元彼の遺言状
久しぶりに、いっきに小説を読んだ。
その本は「元彼の遺言状」。
2021年 このミステリーがすごい大賞を取った作品だ。
パラパラと読んでみて。
私は小説読みが弱くて、普通なら最初の1,2ページで小説の世界に入り切れずに、後で読もうと放置してしまうこと多い。
そして、図書館の締切期限ギリギリになって義務的に読むことになったり、読まないまま返却することも少なくない。
しかし、この本は違った。
「なんじゃー!これは!」「なんという女だ。このあとどんな展開になるのだ?」
私は、1ページ目からいっきに小説の中に引きずり込まれた。
いきなり、こう始まる。
「差し出された指輪を見て、私は思わず天をあおいた。
働妙と私は、東京ステーションホテルのフレンチレストランで、フルコースのデザートを食べべ終わったところだった。
「これはどういうつもり?」
私は尋ねた。レストランのスタッフが花束を用意しているのも見逃していなかった。
信夫は、私の驚いた様子を見て、満足そうに微笑む。
「だから、僕と結婚してほし」
[そうじゃなくて]
私はガツンと刃を入れるように、信夫を遮った。
「この指輪はどういうつもりって訊いているの」
ため息に似た深呼吸をひとつすると、指輪を指さした。
「この指輪、カルティエのソリテールリングよね。定番なのは分かるけど、安直すぎないかしら。それに何より、このダイヤの小ささを見てちょうだい。0.二五カラットもないようだけど、よくもカルティエでこんなに小さいダイヤが買えたわね」
信夫の顔から、血の気が引いて行った。
すごい展開である。
話は、男がホテルのレストランで婚約指輪を渡そうとするところから始まる。
男はホテルのレストランのフルコースを予約し、サプサイズでプロポーズの指輪を渡そうと準備をしていた。
そのことはホテルにも伝えておいたのだった。
女は婚約指輪が安すぎると男を責めまくる。
女は弁護士。
男は、電子機器メーカーので研究開発職。
世間の平均以上の収入はあるのだろうがサラリーマンである。
女を喜ばせるつもりだった。
婚約指輪の相場を調べて自分達の年代の平均より少し色をつけて用意していた。
そう言い訳する男に対して、女は「だから何?」「あなたの私への愛情は、世間の平均程度ってこと?そもそも私は、自分が世間の平均どおりの女だと思ったことはないし、平均が四十万円だとしたら、百二十万円の指輪が欲しいの」と言い放つ。
男は呆気にとられて、餌を求める魚のように、口を開け閉めしていた。
レストランのスタッフも、おどおどしながらその様子をうかがっている。
「ごめんね。貯金をしているつもりではあるんだけど、メーカーのサラリーマンでは限界があって」と、泣き出しそうになりながら訴える男。
その姿を見て、さらに女の怒りは増した。
「何が何でも、欲しいものは欲しい。それが人間ってものでしょう。お金がないなら、内臓でも何でも打って、お金を作ってちょうだい」「何もしてないのに、それでお金がないから無理だなんて、つまり、あなたは私のこと、何が何でも欲しいってわけじゃないのよ。その程度の愛情の男には、私の人生に割り込む資格は無いの」と言い放つと、テプ金をポンとテーブルの上に置くと、男を一人残して、席を立った。
「さようなら」と別れの言葉を告げてホテルを後にした。
なんちゅう話だ。
いつもは、なかなか小説に入りめない私ではあるが、一気に小説の世界に引き込まれてしまった。
それに日頃私は、DVDやネット配信の映画を見ていて、転換の遅い映画は早送してしまう癖がある。
小説は、早送りはできないので展開の遅い小説だと、斜め読みして読み飛ばすことが多い。
しかし、「元彼・・・」は展開も早い。
早送りすることもなく、300ページちょっとの本を一気に読み終えた。
「面白い小説は、面白いなあ」と、小説の面白さを再認識した。
図書館のホームページを見ると、「元彼の遺言状」は、図書館ではいまだに予約29人待ちの状況。
お待たせしては申し訳ないので、早々に返却してきた。こう見えて(どう見えているかはわからないが)私は、いい人なのである)
外出自粛で時間を持て余している方、ご覧あれ。
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