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2017年8月21日 (月)

悪徳不動産屋日記 売却価格査定

 一昨日、売却物件をあずかる予定であった。

 「予定であった」と、過去形になっているのは、その日には売却が保留になったからだ。

 先日、紹介者を通じて売却の相談があった。

 売却の相談者は、ご主人と二人で店を切り盛りしていたのだが、昨年ご主人が亡くなられて、この後は奥さんだけで商売を続けている。

 食品製造販売業で、製造から販売まで一人だけ。

 おそらく年齢は、(今日、年齢までは聞かなかったので推定で間違っていたら申しわけないが)70代の後半。

 アレルギー体質の体をおして、なんとか営業を続けてきたが、このところ体に不安がでてきた。
 
 年齢のこともあって、東京にいる子供さんから、東京で一緒に住もうと言われているということだった。

 紹介者に概略の話を聞き、一昨日、紹介者が依頼者宅へ同行してくれて話を聞くことになった。

 ありがたい話で、初回の訪問時に紹介者に同席してもらえると、私の話を安心して聞いもらえる。

 なにせ、昔は不動産屋というと「悪徳」という冠がつきがちな職業だった。

 紹介者から「この男なら、すべてませかせも安心だから、紹介します」などと言ってもらえると、仕事がやりやすい。

 こんな紹介をいただくと、それに恥じないような仕事をしなければならない。

 それで、日頃のんびりしている、よだきんぼ(宮崎弁で、なまけもの)不動産屋なのであるが、紹介者の信頼を裏切るわけにはいけない。

 直ちに登記事項証明書(登記簿謄本)、公図を取って物件の概要と権利関係の調査をした。

 そして、物件の下見に行った。

 最初の思惑では、売却価格の査定書を策定して、査定価格を元に売却価格を決めようと思っていたが、今回はあえて価格の査定はしなかった。

 物件を下見に行った際、私が査定する売却可能価格と、売主さんの売却希望価格に大きな開きがでるだろうという直感がひらめいたからだ。

 私は、不動産を売却するにあたって、最初の売り出し価格の設定が一番大事だと思っている。

 売主は、1円でも高く売りたいから、売却希望価格は売却可能な価格より高くなる傾向がある。

 不動産屋は、売主さんのそんな気持ちを重々承知している。

 真剣に価格を査定するとなると、近隣の取引事例を調べたり、取引事例物件との比較をして価格を決めていくことになり、時間も手間もかかる。

 売主さんとしては、少しでも高く売ってもらおうと思って、複数の不動産屋に相談をかけることも多々ある。

 そんなとき、査定価格の高い不動産屋をありがたがって、一番高く査定をした不動産屋に売却を依頼するという結果になる。

 しかし、査定した価格がいくら高くても、その価格は不動産屋が買い取るための価格ではない。
 
 買うのは一般のお客さん。

 買主は、1円でも安く買いたいと思っている。

 商売上手な不動産屋は、「矛盾」のいわれとおりのことをやっている。

 売主に対しては、「私は、他の誰よりも高く売ってあげます」と言い、買主には、「私にまかせてもらえれば、お買い得な掘り出し物をみつけてあげますよ」と言う。

 私が、最初の売り出し価格が大事だというのは、売り出し価格が買手が思う価格より極端に高すぎると、商談がまったくかからないのだ。

 商圏の広い大都市でのことはわからないが、当地(宮崎県の北端の街・延岡市)のような小さな地方都市では、売買事例を熟知しているお客さんが多い。

 取り引き事例(相場)とかけはなれた価格で売りに出すと商談すらかからないことになってしまう。

 私は、商談がかかる範囲で高めといった価格設定をすることが大事だと思っている。

 今回の依頼の物件は、住居兼店舗。売主の思惑では、商売をするには最高の立地と思っているはずだ。

 しかし、不動産取り引きの現状は、旧市街地の商業地の取り引きが低迷しているのだ。
 不動産業界全体としては、住宅地も値下がりしているが、住宅地は堅調に推移している。

 昔、一世を風靡した商売人さんは、昔の夢を引きずっている。

 自分の土地を一等地だという思いが大きい。

 はたして、今回のお客さんは、私の想像通りの結果だった。

 今回私は、自分が想定する価格は提示しないで、「街中の商業物件は非常に価格がつけにくいので、まずお客さんの売却希望価格をお伺いしますね」と切り出した。

 こんな質問をすると、いつものことではあるが、「わからない」という答えがかえってくる。

 いくらで売りたいのかと聞いているのだから、「わからない」という答えは無いはずなのだが、ほぼ全員が「わからない」と答える。

 それで、「では、いくらで売れたらいいなーという金額はどのくらいですか」とたずねる。

 それでも答えは出ない。

 これもいつものこと。

 次に、「売主さんは、みなさん、なんぼでも高く売れた方がいいと思っておられるから、自分の欲で、これくらいで売れないかなという数字でいいんですよ。どのくらいで売れたらいいなとおもってらっしゃいますか?」とたずねてみる。

 それでも明確な数字は出さない。

 「高けりゃ、高いだけいいけどね・・・」と笑いながら答える。

 そこで私は、「売主さんは、ほとんど全員、私たちが売れるだろうなと思う価格より高い価格で売れないかなと思っているんですよ」

 「それは当然のことですが、私たちは買主さんが思う価格を承知しているから、それとかけ離れた高い価格では売れないことを説明して、売主さんに売却可能な価格を説明していくことになります。」

 「通常は、そんな話をするのですが、今回は直感的に、お客さんの希望価格が実態の売却可能な価格とかけ離れていると思いますので、まずはお客さんの希望価格で動いてみよようと思っているんですよ」と説明をして、最近近くで売れた売買事例を提示した。

 土地面積、建物の構造等、ともに類似した物件だった。

 すると、私が思っていた通り、「そんな価格じゃ売れない」という言葉を発せられた。
 私の想定通り、現在の相場からすると5~6割高い価格を想定しておられたようだ。

 今後の生活に必用だという金額を計算されていて、なんとかその価格で売りたいということを言っておられた。

 やってみないとわからないが、おそらく近隣の取り引き事例以上の価格での売却は難しいと思いますよと説明した。

 安易に売主さんの話を肯定しても、絶対に実現することは無い。

 早く現実を伝えることが、今後の人生設計にとって大事なことだという、変な責任を感じてしまう。

「耳障りの悪い話になりますが、現実をお知らせすることが、お客様にとって大事なことだと思いますので」と、私なりの意見をお伝えした。

 結果は、「息子と相談してから」ということになった。

 つらい仕事になった。

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