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2016年8月16日 (火)

悪徳不動産屋日記 迷惑駐車

 貸し店舗の賃借人から電話があった。

 当社が家賃の管理の依頼を受けている物件だ。

 古い建物だから、なにか故障でもあったのかなと思って電話をとった。

 「お世話になります。お久しぶりです。なにかありましたか?」

 何もなければ入居者から電話が入ることはない。

 入居者から電話があるのは、建物に不具合のあったときくらいだ。

 すると、「実は駐車場のことなんですけど、近所の人がちょくちょく無断で車を停めていて、私のところのお客さんが来たときに停められないことがあって困っているんです」と言う。

 私が管理している物件には駐車場はついていない。

 店舗の方は当社の管理物件で、駐車場は無しで借りてもらっていたのだが、たまたま隣に車が4~5台置けるくらいの広さの土地が空いたままになっていて、店舗を借りているお客さんの依頼で地主さんと交渉して駐車場として借りたものだった。

 駐車料金の支払は地主と直接やり取りしていて、管理も地主がしている。

 話しを聞くと、迷惑駐車をしているのは、ご近所の商店の人だということ。

 おいている人がわかっているなら、直接注意するなり駐車禁止の張り紙をすればいいのではないかと助言をしたら、ご近所のことで角立てたくないとのこと。

 それなら目をつぶって我慢をしたらどうかと言うと、お客さんがいないときは置いてもかまわないのだけど、お客さんが来たときにおけないのは困るのだという。

 かといって管理者である地主さんに頼むという考えはまったくない。

 要は、嫌な役回りを私にやってもらえないかということらしい。

 しかし、当社には管理義務はないし、それ以前に管理権も無い。

 従って、当社は迷惑駐車について注意や警告をする権限は無い。

 よくあることだが、近隣とのトラブルや知人家族間のトラブルの相談を受けることがある。

 昔に比べて少なったとはいうものの、不動産屋を悪徳よばわりする傾向は残っている。

 他方、不動産屋を便利屋的に使う善良なる消費者も少なくない。

 家主に直接言えばいいことや、入居者に直接言えば済むことを、角を立てたくないからと言って不動産屋に依頼してくる。

 こう見えて(どう見えているかはわからないが)私は気が弱いもので、少々のことは自分が我慢することにしている。

 ところが、善良なる消費者の皆様方は、常に自分の立場から物事を考え、当然のごとく相手側に自分の権利を主張したがる。

 我慢をするか、我慢できないなら自分で言えばいいものを、自分が悪者にはなりたくない。

 それならあきらめて我慢をすればいいものを、まったく無関係の不動産屋にその役目を振ってくる。

 無関係の私としては、お断りしたいのだが、突如、人は善良なる消費者と化し、断る私を悪徳呼ばわりするのだ。

 そんなやりとりを想像すると、断るもの面倒で、結局いやいやながらに依頼を引き受けることがおおい。

 しかし今回の場合、どう考えても私が迷惑駐車をしている人に注意をする立場ではない。

 それで、「佐藤さん(仮名)、私は駐車場の管理者ではないし、駐車場についてはまったく無関係な立場だから、私が無断駐車の方に苦情を言う権限もないんですよ。すぐ近所の方が置いていることがわかっているのだから、自分の店のお客さんの車が停められないので、駐車しないでくださいと言えばいいんじゃないですか」と伝えた。

 すると、「いえ、普段は、そんなにお客さんが重なることはないので、余裕があるときは停めてもいいと思っていたのですけど、このところお客さんも多くなったものですから停めてほしくないんですよね」とおっしゃる。

 「それなら、その通りに伝えれば、相手も納得すると思いますよ」と言うと、「隣近所だし、私からは言いにくい」と、気弱な発言。

 「佐藤さんの駐車場に、断わりもなく停めていて、佐藤さんがめいわくしているんでしょう。佐藤さんが停めないでくれと言うのは当然で、悪いのは無断で停めている人ですよ。停めないでくださいと言っても、相手が気分を壊すことはないと思いますよ。」と、再度、同じことを伝えた。

 すると、佐藤さんの本音がでた。

 「隣近所と角を立てたくはないんですよ」

 要は、自分がしたくない嫌な役回りを、なんとか私に押しつけようという魂胆なのだ。

 こう見えて(どう見えているかはわからないが)、私は根っから気が弱いのだ。

 仕事がからむと、お客さんの権利を守るために、敢えて言いたくないことも主張しなければならないことがある。

 しかし、自分のこととなると、からっきしで、もめごとになりそうになると、たいていの場合、私が引き下がるというケースが多いのだ。

 今回の場合、私が無断駐車をしているご近所の方に文句を言える筋合いの話しではないのだが、どうしても私になんとかしてもらおうと、相手は引き下がりそうにもない。

 「佐藤さん(仮名)、私だって角は立てたくはないのですよ。一円にもならないし、楽しい仕事ではないですものね。」

 どうせ引き受けさせられるのだから、黙って引き受ければいいものを、ここが私が悪徳不動産屋と呼ばれるゆえんなのだが、一言厭味を言わないと気が済まない。

 さらにもう一度、お客さんの車が停められないのでと自分で頼んでみてはどうかと、「あなたの駐車場で、あなたが迷惑していて、置いているヒトがわかっているのだから、停めないでくださいと言えば一番簡単なことですよ。当のあなたが何も言わないのに、管理もしていない無関係の私が文句を言って言ったら、下手すると相手から逆ねじをくらわされることもあるんですよ。」説明した。

 するといつものことではあるが、善良なる消費者は、か弱い羊へと変貌する。

 「自分ではどうにもできないんです。なんとかお願いできまさせか。」と、懇願作戦に切り換えてきた。

 ここにいたっては、悪徳不動産屋は逃げ場を失って、引き受けざるを得ない立場に追い込まれる。

 しかし、どう考えても私が直接苦情をいえる立場ではない。

 苦肉の策で、当社で作製している無断駐車お断りのはり紙があるので、無断駐車している車に、それを張ることを提案した。

 すると、「私が張るんですか?」とおっしゃる。

 「えっ!? 私にそこまで張りにいけと言うのですか!?」と、口に出るのをこらえた。

 この物件までは車で10分くらいかかる。

 それなのに、私に張り紙をしてくれとでも言わんばかりだった。

 自分が張り紙をすると、やはり角が立つということなのだろう。

 それで、無断駐車お断りの張り紙は、当社の社名をいれたものするということで納得してもらい、次の日に張り紙を持って行った。

 ちょうど経営者の方は外出中で、店の責任者の方だけしかいなかった。

 ガタイのいい40代くらいの男性だった。

 私は、「佐藤さん(仮名)に相談を受けましたので、無断駐車お断りの張り紙をもってきました。当社の社名で作っていますので、これを利用してください。」と手渡した。

 すると、「へっ、こんなもん張って効果があるんですか」と、せせら笑いながら受け取った。

 ここで悪徳不動産屋の堪忍袋がプチんと切れた。

 かといって、寄る年波で昔のように、ぶち切れて大声を出したりはしない。

 「無断駐車しているのは、すぐ隣の方だとわかっているんでしょう。停めたときにすぐに注意すればいいと思いますよ。」と優しく説明した。

 しかし、自分で直接注意をする気はさらさらないようであった。

 それで、「今まで何にも言って来なかったから、相手の人も迷惑をかけているという気持ちはないのだと思いますよ。お客さんの車が停められなくて困りますのでと、きちんと話せば分かるとおもいますよ。」という私の説明には無視を決め込んだ感じであった。

 私は、「オレに見せる不遜な態度を迷惑駐車の相手にぶつければいいだろう!」と言いたいのを我慢して、「では佐藤さんによろしくお伝えください」と言ってその場を辞した。

 その後、どうなったのか。

 今のところ、私の持参した張り紙に対するお礼は無い。

 

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