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2017年12月18日 (月)

悪徳不動産屋日記 相談という名の自己弁護

 家賃管理をしている賃貸物件のことで、家主さんから相談の電話が入った。

 戸建ての貸家の樹木とツタが伸び放題になっていて、近隣の方から伐採してくれと言われているのだけど、それは「法的に」家主の責任なのかという質問だった。

 家主さんの質問は、「法的に」どうかということについての質問であった。

 法的にというと、民法233条第1項に、「隣地の竹木の枝が境界線を越えるときは、その竹木の所有者をして、その枝を剪除せしむることを得」とある。

 なんとも、おどろおどろしい文章だが、隣地の樹木の枝が境界線を越えて侵入してきたら、その樹木の所有者に枝を切ってくれと言うことができる、ということである。

 家主さんの貸家の樹木は、何年も放置していたので太い枝が隣接地との境界線をはるかに越境している。

 法的には、家主さんは枝払いをしなければならない。

 法的には家主さんが切らなくてはならないことになる。

 私は、民法の条文の説明をし、その旨を家主さんに説明した。

 「家主さんが切らなくてはいけないということになるでしょうね」

 すると家主さんは、「貸家の入居人が切るべきじゃないのか」と突っ込んできた。

 入居の際に、そのことを条件にして、それを入居者が了解して賃貸借契約を結んだのであれば、それもあり得るだろうが、あらかじめ取り決めをしていなのであれば家主の責任だろう。

 よほど良い物件で格安な物件であれば、手のかかる庭木の手入れを条件にしても借り手があるかもしれないが、この物件は余り良い物件とは言えず、長期に空家になって放置状態になっていたような物件である。

 庭木は大きくなりすぎて、剪定を庭師に頼めば五万円ではできないかもしれない。

 それを借主に求めるのは無理な話しだ。

 「借主に切ってくれということはできないでしょうね」

 私は、法的にどうなるかと聞かれたので、法律の条文も伝え、法的に家主さんに責任かがあると思うと説明した。

 なのに、家主さんは、すんなりとは納得しない。

 借家人が家を使っているのだから、庭木の枝が伸びる前に借家人が切るべきじゃなかったのかだとか、この土地は家主さんのものではなく借地なので、地主の責任ではないのかと、なかなか自分の責任だとは認めない。 

 おそらく家主さんは、近所づきあいという道義的には切らなくてはいけないかもしれないが、法的な義務まであるとは思っていなかったのだろう。

 それで、その裏付けを私に求めてきたのだろう。

 私は、一部の人たちから法律に詳しいと思われているようで、よくこの手の相談を受ける。

 すなわち、「法的にどうか?」という相談である。

 しかし、「法的にはどうか?」と聞きながら、相談者は法的には自分に責任は無いという答えを求めていることが多い。

 相談者に不利になる見解を伝えると、みなさん、私の意見に異論をとなえる。

 相談者は、自分の都合のいいように法律を曲げて解釈し、それについて私に同意を求めいるのだ。

 一般的な社会人としての対応は、目の前の人に同調して波風が立てないようにする。

 普通は、「そうですね」と曖昧に答えることになるのだろう。

 しかし私は、空気を読めないアスペルガー。

 相手の言葉にストレートに反応してしまう。

 「法的にどうか?」と聞かれたら、私の法律的知識をフル動員して法的な見解をのべる。

 それが、たとえ相談者に不利な答えであっても、そのまま伝える。

 間違っているものは間違っていると答えてしまう。

 そんなとき、相談者との間にいやーな空気が流れる。

 だから、相談者に不利になる答えをしなくてはいけないような相談を受けたら、曖昧にと答えようと思っているのだが、相談を受けると、つい反射的に反応してしまう。

 今日の相談も、そうだった。

 家主さんは、自分が庭木を切らなくてはいけないということを最後まで納得しなかった。

 今日の相談は民法に規定がありますよと説明したのだけど、自分に不利な答えを出す私に、あきらかに不快感を覚えたことだろう。

 斯くして、私はまた悪徳不動産屋と呼ばれることになる。

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