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2020年12月 2日 (水)

悪徳不動産屋日記 宅建士試験合格発表

 9時33分、私のスマートフォンが鳴った。

 「合格したな」

 今日は、宅建士試験(宅地建物取引士資格試験)の合格発表の日。9時半からインターネットで合否の確認ができる。

 今年教えた私の生徒?が合格圏内のようだった。

 万一不合格ならすぐには電話は来ないかもしれないが、合格していたらすぐに電話があるだろうと思っていた。

 果たして、スマートフォンの発信者を見ると生徒であった。

 合格だ!

 電話を取る。

 「おはようございます。清水です。」声が明るい。

 「どうだった?」

 「おかげさまで、ギリギリ合格していました」 

 資格試験は通るための勉強をしなければならない。

 100点をめざして勉強したらダメなのだ。

 100点をとろうとして勉強すると、勉強しなくていいことまで手を出してしまう。これは混乱のもと。

 ギリギリで合格しようが、満点で合格しようが、合格証書には点数は記載されない。

 私が教えたのは、受験生の多くが苦手としている「権利の移動」という科目だった。

 この科目は主要3科目の一つで、出題50問中14問出題されるのだが出題範囲が広くて深く、単なる暗記では対処できない。

 難しいのであまり深入りせずに半分くらいとれればいいとつもりで、他の暗記科目に力を入れたほうがいいというような指導をしているところもある。

 私がうれしかったのは、私の生徒は、この権利の移動の科目14問中12問正解できたこと。

 ちょっと残念だったのは、その代わりに他の科目で失敗があって全部で38問正解だったこと。

 各受験学校の合格来予測は37問から38問を合格ラインとするものが多かった。

 合格ラインは毎年変動する。

 ここ20数年のデータでは、一度だけ37問と言う都市があったが、だいたい35問とれば大体合格という試験だった。

 何十もの受験学校があって、各学校が毎年予測をたてるのだが、今年の予想は各学校とも合格ラインが上がっていて、36から38問を合格来とする予測が多かった。

 過去38問が合格ラインとなったことはないから、38問正解であればほぼ合格だと思っていたのだが、中にいくつか39問を合格ラインとする予測があった。

 それで安心ができず、少し不安を抱えての合格発表であった。

 結果は、合格ラインは38問。ギリギリの合格だった。

 宅建士の資格は、不動産の仕事をするために取っておいたほうがいい資格の一つでしかない。

 宅建士の資格と、不動産の営業力は別物。

 不動産屋は売ってなんぼ。

 宅建士の資格を取ったからと言って、土地や家がバンバン売れるようになるわけではない。

 学生時代に、高い授業料を払って専門学校に通って資格を取って、これで飯が食えると勘違いしている人をたまに見かける。

 専門学校は、生徒を集めるために資格をとれば飯が食えると思わせる宣伝をしているせいだが、不動産会社では、月に1件の契約もない宅建士より、月に5件も6件も成約する無資格の営業マンの方が偉いのだ。

 宅建士の資格をとったということは、不動産取引の基本知識を身に着けたということ。

 不動産取引は、一つとして同じ取引はない。

 何十年もやっていても、しょっちゅう初めての経験に出くわす。

 いくら知識を詰め込んだとしても、すべてを経験することはできない。

 動き回って、多くの失敗を経験し、それを解決していく中でしか不動産の仕事はできない。

 そしてたくさんの人と出会い、人のつながりを大事にすることだ。

 大きなことを言っているが、その対極にあって、よだきんぼ(宮崎弁で、怠け者)で動きが遅く、人との出会いを苦手として、人のつながりをおろそかにしてきた私。

 そんな私でも生きてこられたのは不動産業だったから。

 ただし、それは私が、私の師匠の営業心得十か条の最後にある「すべての基礎はうそをつかないこと」だけは守ってきたからかもしれない。

 

 清水君の、今から先の活躍を祈っている。

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