寂しい墓標
25年以上も前のこと、お客さんの職場にかかっていたカレンダーを目にして、私は衝撃を受けた。
「そのうち そのうち べんかいしながら 日がくれる」
下手くそな筆文字に見えたが、なぜか惹かれるものがあった。
「みつお」という署名と落款がある。
お客さんの名前も「みつお(三男)」だった。
先生と呼ばれる職業の方で、若くして人から尊敬を集めていた。
私は、この先生の書をカレンダーにしているのかと思った。
職員さんにたずねてみたら、市販のカレンダーだとのこと。
インターネットの無い時代で、「みつお」なる人の正体を調べるすべがなかった。
しかし、下手くそに見える文字が気になってしかたがなかった。
カレンダーをよく見ると、大きな筆文字の下に小さな活字で詩のようなものが書いてあった。
そのうち…
そのうち…
そのうち… と
できない理由を
くりかえしているうちに
結局はなにもやらなかった
空しい人生の幕が下りて
頭の上に 寂しい墓標が立つ
私は、このままでは「寂しい墓標」が立ってしまうと感じた。
寂しい墓標が立たないように、「今、やろう」と思った。
しかし、「今、やろう」は、「そのうちに」「そのうちに」と、25年余り手つかずのままだった。
今まさに、自分の頭の上に「寂しい墓標」が立ちつつある。
もうそれは、避けようもないことかもしれない。
そう感じて、何も言えなくなってしまいそうになっている。
まだ、なんとかしたいとは思っているが。
« 下書きのまま公開できない記事 | トップページ | 憲法9条の活用 »
「日記・コラム・つぶやき」カテゴリの記事
- はい、また、明日から(2023.05.07)
- 92 歳の食いしん坊 切なる願い(2023.05.04)
- 5月1日 文字が大きくなっていた(2023.05.01)
- 4月1日 痛くない一日(2023.04.01)
- 袴田事件再審開始決定(2023.03.20)
コメント