悪徳不動産屋日記 いきなりの価格交渉は受け付けられない
今日、当社のホームページを見て問い合わせの電話が入った。
妙町(みょうちょう)という所にある380万円の中古住宅である。
土地が80坪ちょっとあるが、建物は築後50年以上。
380万円は、土地代相当の価格設定になっている。
安いもので、問い合わせが多い。
約1年間で10数組のお客さんを案内したが成約にはいたっていない。
問い合わせが多いのは、ホームページに掲載している写真のせいなのだろう。
なんの工夫も、加工もせずにとった写真なのだが、今流行りの古民家風に見えるのだ。
当初、数組のお客さんを案内したが、みなさん、ホームページの写真に過大な期待を抱いて見に来られる。
見た目は写真のとおりなのだが、やはり古い。
テレビや雑誌では、古民家を改造した家を紹介はするが、新築した方が安く上がるくらいの改造費がかかっていることは余り報じない。
ただし、この妙町の物件は、売り出す直前まで貸家にしていた物件で、借りていた人が退去したので売却することになった物件だ。
だから、このまま住めないことも無いのだ。
しかし、今から購入しようと思うお客さんは、このままで何年住めるか気になるところだろう。
案内したお客さん全部が、ホームページを見て、売り切れては大変、今すぐにでも買いたいとばかりに、勇んで見に来られるが、物件を見て気持ちが収まると、どこが悪いという明確な理由もなく、むにゃむにゃと、なんともなしに話しが消えていくというパターンだった。
そんなことの繰り返しだったもので、ホームページに問い合わせがあった際には、あらかじめ水をかけて熱を冷ますような話しをしてから案内するようにしていた。
そんな物件に、また今日問い合わせが入った。
ホームページの資料を参考に、いくつか質問を受け、それに答える。
するといきなり、「(この物件は)どのくらい安くなると?(どのくらい安くなるの?)」ときた。
きた、来た、である。
買手のお客さんがよく発するセリフである。
このセリフに対して私は、「いくらなら買うんですか?」と答えることが多い。
ほとんどのお客さんが、「いや、買うというわけではないんだけど、安くなるのであれば、それから検討したいんだよ」というような話になる。
しかし、私が物件を預る場合は、全勢力をかけて価格設定をする。
安過ぎて、あとでうらまれるような価格では売らせたくはないし、かといって高過ぎて何年も売れない価格設定にしてもいけない。
私は、売却価格設定が不動産売却の明暗を分けると思って、真剣に査定をすることにしている。
売主さんは高く売ってあげると言うと喜ぶから、とりあえず売れないかもしれないけど高めの価格で売り出して、買い手が値切ってきたらそれに併せて値段を下げれば良いというやり方もある。
しかし私は、それは不動産の専門家のやり方ではないと思っている。
今回の話しの380万円の物件は、私の査定よりは少し高いが、私の査定価格を聞いた上での売主さんの希望価格である。
380万円という売主さんの希望価格が、私が許せる許容範囲の価格であったから売却の依頼をお受けした。
私は、私が想定する価格と大きくはずれた高額での売却を希望されたのであれば、依頼はお断りすることにしている。
不動産の査定を大きくはずれるような価格で依頼を受けても、まず売れない。
いかに努力しようとも、徒労に終わる。
私は悪徳不動産屋。無駄働きはしたくない。
私は、あらかじめ値引分を上乗せした営業もしない。
だから、 「いくら安くなるんだ?」と聞かれても、答えようが無いのだ。
今回はっきり断言できることは、売主さんは380万円で売りたいということ。
私が買手のお客さんに思うのは、どのくらい安くなれば買いたいと思うのだろうということ。
それで、しごく素直な気持ちで、「いくらになれば買いたいと思うのですか?」と聞くのだが、「いや、まだ、買いたいとまでは思わないんだよ。ただ、どのくらい安くなるのかなと思って・・・」というお客さんが、ほとんど(いまのところ全部)なのだ。
そんなお客さんに対して私はさらに追い打ちをかける。
「気に入らないものは、いくら安くなってもしかたがないでしょう?気に入って、このくらい安くなれば購入を検討したいという価格を言っていただければ、全力をあげて売主さんと交渉しますよ。」と。
ましてや今回のお客さんは、現物を見ないままの価格交渉。
見たとたんに気に入らないかもしれないのだから、電話で価格の話しをする意味がない。
それで、今日のお客さんにはこう伝えた。「お客さん、まずは物件を見てください。見て気に入って、安くなれば買いたいということであれば、なんとか希望に添えるよう努力はいたしますよ。」と答えた。
ただし、いつものことではあるが、それはあくまでも買い手のお客さんの希望する価格が私の常識の範囲内であった場合のこと。
欲だけで、安ければいいとばかりに、常軌を逸するような価格交渉をしてきた場合は、にっこり笑ってお断りすることになるだろう。
なにせ私は悪徳不動産屋なのだから。
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