手術前後の絶食期間短縮
胃や腸の手術の前後には「絶食」が常識だったが、最近は絶食期間を短くして、患者の回復力を高める試みが、一部の病院で始まっているそうだ。
患者にとっても苦痛が少なく早く退院できる利点があるのだという。
たとえば、60代の男性は手稲渓仁会(ていねけいじんかい)病院(札幌市)で胃がんの手術を受け、5日後に退院。歩いて病院前のJRの駅に向かった。
この男性は2週間は入院すると思っていたそうで、余りにも短くてびっくりしたと言っていた。
この病院では、2011年から「手術後回復力強化プログラム(ERAS〈イーラス〉)」を導入して入院期間を短縮している。
入院期間が短くなった大きな要因は絶食期間の短縮。
従来、胃や腸の手術をする場合、胃の内容物が逆流して肺に入ることなどを避けるため、手術前には絶食が必要と考えられてきた。
手術後しばらくは腸が活動するのを待ち、縫い合わせた部分に負担をかけないよう、食べ物をとらずに点滴をしていた。
しかし、絶食が続くと体力が落ちるうえ、空腹の苦痛がある。1990年代以降、海外の研究で、手術後に早めに口から食べても絶食の場合と比べて安全性に差がないことが判明。
手術前についても胃を空っぽにするにはそれほど時間はかからないとわかってきた。
同病院では大腸がん手術の場合、従来は手術前日の昼食から手術後3日目の朝食まで、食事を止めていた。現在、絶食は手術後から翌日の朝食まで。
手術後の痛みのコントロールが大切で、痛いと動けないし食べられない。
動くと食欲も出て、体力も早く回復するということだ。
同病院では、麻酔の工夫で痛みを抑え、順調なら手術翌日からベッドから離れて病棟内を歩いているという。
早期退院を進めるには、病院全体での取り組みが必要で、医師、看護師、栄養士らによるチーム医療が欠かせない。
同様なプログラムを導入している病院は日本ではまだ少数のようだが、手術ごに早期退院をめざす取り組みは欧州では広く実施されているそうだ。
2005年に欧州の学会で一連の強化プログラムが発表されてから普及し、日本でも10年ごろから一部の病院で始まった。
日本麻酔科学会は12年の「術前絶飲食ガイドライン」で、水は手術の麻酔の2時間前まで安全に飲めるとしている。
麻酔科医の谷口英喜・神奈川県立保健福祉大教授は「欧州では大腸の手術で根拠に基づいて手順を見直して一連の強化プログラムを整理した。日本でも実施できることばかり。食べられない、動けないのは患者にとって苦痛です」と言っている。
これに限らず、いままでの常識が今の非常識という問題はいくつもある。
その代表として、運動中の給水がある。
われわれ時代は、運動の練習中に水を飲むのは厳禁だった。
夏の暑い盛りの炎天下で地獄のような練習でしごきまわされて、その間水は一切飲むことを許されなかった。
なんの根拠もない伝説のような常識に振り回されていた。
医療の世界でも、根拠のない伝説的な常識で人の生死がとり扱われているという、一つの出来事だった。
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この札幌の病院は、私が何度も目の手術をしたところです。
検診のきっかけは、眼科に釧路時代知り合いになった私と同年の医師がいたためです。
それ以外でも病院全体としての高い評価があったためです。
現在も定期健診で年に数回通っているし、腎臓結石や整形外科などでもお世話になりました。
コメントしようと思ったのは自分に縁のある病院のことが、遠い延岡から記事に載る事に何となく愉快な感じがしたからです。
投稿: 藤按 | 2016年2月24日 (水) 08時27分
藤按さん。いつもコメントありがとうございます。
ほんとうに何に縁があるかわかりませんね。
それにしても立派な病院のようで、うらやましいです。
私は、半年余り前から臭覚を失って、食べる楽しみを奪われてしまったのですが、当地には、その原因を本気で調べてくれる医者がいません。
何件かの耳鼻科に行ったのですが、匂いがなくても命に別状はないのだから、あきらめなさいとでも言わんばかりの対応です。
実際、藤按さんのご苦労に比べたら、なんでもないことかもしれないのですけど、患者の悩みに真摯に向かい合ってくれる医者が欲しいものです。
つい、自分の愚痴になってしまいました。
コメントありがとうございました。
投稿: johokan | 2016年2月24日 (水) 18時37分