ったところだった。
安くしても売りたいことは、私が隣接者に伝えた。
そのとき、隣接者の気持ちは動いたが、買うにいたらなかった。
それは、その通りの流れだっただろう。
しかし先日、売り主が、伸びすぎた草を刈りに行ったところ、隣接者と話になり、「買っとってくれんかね」と声をかけたら、「400万円なら買ってもいい」という話になったらしい。
これも、その通りの話の流れだろう。
売り主も買い主も、もともと知り合い同士で、悪意はなくそういう話になったのだろう。
ただし、売り主は家内の縁戚である。
私は、10数年お中元お歳暮も届けている。
それなのに、当社抜きで売買をすることの了解を取りに来られた。
残念無念だが、今回、私は黙って引き下がる。
3年以上も売ることができなかったのだから仕方がない。
売れないことに、私が頭を痛めていることをわからせる努力をしなかった私が悪い。
またしても、悪徳不動産屋から仕事が失われた今日の出来事。
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