悪徳不動産屋日記 駐車場の草刈
電話が鳴った。
電話をとると、いきなり「駐車場の草刈を頼んでいたんだが、どうなっているんだ」
声に怒りがこもっている。
数日前、駐車場の草が伸びて、車が停めにくいので草刈をしてくれとの連絡をもらっていた方であった。
地主に直ぐに連絡をしたところ、直ぐには行けないが近日中にやっておくとのことであった。
一昨日、再度、草刈はいつになるのかという問い合わせをもらって、地主さんが直接刈ると言っていたので、近々行くと思いますよと答えておいたものだった。
そして今日の電話。
「草刈はいつになるのか」と、重ねての問い合わせだ。
「まだ行ってないんですね。もう行くと思うのですが、もう一度電話しておきます」と答えた。
すると、「もうすぐとかではなくて、いつ来るのか日時をはっきりさせろ」と、怒鳴られた。
そう言われると、ぐうの音もでない。
期日を確定させてなかったのは、私の手落ち。認めざるを得ない。
「すみません。もう一度電話しておきます。」と言うと、「こちらは金を払っているんだぞ。車が停めにくいのだ。すぐにやれ。」と、怒りをぶつけてきた。
私は、この「金を払っているんだ」「こちらは客だぞ」と言う言葉に対するアレルギー体質なのだ。
心の中で、「金はいらん。すぐに他の駐車場を探して出て言ってくれ」と言いたいのをぐっと我慢して、「地主さんにすぐやるように言っておきます。そしていつになるのか確認しておきます」と答えるしかなかった。
しかし、私が心の底では謝っていないのが伝わるのだろう、相手の怒りはおさまらなかった。
実際、私は自分が悪いとは思っていなかった。
もともと地主さんが直接貸して、管理も地主がやっていた駐車場だった。
たった4台しか置けない小さな駐車場だが、駐車料が遅れる人がいるので家賃集金だけやってくれということで、当社が駐車料の集金管理をしているものだ。
知り合いのよしみで引き受けたもので、集金手数料は300円、振込料は当社負担というボランティアと言ってもいい仕事なのだ。
しかし相手にとって仕事は仕事。自分は客だという気持ちで不満をぶつけてくる。
ここで読者の皆さまにもお伝えしておきたいが、駐車場の契約は正当な事由がなくても解約できるのです。
賃借権を楯にいすわることも、立ち退き料を求めることもできない。
本件の契約は1カ月の予告で、何の問題もなく解約できるようになっている。
お互い、気に入らなければ、いつでもなんのペナルティーも無しに解約できる。
いやなら解約してもらっても結構。
そう思いながら応対しているからか、相手はまだも私を責めたてる。
いつまでに終わらせるか、確定した期日をはっきりさせろということを何度も言っている。
俺は客だという態度がありあり。
それにアレルギーを持つ私の応対はぞんざいになっていく。
かくしてお客は、怒りにまかせて私を怒鳴りつけるように声を荒らげる。
こうなると、私も負けてはいられない。
なにせ私は悪徳不動産屋。
「私が、あなたにどなられる筋合いは無い。地主に電話させるから、文句があったら地主に直接言いなさい。」と、怒鳴り返した。
すると、「どこに目句をいったらいいかわからないのだ。だから、あんたに言うしかないだろう」と、理由にならないことを言い張る。
「だから、地主に電話させるから地主に直接言えばいいだろう。あなたは、自分は客だと言っているが、私はあなたからは1円ももらっていない。(地主と直接契約をしているから、契約締結の仲介料ももらっていないのだ)。あなたは地主さんに駐車料を払っているのだから、地主とってあなたは客だ。だから、客として文句がいいたいのなら地主に文句を言えばいいのですよ。わかりますか。あなたは、怒りをぶつける先を間違ってますよ。客づらして,いばった物言いは私に失礼な話しですよ。」と、こちらも(勝手な)言い分をぶちまけてやった。
しばらくは、怒鳴り合いであった。
どちらも引き下がらず、とにかく地主に連絡する。結果は伝える。文句があったち地主に言え。ということで、その場は終った。
それから30分位して地主から電話があった。
私からの着信を見て、やっとのことで連絡をくれた。
「すまん。すまん。何度も連絡をもらっていたようだね。なんだった?」
「忙しかったんですね。駐車場を借りている人から、草刈はいつになるんだと、やかましく電話が入ってんですよ。いつになるかハッキリさせろと言われるし、連絡はつかないわで参りましたよ。」と言うとちょっと不満げに伝えた。
すると、「いつ電話をもらったんだ?今日の午前中に草刈はすませたよ。あれで気に入らないと言ってきたのか?」との答えが返ってきた。
「そうだったんですか。朝、出勤して会社から電話してきてたんでしょうね。それにしても、いつになるんだとどなりつけられて、えらいなけんまくだったんですよ」と、ぐちる私に対して、地主はこう言い放った。
「そんなに文句を言うなら、もう貸さんと言っておきない。駐車場は賃借権はないんだから、契約を打ち切ってもいいんだよ。」
地主さん、それは私の考えと同じだけど、私に言わせないで自分で言ってもらいたいってもんだ。
すぐに、苦情の電話の主に連絡した。
「今日、午前中に草刈をしたそうですよ」
それに対して、「それは知らんかった。確認しておくわ。」
これで、終わり。お詫びの言葉は無い。
当然だが、確認したという連絡も無い。
善良なる消費者の仮面をかぶって、不動産屋を悪徳呼ばわりしながら、嫌なこと役回りは不動産屋におしつける輩の多いことよのう。
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