悪徳不動産屋日記 わけあり物件は隠さず告知する
またまた、殺人物件の続き。
殺人や自殺のあった物件は、心理的な瑕疵として告知する義務がある。
法律になじみのない人には、瑕疵というのは聞き慣れない言葉だと思うが、欠陥とか欠点という意味だ。
善良なる消費者様は、不動産屋はみんな悪徳で、事故物件を隠して売るのではないかと疑いの目で見ることがあるようだが、自殺があったことを隠して取引する不動産屋はそんなに多くはないのである。
なぜならば、隠れた瑕疵が後でみつかった場合、契約の解除や損害賠償の要件になる。
損害賠償の対象者は、家主や売主だけでなく、仲介した不動産会社もその対象になる。
だから、普通の不動産屋であれば、自殺や殺人があった物件は必ず説明するはずだ。
取引の後でわかって、お客さんが泣き寝入りしてくれるのならいいが、今どきそんな気の弱い善良なる消費者はいない。
善良なる消費者は鬼に化身し、罵詈雑言を浴びせ、金を戻せと責めたてるだろう。
仮に1,500万円の中古住宅の仲介であれば、仲介手数料は約55万円。
自殺があったことを隠して55万円稼いだとしても、あとで事実がわかって裁判にでもなれば、何百万円もの損害賠償の判決がでることもある。
すぐにばれなくても、何年も後になってもその危険は無くならない。
倒産寸前で、今日の食事にも事欠くという状況の不動産屋であれば、目をつぶって目の前の50万円に飛びつくこともあるかもしれないが、そこまで追い込まれていない状況の不動産屋だったら、そんな割に合わない取引はしない。
賃貸物件にしても、そうだ。
当地(宮崎県の北端の街・延岡市)の賃貸物件の標準的な家賃は4~5万円程度。
すなわち、一件の賃貸物件の取引の仲介手数料は4~5万円である。
もし、事故があったことを隠して賃貸契約をしていても、かならず後でばれる。
時間が経ったからといって善良なる消費者様は、許してくれない。
敷金礼金の返還、引っ越し代は当然のこと、精神的慰謝と称して多額の損害金を要求してくる人もいるだろう。
4~5万円の手数料しかもらっていないのに、問題が起これば、20~30万円の損害賠償はまぬがれない。
だから、ほとんどの不動産屋は必ず告知をしているはずだ。
家主さんには気の毒だが、なにも危険を犯して契約をするよりも、なんにも問題のない物件を勧めればいいのだ。
しかし開く即不動産屋が気をつけなくてはいけないのは、善良なるお客様であるはずの家主様が事故があったことを隠して仲介を依頼してくることがあることだ。
知らずに仲介して後で問題になった場合、家主が自分が隠していたことを素直に認めてくれたらいいのだが、不動産屋に責任をかぶせてこられると、不動産屋は窮地に立たされることになる。
善良なる消費者の立場である家主や売主が意図的に、自殺や事件があったことを隠して物件の売却や賃貸の斡旋の依頼をしておきながら、問題が起っても、不動産屋から何も聞かれなかったから言わなかっただけと言い逃れをすれば、すべての責任を不動産屋が背負わされかねない。
善良なる消費者と悪徳不動産屋の争いになると、一般的に善良といわれる消費者の言葉が正しくて悪徳不動産屋が嘘をついていると思われがちだ。
長い不動産業の中で、なんどもそんな経験をしている。
だから私は、売主や家主に過去の自殺や事件はなかったかを聞くことにしてる。
ここで油断をしてはいけないのは、善良であるはずのお客様だが、自分の責任をまぬがれるためには嘘をつくことがある。
口頭で聞いただけだと、お客さんが事実を隠して依頼をしてきたのに、が「不動産屋になにも聞かれなかったので言わなかった」と言い張られれば、水掛け論になってしまう。
そうなると、悪徳不動産屋は立場が悪い。
一般的に、消費者は善とみなされているものだから、善良なるお客様が「聞いてない」「説明を受けていない」「知らなかった」と、言い張ったら、悪徳不動産屋は泣き寝入りするしかない。
だから私は、物件調査書を作製して、所有者に、物件についていろいろ質問して、最期に署名をもらうことにしてる。
その質問の中に、「過去に自殺や、事故はなかったですか?」という項目もある。
ただし、質問するときには口頭で「自殺や、事故はなかったですよね」と軽く聞くようにしている。
そして、調査書に依頼者の署名をもらっておけば、後で「言った言わない」という問題は起こらない。
これは、過去にたくさんの善良なるお客様と接してきた悪徳不動産屋の、必用にかられた知恵なのである。
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