悪徳不動産屋日記 万が一
取引の決済が近づいたので、客さんに連絡をとった。
決済というのは、法律的には契約の履行である。
買主は売主に代金を支払い、同時に所有権移転の手続きと物件の引き渡しをする。
ほとんどの場合、買主は銀行から借入をする。
売主は抵当権等の抹消行う。
所有権移転の手続きは司法書士に依頼する。
ということで、売主、買主、買主が融資を受ける銀行、売主が融資を受けていた銀行、そして司法書士の4者の都合を合わせなければいけない。
今回の取引は、売主は時間の融通がつく人なので、買主の都合にあわせてくれることになっているし、物件に抵当権はついていない。
従って、買主の都合にあわせて決済の段取りをとってきた。
契約では、決済の予定日は来月(12月)の15日までとしていた。
それに合わせて、売主は物件引き渡しの準備をしていた。
すでに引っ越しはしていたのだが、いらない荷物が残っていて、それを処分する必要があった。
契約の日程にあわせて、売主は今月末までに、残りの荷物を処分するという予定にしていたのだが、買主と買主側の銀行の都合で今月28日に決済したいと言ってきた。
予定より早いのだが、なんとか買主の都合に合わせることにした。
日にちは28日に合わせることにしたが、時間を決めてなかった。
時間も買主の都合に合わせることにして、買主に連絡をとったというわけだ。
さて時間を決めようと思って、都合のいい時間をきくと、午後1時半にしてくれとのこと。
この方の都合で時間を決めたというのに、「万が一、自分が行けないときは家内を代理で行かせればいいでしょう」と言う。
最近、司法書士の本人確認が厳密になっていて、本人が来られないときは、あらかじめ司法書士が本人確認をしておかないと登記手続を受け付けないことになっている。
よそのことはわからないが、とにかく当地(宮崎県の北端の街・延岡市)の司法書士は、本人確認をしないと登記の依頼を拒否する。
万一、とつぜん当日本人が来られないと取引はできない。
それで、「万一来られないということがあるかもしれないのだったら、28日までに1度司法書士の事務所に行って、本人確認をしてもらっておいてください」と伝えた。
このお客さんは営業職だから、外回りのついでに、ちょっと司法書士事務所に立ち寄ってもらえればいいのだ。
司法書士事務所は市役所の近くで、当市内で行動していれば、どこからでも15分もあったら行けるところにある。
万が一来られなくなる心配があるのだったら、ちょっと立ち寄ってもらえばすむことなのだ。
それなのに、「そこまで心配しなくても、まず行けなくなることはないと思うんだよね。だけど、(営業職だから)突発の用事が入って、万が一行けなくなるということがあるかもしれないということかあるかもしれないということなんだよ」と、事前確認に行っておくとは言わない。
突発的に万が一が起こったら、時間をずらすか日にちを変えればいいと思っているのだろう。
自分のことしか考えていない善良なるお客様が少なくない。
不動産の取引は、一般の小売店で物を買うのとはちがう。
売手の商店を買手に買い物をしているわけではない。
売手もまた、善良なる市民なのだ。
商店と消費者の取引だったら、商店が消費者の都合に合わせるだけで良い。
しかし不動産仲介の場合、取引の相手方の売主もまたお客様なのだ。
買主がドタキャンすると、売主はもちろん、銀行、司法書士と、複数の人に迷惑をかける。
そして、それらの人の時間の調整はすべて不動産業者がしているから、ドタキャンされた相手方は、不動産業者の不手際だと思われる。
かくして、いいかげんな悪徳不動産屋が誕生するというわけだ。
それで私は、「ひょっとして万が一があるという不安があるのでしたら、仕事の合間に司法書士事務所で本人確認をとっておいてください」と懇願?する。
それに対する返事は、「まず大丈夫だと思うんだけどね」ということ。
同じ話の繰り返し。
そこで悪徳不動産屋の本領発揮。「万が一があっても安心できるように、司法書士事務所に顔を出しておいて下さいよ!」と、精一杯の皮肉をこめたつもりで言い放った。
しかし、善良なるお客様は、私の厭味をまったく意に介していなかった。
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