悪徳不動産屋日記 値下げ交渉
電話が鳴った。
受話器を取ると、いきなり、「店舗じゃけどよね」と聞いてきた。
始めて受ける電話で、どの店舗のことかわかない。
「どちらの店舗のことですか」と尋ねたところ、「おたくが貸し店舗の看板をつけているところよ」との返答。
小さい不動産会屋とはいえ、預っている貸し店舗は1件だけではない。
悪徳不動産屋としては、「ちゃんと質問に答えんかい」と言いたいところをぐっと我慢して、「何町にある店舗ですか」と聞く。
すると、「直ちゃん通よ!」と言う。
「直ちゃん通り」という町名は無い。
町名がわからないのだろう。
「直ちゃん」というのは、当地(宮崎県の北端の街・延岡市)の有名店。
当地延岡は、チキン南蛮の発祥の地である。
発祥は、「直ちゃん」と「おぐら」の2店。
一方の雄の「直ちゃん」は、開店の11時前から行列ができる店なのだが、味を変えたくないということで、かたくなに、店の拡張もせずに本店のみでの経営を続けている。
問い合わせをしてきた方は、町名を知らないから「直ちゃん通り」と言ったのだろう。
その通りに当社が募集看板をつけているのは1店。
当社から100mくらいのところにある。
「あ、わかりました。〇〇というお店の隣ですね。お聞きになりたいのはどういうことですか?」
「家賃はいくらけ?(いくらですか?)」
募集家賃は5万円。
それを伝えると、「3万円にしてくれたら借りるけどね」と言う。
全国の例にたがうことなく、大型店出店の影響で地盤沈下してしまった商店街の小さな店舗で、空いたまま数年が経っている。
それにしても、いきなり3万円とは、家主はどう思うだろう。
単なる冷やかしであれば失礼な話。
相手の名前を聞いたところ、近くで店をやっている者だという。
「どちらですか?」と具体的に聞いてみても、「すぐ近くよ」と、のらりくらり。
「自分の名前も名乗りもせずに、人様の財産の価値を勝手に決めてきて、無礼千万!」といいたいところだが、ぐっとこらえて話を続ける。
結局、どこのどなたかはわかった。
数年空いたままなのを承知で価格交渉をしてきたのだろう。
3万円という数字に家主は抵抗があるかもしれないが、現状のまま借りてもらうのであれば一考を要する条件である。
なんとか説得してでも了解をとろうと思ったが、往々にして値切っただけで借りない人が多い。
悪徳不動産屋はさまざまな法規制に縛られているが、善良なる消費者は、なんでもありなのだ。
「買うから・借りるから、価格交渉をしてくれ」と言われて、売主・家主をやっとのことで説得したと思ったら、「はっきり買う・借りるとは言ってないよ」と平然としている善良なる消費者は少なくない。
法制度に保護を受けている善良なる消費者は、何をやっても許されるのだ。
そんな経験を山ほどしているから、迂闊に善良なる消費者の言葉は真に受けないことにしているのだが、善良に見える人を相手にした場合つい油断をして、苦い思いをすることになる。
今日の電話のようなお客さんだと、うっかりものの悪徳不動産屋も警戒をおこたらない。
そこで、「3万円で交渉してみますが、了解をとったら絶対に借りてもらわないと困りますよ」と、ちっと口調を強くして念を押してみた。
すると、「うーん。また電話するわ。」と言って電話を切った。
それから2時間になるが、いまだ電話はない。
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