悪徳不動産屋日記 懺悔
昨日、案内した中古住宅の購入申込みを受けたのだが、実は先客がいらっしゃった。
先客というのは、東京から当地(宮崎県の北端の街・延岡市)に移住されたお客様である。
御夫婦と子供さんお一人。
御夫婦ともに当地のご出身ではない。
詳しく話すとながくなるので省略するが、延岡を心から好きになっていただいて、東京での生活を捨てて延岡へ移住して来られた。
妙町という、延岡でもさらに田舎の方にある中古住宅の購入を検討していただいていたのだけど、リフォームが絶対に必用な物件だったため、とりあえず一戸建の貸家をお世話させていただいたお客様だった。
昨日購入申込みを受けた住宅は、先日の広告掲載前に、このお客様をご案内していた。
絶対気に入っていただけると思った物件だった。
見ていただいて、予想通り家は気に入っていただいた。
しかし、うかつなことに私は気がつかなかったのだが、駐車場が1台分しかない。
敷地の関係で、どうやってもこれ以上駐車スペースはとれない。
市の郊外なので、生活するためには車は2台必用になる。
周囲は田んぼと畑。駐車場になりそうな土地は無い。
唯一近くに駐車場になりそうな空き地があったので、そこを駐車場として貸してもらうか、車1台分だけ売ってもらえないか当たってみることにした。
調査の結果、その土地は売却希望の物件で、私の付き合いのある不動産会社から売りにでていた。
従って貸すことはできない。車1台分のスペースの売却は、地形が悪くなるので難しいだろう。
東京からのお客様にはその旨を報告し、ご了解をいただいての広告掲載だった。
どう考えても、もう一台の駐車スペースが確保できないと生活に支障がたある。
御夫婦のどちらかが、私のように移動手段をバイクにすればなんとかなるのだが、そんな強要はできない。
場所が市内でも郊外の物件だから、他のお客様でもかならず駐車スペースが問題になるだろうから、すぐに売れるとは思わなかった。
もし他のお客様で商談が進みそうなときも(東京からの)お客さんを無視して話しを進めることはしませんからねとお伝えしてから広告を出した。
価格が安いため3件問い合わせが入って、昨日最初の案内になった。
そのお客さんが、すっかり気に入られたのだ。
駐車場の件も問題ないとおっしゃる。
奥様の実家がこの物件の近くで、御夫婦共働きだから、ここであれば子供を親にみてもらえるというのだ。
不動産に限らず野ことなのだろうが、お客さんが重なるときは重なるもの。
昨日、案内の際に、お客さんが気に入りそうだったから、先客(東京からのお客様)がいて、その方を無視しては商談を進められないことは説明した。
このお客様がまた非常に人柄の良い方で、事情を素直に理解していただいた。
「そういう事情だったら、その方を優先していただいてもかまいません。もし駐車場の件でその方が購入を見合わせたときは、ぜひ連絡してください。私は駐車場は問題なく絶対に買います」ということだった。
かくして、さきほど東京のお客様に事情をお話しした。
これまた快く、「そういう事情でしたら、その方に買ってもらってください」とのこと。
自分の都合のみを主張するお客様と戦いながら仕事をしている悪徳不動産屋が、ときおり改心させられるお客様との出会いであった。
私は、ひごろお客様に悪態をついている悪徳不動産屋だが、こんなお客さんに出会うと、心から感謝する気持ちは捨ててはいないのですよ。
最終取り引きまでよろしくお願いいたします。
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