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2019年4月 2日 (火)

宮崎県人にはわからない令和(れいわ)のアクセント論争 

 一昨日、昨日、今日、新元号の話題でもちっきり。

 今日は、新元号「令和」フィーバー。

 ところで、「令和」の読み方「れいわ」のアクセントはどこにおくのか、ちょっとした騒動になっている。

 「いわ」(「れ」を強調する)のか、「れいわ」(平板に発音する)のかということなのだ。

 「菅官房長官が『いわ』と発音したから『いわ』になるのだろう」とか、「『れいわ』と平板なほうがいいのではないか」と、アナウンサーやコメンテーターで論争がおこっている。

 しかし、悲しいかな、われわれ宮崎県人は、アクセントの違いが聞き分けられない。

 宮崎県は、ほぼ全域にわたって無アクセント地域なのだ。

 そのほか九州では、熊本県、福岡県、長崎県、佐賀県の一部が無アクセント地域だ。

 宮城県、山形県、福島県の一部も無アクセント地域のようだ。

 ということで、宮崎県人の多くは、「令和」のアクセント論争の意味がわからない。

 私は、東京の大学にいったのだが、教養課程のフランス語の時間に教科書の一文を日本で訳するよう指名された。

 私はあまりまじめな学生ではなかったもので、2、3回ずる休みをしていて、先生は、久しぶりに出席した見かけぬ学生をこらしめようとして指名したようだった。

 不真面目が学生の私は、当然予習はしておらず、困惑の極みでうろたえ、「わかりません」と答えようとしていたら、隣から級友がノートを差し出してくれた。

 フランス語の原文は覚えていないが、さしだされたノートの日本語訳は「その日は朝から雨だった」というものだった。

 書いてあるとおり、「その日は朝から雨だった」答えた。

 すると先生は、「君は出身はどこだ?」と聞いてきた。

 唐突な質問に、「宮崎です」と答えた。

 その答えに先生は、「宮崎では雨は空から降るのか?東京では雨は食べるものだよ」と言われた。

 私は、その意味がわからなくてポカンとしていると、先生は「雨は食べるもので、降るのは雨だよ」と、笑いながら繰り返す。

 教室内にはクスクスと笑い声がもれる。

 すると先生は、さらに、「君の田舎ではハシは渡るのか?ハシでご飯を食べるのか?」と聞いてきた。

 もう私の頭はぐちゃぐちゃ。

 何を言っているのかわからないのだ。

 日本語にアクセントがあることを知らずに生きてきたものだから、言われている意味がまったくわからないのだ。

 先生は笑いながら、「君の田舎ではハシで飯をくうのだろうなあ」と笑いながら、「次の文章を訳しなさい」と授業はすすんだ。

 さすがの私も、アクセントがおかしいと指摘されていることに気づいた。

 授業の後、隣の友だちに「みんなアクセントを気にしてしゃべっているの?」と聞いた。

 すると、「気にはしていないけど、自然にアクセントは使い分けている」というような答えだった。

 それでも私は、アクセントが多少違っても言葉は通じるから問題ないと思っていた。

 私が衝撃をうけたのは、その数日後、授業の合間に数人の級友たちと、学校の近くの喫茶店へ向って歩いていたときのことだった。

 ふと空を見上げると、雨上がりの空に大きな虹が出ていた。

 私は空を指さし、「あっ、虹だ」と叫んだ。

 すると、いっしょにあるいていた級友たち全員が怪訝な顔をして、いっせいに自分の腕時計を見たのだ。

 そして、「何言ってんだよ。まだ1時半じゃないかよ」と言われた。

 私が、空を指さして「虹」だと言ったのに、いっしょにいた全員が、まだ1時半なのに私が「2時」だと言ったことに驚いたのだ。

 そのとき、私はアクセントを覚えることの必要性を感じた。

 次の月の仕送りで、「NHKのアクセント辞典」を購入した。

 アクセントがあることを知らずに生きてきた自分には、日本語のアクセントを覚えるということは、未知の外国語を覚えるのと同じことであった。

 ぐうたら学生で、学校の勉強もしない私が、そんな地道な勉強を続けるはずもなく、すぐに挫折した。

 ただ、ヒマをもて余し、気が向いたときにアクセント辞典を開くことはあった。

 そんないいかげんな勉強でも、同じ日本語だから外国語を勉強するよりは身について言った。

 同音異義語の典型、「箸、橋、端」や「柿、牡蠣」「雨、雨」などのアクセントを、なんとなく聞き分けられるようになった。

 アクセントを気にして喋っていると、なんとなく標準語のアクセントも身についていった。

 しかし、学生生活を終え、故郷に帰って生活を始めると同時に、アクセントの使い分けができなくなってしまった。

 ただ私は、そのときとった杵柄で、令和のアクセント論争の聞き分けはできる。

 しかし、宮崎県人の98%は、「令和」のアクセント論争の意味さえわからないのだ。

 

 

 

 

 

 

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