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2015年8月 1日 (土)

悪徳不動産屋日記 杞憂

 朝、出勤前のシャワーを浴びていたら電話が鳴った。

 発信者には、商談中のお客様の名前が表示されている。

 つい先日、中古の建物を案内したお客さんだった。

 「ご相談したいことがあるので、親といっしょにお伺いしたいのですが、何時ころ行けばいいでしょうか」と言う。

 私は動転して、どういう用件なのかを聞けなかった。

 私の直感では、このお客さんは買わないと判断していた。

 昨日、自分の直感力を自慢したばかりだというのに、直感がはずれて、買うということなのだろうか。

 本来なら、買うという話は嬉しい話なのだが、今回はちょっと困ったことになるのだ。

 このお客さんは、お友だちといっしょに物件を見に来られた。

 そして二人でいろいろ検討しながら、時間をかけて見てまわられた。

 いっしょに来ておられたお友だちが物件を気に入ってくれて、私に代わって物件のいい所を説明してくれていた。

 そして帰り際には、気に入ったので親に話をしてみるということであった。

 親御さんといっしょに仕事をしていて、表立って動くのは自分だが、最終的な決定権をもっているのは親だから、話をして了解をもらうというのである。

 次の日、連絡をとったところ、親も見てみたいと言っているの返答。

 想定通りの答えである

 「ぜひ見てもらってください」と伝え、案内の日を決めてようとしたのだが、「また連絡する」とのこと。

 ずいぶんトーンが下がっている。

 気に入っていて前向きに話を進めるのであれば、すぐにでも案内の日程を決めるはず。

 追って連絡しますという言葉のニュアンスに、親御さんが乗り気がないのだということを感じた。

 私の直感では、この商談はアウト。

 あてにはできないと思いながらも、電話を待つしかない。

 案の定、2日経っても電話がない。

 待っていても話は進まない。

 ダメであっても結論をもらわなくてはいけない。

 こちらから電話してみようと思っていたのだが、そのやさきに、話が思わぬ方向に展開したのだ。

 いっしょに物件を見に来られていたお客さんが来社されて、いっしょに見た本人が買えないということなので、代りに自分が買いたいというのである。

 突然の話で、一瞬理解ができなかったが、いっしょに見て自分も気に入ったというのだ。

 自分が使うこともできるし、収益物件としての考えもあるので、ともだちが商売をやりたいというのなら貸してもいいという。

 詳しく話を聞くと、購入の資力も心配ない。

 ただし、資金計画の問題で価格交渉が入った。

 それもなんとかなりそうな価格である。

 その価格になりさえすれば、購入資金の問題はない。

 なんともきつねにつままれたような話だが、私にとっては願ってもない話だった。

 早速、売主さんに価格交渉をして、その場で契約の日時を決めた。

 3方どころか4方(売主、買主、買主のともだち、悪徳不動産屋)がまるく収まる話になった。

 そう思って喜んでいたところに、最初の購入希望者からの相談があるという話なのだ。

 早々に契約日まで決めてしまったのに、このお客さんが買うというための相談だったらどうしよう。

 善良なるお客様は、自分が買うといっておきながら気が変わったから買わないと言ったり、気に入ったのでとり置きしてくれと言っておきながら、連絡も無しにキャンセルするなんてのは平気でやる。

 つまり、自分が約束を違えるときは、自分なりの都合があるのであって、それは当然のことだと思っておられる。

 それなのに、相手側が約束をやぶると、烈火のごとく怒りまくって相手を責めたてる。

 今回の商談の場合、このお客さんは、はっきり買わないと言ったわけではない。

 すでに、他の人と売買契約を決めてしまったわけだが、このお客さんが買う気であるのならば自分を優先してくれと大騒ぎするだろう。

 はたして、朝、開店と同時にお客さんはお見えになった。

 親御さんが同行して来られている。

 どんな話なのかと、心臓をどきどきさせながら、しかもそれを相手に悟られることなく応対する。

 お客さんは、すぐにこんな話を始めた。

 今、自宅兼用で食品加工業をしているが、場所が市内のはずれにあって商売には便利が悪い。

 それで、市内の立地のいいところに移転しようとおもっていて、現在、自分の住んでいる家を売ろうと思っているというのだ。

 なるほど、そういうことか。

 それで、その家を売って、この物件を買おうということだったのか。

 それにしても、現在住まいになっている家は、市街地から遠く離れていて、まず売りに出しても売れる見込みがなさそうな地域だ。

 実際、現在の家については、すでに住宅の買取業者に査定を依頼したのだが、市場性がないということで買取は断られたそうだ。

 これが売れたら買うという話だと、現実的には実現不可能だ。

 それで、今日の相談とはどういうことだろうと思いながら、話の続きを聞いていた。

 いろいろ話をされるが、話の本題は、今回の物件は買えないということのようであった。

 そこで私は、「今日は、ご相談ということでしたが、相談ではなく、『買えない』というお断わりに来たのですね」と確認してみた。

 すると、その通りであった。

 わざわざ私に案内をさせたのに買わないということを恐縮されていたようだ。

 自分の都合で時間をかけて案内させて、あれこれ詳しく説明させて、資料を要求して、さんざん人を動かしておいて、気に入らないときは連絡の1本もない。

 そんなお客さんが大半で、こちらから確認の電話をすると迷惑そうに対要するお客さんさえある。

 案内した後に、「今回の物件は気に入りませんでした」などと、お客さんの方から電話をしてくれることは、ほとんど無い。

 それなのに、わざわざ足を運んでくれて、お手間をかけたのに買えなくてもうしわけないとご挨拶にお見えになったというのだ。

 「なんという人だ!」←(お笑いコンビ『バイキングの小峠風)

 私の心配は、まったくの杞憂に終った。

 日頃、心の中でお客さんに悪態をつくことの多い悪徳不動産屋であるが、こんなお客さんにでくわすと感激してしまう。

 これで、心置きなく商談を進めることができる。

 

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