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2013年12月 3日 (火)

悪徳不動産屋日記 農業振興地域

 先日の忘年会でのこと。

 いつも司会をしているS不動産の松田氏に話しかけた。

 「あんたが司会を断ったから、おれに司会がまわってきたじゃないか」と恨み言の 一つでも言おうと思ったのだ。

 結構仲良くしている間柄なので、「あんたは、なんにも食べるヒマがないと言っていたけど、結構食べる時間はあるじゃないか。来年はまた、あんたが司会をしねよ」と、どうでもいいような話をしていた。

 そんな話のなかで、松田氏から私が売却依頼を受けている土地について質問が出た。

 その土地は都市計画区域外にある土地だった。

 農地ではないので建築はできるということで広告にも掲載していた。

 松田氏は、その土地は農業振興地域の農用地に指定されているので建築はできないのではないかというのだ。

 地目は原野。

 都市計画外にある土地については、都市計画法上の建築の制限は受けない。

 ただし、農地については農地法による制限があって、建築の制限がある。

 そのエリアは農業振興地域に指定されている箇所があるとは認識していたが、近所に家が建っているし、売主は10数年前に別荘を建てる予定で購入した土地だった。

 売主は何度も取引している建設会社の社長で、信頼のおける人物だったので、私はその話しを疑うことなく売却に向けての営業をしていた。

 松田氏によると、彼がすぐ近くに住宅付きの土地の売却の依頼を受けていているが、農業振興地域のために売れないとのことだった。

 その物件は土地が3000坪以上あるというもので、敷地の一部に住宅が建っている。

 その部分については宅地になっているが、残りの2千数百坪は農地になっている。

 その土地が農地以外に転用できれば買手もいるのだが、農業振興地域だから農地以外の転用が一切できないというのだ。

 そのときの調査で、私の預っている土地も農業振興地域に指定されていたというのだ。

 農業振興地域とは、「農業振興地域の整備に関する法律」に基づき、総合的に農業の振興を図ることが相当な地域として都道府県知事が市町村ごとに指定する地域である。

 法律用語はなんともわかりにくいが、ようするに農業振興地域の農用地にしていさた土地は、農地以外の転用は絶望的に厳しいものとなる。

 「農業振興地域」に関しては、当市では総合農政課が所轄する。

(農地法については農業委員会。都市計画については都市計画課。建築の許認可については建築指導課。と、さまざまな法律があって、それぞれに所轄する課が違っている)

 総合農政課に行き、農業振興地域に指定されている土地を調べる地図を閲覧させてもらった。

 結果は、地図にはしっかり農業振興地域を示す黄色のマーカーがついている。

 万事休す。

 建築は不可能。

 農地としての取り扱いしかできない。

 ということは、土地の価格は農地の価格になる。

 農地として売買が成立することは難しい。

 売主さんは、建築ができるという説明で購入していた土地だ。

 知り合いの口利きで購入したらしいが、買った価格からするとずいぶん損をしないと売れないだろう。

 お気の毒な話だが、私にとっては窮地に陥るのを助けられることになった。

 私が建築できるとして売買していたら、もらった手数料の数倍の損害賠償問題を抱えることになっていた。

 忘年会のおかげで、極悪徳不動産屋になりそこねた。

 何年やっても不動産業は難しい。 

 

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