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2016年8月15日 (月)

「特急列車と人が衝突した

 今日午前、テレビでオリンピック100mの決勝を待っていたら、こんなニュースが入った。
 
 JR日豊本線の都農駅・東都農駅間<(宮崎県の北端の街・延岡市)と宮崎市のちょうど真中くらいにある町>で特急列車と人が衝突する事故が発生し、この事故の影響で延岡駅と宮崎駅の間が運転見合わせとなっているいうのだ。

 乗客150人にけがはないとも報じていた。

 なんとも違和感があったのが「特急列車と人が衝突する事故」という言葉。

 電車や車が衝突するという言い方はあるが、人と特急列車が衝突するという言い方は無いだろう。

 衝突というのは、質量が同じくらいの物がぶつかるか、大きさが違っていてもぶつかった双方に被害が生じるような場合だろう。

 ひらひらと舞っているビニール袋が風に乗って体にまとわりついたとしても衝突とは言わないだろうし、道路にまいていた水をあびても衝突とは言わないだろう。

 「特急列車と人が衝突」したというのは、列車が人をはねたのか、もしくは人が列車に飛び込んだということだろうと思って、どういう状況で列車が人をはねることになったのかと思ってニュースを見ていたが、事故の詳細は報じられないままニュースは終った。

 気になって、その後の報道を待っていた。

 数時間して運転再開のニュースがあったが、そのときも列車が止まった原因は「列車と人が衝突する事故」と言っていた。

 人をはねたという言葉が生々しくて使いたくないのであっても、列車が人をはねた場合は、普通「人身事故」という言葉を使うはずなのに、はねたと言いたくない特別な理由でもあったのかしらんと気になって仕方がなかった。

 列車の人身事故といって思い出すのが、ことし3月に最高裁判決の出た認知症患者の鉄道事故。

 これは、2007年に東海道本線で発生した鉄道事故の裁判だ。

 認知症患者が線路に立ち入って列車にはねられた。

 これに対して、JR東海が遺族に対して振替輸送費等の損害賠償を請求する訴訟を起こした。

 一審の名古屋地裁は、認知症患者の妻と長男に対して請求額約720万円全額の支払いを命じる判決を出した。

 二審の名古屋高裁は、長男に対する請求を退け、妻にのみ損害賠償の支払いを命じ、請求の半額約360万円の支払いを命じた。

 妻は認知症の夫の介護をしており、日ごろの夫の行動を制御できる監督義務者としての監督義務責任があるということからの判決だった。

 これでは、同様の介護状況にある患者は座敷牢のような設備に閉じ込めろということなのかと、さまざまな議論が渦巻いた。

 争いは最高裁に持ち込まれ、最高裁は長男・妻ともに損害賠償の義務はないという判決を下した。

 認知症の患者が列車に轢かれて亡くなっているにもかかわらず、JRが損害賠償の訴訟を起こしたことも話題になったが、第一審で請求金額の満額の支払を命じた判決が出たことでこさらに日本中の注目を集めた。

 個人や零細企業であれば、700万円以上の損害が生じて、自らの存続に係わるような被害を受けた場合、それを遺族に求めたくなるのも分からないでも無いが、JR東海という巨大で公共的な企業の損害賠償訴訟には違和感を感じた。

 今回の人身事故の原因は何かは分からないが、もし自殺であったならば損害賠償の訴訟を起こすべきだろう。

 遺族にはお気の毒だが、自殺で列車に飛び込まれると、鉄道会社のみならず多数の人が迷惑をこうむる。

 今日はお盆の里帰りや旅行客のUターンの乗客で、いつもより乗客が多かったはず。

 飛び込み自殺をすると、遺族が巨額の損害賠償が請求されるということを周知することは飛び込み自殺の抑制になることだろう。

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