悪徳不動産屋日記 10年ぶりの電話
十数年ぶりの電話だった。
「久しぶり。元気でやってますか?」
その声に、ちょっと嫌な予感がした。
電話の主は高校の先輩だった。
同窓会で挨拶をすることはあったが、親しく言葉を交わすほどの付き合いはなかった。
古いアパートを持っておられるが、ここ10年余り声がかかったことはない。
なにかトラブルでもあったのかと思いつつ、言葉を返した。
「なんとかやってます。ほんとうにお久しぶりですね」
あいさつの言葉もそこそこに、先輩はすぐに用件に入った。
「君がお世話してくれた入居者が、室内で亡くなっているのが昨日見つかってね・・・」
嫌な予感が当たってしまった。
孤独死?立会い?遺品整理?
不安がよぎる。
つきあいのある同業者からも、管理物件内での孤独死の経験談を聞いたことはあるが、35年になる私の不動産業生活の中で、そんな経験は一度もない。
私に何をしてくれというのだろう。
こんな仕事をしているのだから、遺品整理の立会いをしてくれと言われたら、やるしかない。
そう覚悟を決めていたのだが、用件は、賃貸借契約書控えがあったら内容を見てもらいたいという、簡単なないようだった。
孤独死ではあるが、亡くなったその日に発見されていた。
友達と夕食をいっしょに食べようと約束していたのだが、約束の時間になっても来なかった。
それで、電話で連絡をしたのだけど電話に出ないので、何かあったのではないかと部屋に来てみたら亡くなっていたということらしい。
その日にも連絡を取り合っていたので、本当に突然のことだったようだ。
部屋に内鍵がかかっていたので、警察を連絡をして、警察が窓から入って遺体を確認していた。
亡くなってすぐに発見された事も、内鍵がかかっていて部屋に入れず、警察から鍵を開けてもらったことも、不幸中の幸いといえる。
亡くなって数日たって発見されると死臭がひどいらしい。
同業者が経験した話しでは、匂いがとれずに床も壁もぜんぶ張り替えたそうだ。
孤独死して日数が立って発見されたことは、仲介するときの説明事項になるので、後の入居者がなかなか決まらないことになる。
警察の立会い前に部屋に立ち入ると事件性を疑われることになって、面倒なことになる。
ある意味不幸中の幸いな出来事で、すでに遺体も運び出されていて、親族との連絡もとれている。
「〇〇さん。大変でしたけど、不幸中の幸いだったですね。」
と、私も安堵した思いだった。
随分昔のことだし、社員が決めた仕事だったので、入居のやりとりについては私はまったく記憶していなかった。
契約書の控えを調べると、契約したのは13年前のことだった。
法的には書類の保管義務の期間もとうに過ぎている。
退去の立会いの義務もないのだが、むげに断るわけにもいかない。
契約書をコピーして届けに行った。
事後の処理についていろいろ相談があるのかと思って時間を伝えていたのだが、留守だった。
遺族との話しもとれて、契約書さえあれば済む話なのだろう。
心配することはなかったと、郵便受けに契約書を入れて帰って来た。
数時間後にお礼の電話が入り、「時間をとらせないから、もう一度寄ってくれないか」とのこと。
やっぱり事後の相談事かな?それとも、お礼の品をくれるのかな?と思いつつ訪問する。
いずれにしても、まったくのサービス業務だ。
果たして、用件は「ほんの気持ち」ということで、焼酎(紙パック1.8L)をいただいた。
私はアルコールは飲まないのだが、気持ちがありがたい。
ありがたく頂戴したが、この焼酎で、もう一仕事させられるのかもしれないという予感がまたまたよぎった。
予感はあたった。
そして悪徳不動産屋の本領を発揮することになる。
その悪行所業は、明日のブログに書かせていただくことにする。
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