悪徳不動産屋日記 台風からの贈り物
台風は、さまざまなところに大きな被害をもたらす。
私は古いアパートを所有しているもので、台風のが来るたびにビクビクしている。
テレビのアンテナが飛んで行ったり、雨樋が吹き飛ばされたり、雨漏りがしたり、小さなトラブルはしょっちゅうである。
最近の台風は、気象観測史上最大とか、過去に記録の無いとか、50年に一度だとか、テレビがおどろおどろしい予想を報じる。
先日の台風15号も、石垣島で70m超の瞬間最大風速を観測したと報じられていた。
勢いが衰えないまま九州に接近しているというニュースに、私は生きた心地もしないで夜を迎えた。
幸い、当地(宮崎県の北端の街・延岡市)では、想像しているよりは風も強くなかった。
私の古いアパートも、壁の一部がめくれた程度の被害で、入居者からの苦情や相談もまったくなかった。
唯一、台風被害について相談があったのは、私が買収をかけている住宅の隣接者の方からだった。
この住宅は、もう十年以上住む人がいなくて管理状態の悪い空家だった。
所有者が高齢で施設に入居して10年以上放置されていた。
親戚の方が市内におられるのだが、ほとんど放置状態だった。
隣接の方が、この家を購入したい希望があって、調査してみて親戚の方をつきとめて、所有者が施設入所していることがわかった。
たまたま縁があって、この親戚の方の土地を売らせていただいて、少々信頼をもらった。
悪徳不動産屋といえども、たまにはしっかりした仕事をして信頼を得ることもあるのだ。
それで、この親戚の方を通じて、放置されている空家の売却をお願いしてみた。
好意的に話を聞いてもらったのだが、所有者の方は御高齢で認知が進んでいることがわかった。
所有者が認知症で意思能力がない場合には不動産の売買といった重大な法律行為はできない。
本人にとってどうしても売らなければいけない事情が発生したような場合は、後見人を立て裁判所の許可を得れば売却できる。
しかし、この案件の場合にはそれも難しかったし、そもそも売らなくはいけない理由もなかった。
そうこうしているうちに、そのあと2年くらいして、所有者の方が亡くなられた。
親戚の方の土地を売る際に、相続登記が必要で相続のお手伝いをした関係で、空家の相続の相談も受けていた。
相続人間で、この家を相続でもらう人は決まっていたので、相続でもめることは無いのだが、相続の手続きの手伝いをしてあげた。
この家をもらうことになっている人は、高校を卒業して以来40年以上県外で暮らしている方で、相続した後は売るだろうという話だったので、無料で相続のお手伝いをした。
相続人が多く、県外に住まわれている人も数人いたので、スムーズに手続きできるように、相続人さん達にかわって私が動いて必要書類を揃えたり印鑑を取ることも手伝った。
そして無事相続登記が終了。
これで売買契約の運びになると思ったのだが、相続した方はすぐには売らないと言い出した。
売るなら欲しいという人が待っている話だったので、私は売ってもらうように何度もお願いしたのだが、2年後に定年になってから考えるとのことで話がまったく進まない。
その後も、隣接の方から、なんとか売ってもらえないかと何度か相談を持ちかけられて、その都度、売却をお願いしていたのだが、まったく埒があかなかった。
来年定年を迎えるので、それから考えたいという返事しかなかった。
ところが、この台風で、この家の瓦が数枚吹き飛ばされた。
築後55年になる古い建物だったので、一部瓦の下地まで飛ばされていた。
隣接の方から、このままでは危ないという連絡を受けた。
面倒なことになったと思ったが、すぐにこれはチャンスだと思った。
早速、電話で状況を説明する。
今回は幸い近隣に迷惑をかけなかったけど、次の台風が来たら、まわりに大きな被害を与えるかもしれない。
だからすぐに修理が必要だけど、どうせ先々売るのであれば、修理代に多額の費用がかかるのはもったいない。
隣接の方がほしがっているので、このままの状態で引き取らせる話をするから、この際売ったらどうかと話を持ちかけてみた。
悪徳不動産屋の面目躍如。
当然、そう思ってもらえるトークをした。
結果、3年越しの話が3日で、一応まとまった。
不動産の話は、下駄を履くまではどうなることかわからないが、まずは間違いないだろう。
台風から、思わぬ贈り物をいただいた。
« 悪徳不動産屋日記 | トップページ | 「火花」読んでいます »
「05不動産情報館日記」カテゴリの記事
- 悪徳不動産屋日記 100パーセント儲かる計画なら銀行へ(2022.08.03)
- 悪徳不動産屋日記 これは不動産屋の仕事ではありません(2022.06.08)
- 悪徳不動産屋日記 写真は同じ?(2022.06.07)
- 悪徳不動産屋日記 連絡をしない不動産屋(2022.06.06)
- 悪徳不動産屋日記 負うた子に教えられ浅瀬を渡る(2022.04.14)
コメント