次の日、かかりつけの工務店に電話したが、台風の被害が多くて、修繕依頼が殺到していてすぐには来られないとのこと。
昨日のお客さんは、こんな話を納得するようなお客さんではないが、その旨を事務的に伝えた。
案の定、すぐになんとかしろと怒鳴りまくる。
私の我慢も限界。
私の欠点なのだが、我慢が限界に達すると相手が誰であろうが牙を剥いてしまう。
大人げなく、大声には大声で怒鳴り返す。
今回の我慢の度合いは最大級であったが、最大級に達しただけに逆に冷静になれた。
そもそも、このお客さんは勘違いをしている。
私は加害者でもはない。そして、私に責任があるわけでもない。
入居者からいただいた報酬は、入居者の気に入る物件を探し、案内し、賃貸契約を締結するまでの仕事に対する報酬なのだ。
報酬は1ヶ月分の家賃相当額。当地(宮崎県の北端の街・延岡市)の家賃相場だと4万円から5万円だ。
入居後も、入居者が困ったことがあって相談を受ければ問題解決の手伝いはするが、それはサービス業務なのである。
入居契約の際に手数料を払ったからお客さんなんだぞとばかりに、不動産屋を下僕のようになんでもやってもらおうというのは大間違いだ。
私の方針は、是々非々。
家主にも賃借人にも一方的に味方することはしない。
私が相談を受けた場合は、常に公平に判断するようにしている。
それが相談者にとって不満な回答であっても、私の意見をはっきり伝える。
不動産の取引において、当事者は常に利害が対立している。
どちらかが得する回答は、相手方が損をする回答になる。
ほとんどの人は人から相談を受けた場合、目の前にいる相談者に嫌われたくはないから、相談者の求める回答をする。いわゆる忖度(そんたく)だ。
しかし、私の辞書には忖度という言葉はない。
「私がどう思うか」という質問を受けた場合には、即座に「私はこう思う」と答える。
「私がどう思うか」という質問だから、私がどう思うかを答えてしまうのだ。
自分がどう思うかは、相手を忖度しなければ実に簡単なこと。「こう思う」と答えるのみ。
ただし質問が、「法律的にはどうか」と聞かれれば即答はできない。
相手方の意見も聞いて、状況を分析しないと判断できないことが多い。
人間ってやつは、お金を出したがらない動物のようで、賃貸借での問題を例にとると、入居者の負担で直すべきものであっても家主が直すべきだと主張する入居者もいるし、家主が直すべき修繕でも入居者の負担にしたがる家主もいる。
貸主、借主、どちらが負担するべきか相談を受けたとき、、私は私の公平の天秤にかけ、私なりの判断を下す。
公平の天秤が少しでも傾いた方に判断を下す。
しかし、それは私がどう思うかという質問を受けたときに限るものである。
法的にどうなるのかという質問だと、答えが少し変わってくる。
法的にとなると、究極は裁判所の判例が答えだが、最高裁の判決までとってないか下級審の判決では、裁判所によってことなった判決をでている場合もある。
だから、法的にはと聞かれると、「裁判をしてみないとわからない」というのが正確な答えになることも多々ある。
こんなとき私がよく持ち出すのが、「行列ができる裁判所」というテレビのバラエティー番組。
3人の弁護士に法律的問題について回答させるのだが、3人の弁護士の意見が揃うことはない。
この番組が出来て説明しやすくなったのだが、法律的にはどうなるのかという話になると、一概にどちらかに断定は出来ない。
賃貸借の建物の修理義務が、貸主、借主どちらにあるのかという場合にも同じ問題が起こる。
どちらともいえないことがあるのだ。そんなとき、、お互いが自己の利益を100%主張してると話はつかない。
私が相談を受けた場合は、両者が納得いくよう公平公正に話をする。
お互いが感情的しこりを残さないように解決をはかる。
中には、法律的に家主が直すべき修繕であっても、直したがらない家主もいる。
私の経験した中では、経済的に余裕が無いし、台風は天災で家主の責任ではないから入居者に直してもらってくれと言う家主がいた。
この場合、私は頑として家主を説得して家主に直させた。
話が長くなったが、台風で雨漏りしたことで私に怒りをぶちまけてきた人が間違っているのはこのことだ。
私から家主さんに修理を依頼して、私が修理の手配を断取りするのはやぶさかではない。
なんとか早く直してあげたいと思うのが人情というもの。
不動産屋は味方につけるべきもの出会って敵ではない。
雨漏りが私の責任であるかのように責めたて罵倒されたのでは、手助けしようとい気持ちは失せる。
我慢が最大級の限界に達して、逆に冷静になった私は、「雨漏りを直す責任は家主です。私はこの物件の管理は頼まれていませんが、家主にはその旨伝えております。私が修理の手配もしてあげようと思っていたけど、あなたは私のやりかたに納得がいかないようだから、あとは自分でやってください。修繕義務は私にはありませんし、修繕の手配をするのは私の仕事でも無いし責任でもありません。法律的に私には非はありません。疑問があれば、どうぞどこにでも相談にいくといいと思います。これ以後、この問題については私は関与しませんのであしからず」
言葉を荒らげることなく、いつもより静かに落ち着いて、そう言い捨てて、その場をあとにした。
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