悪徳不動産屋日記 老朽化した建物の解体費用
「古い家を壊す費用を国が出してくれるというけど、ほんとうか?!」
小中学校で同級生だった友人からの電話だった。
3年以上前から売却の相談を受けているのだが、売れていない土地の所有者だ。
その土地は、30坪ちょっとの狭い敷地いっぱいに2階建ての建物が2棟建っている。
現在の建築基準法では建ぺい率違反ぎりぎりの建物だ。
建物は昔は2軒の住宅だったが、長いこと使われてなくて、現在は放置状態にある。
ガラスが割れたままになっていて、ベニヤ板を打ち付けている窓もある。
建物を解体して売るしかないのだが、建物解体費用の都合がつかない。
売れるめどが立ったら壊して引き渡すか、解体費用を差し引いた額での購入希望者を探しているのだが、現在の建物の傷み具合が酷くて、長い間商談がかかっていない。
冒頭の電話は、国から補助金で家を壊すことができるから家を壊させてくれないかという話しが来ているということで、私に真偽のほどを確かめるための電話だった。
なんでも、国が解体費用の全額を補助してくれるから、まかしてもらえれば見積もりを上乗せして解体費用以上の助成金がもらえるという話しだったそうだ。
そんなバカな話はない。
私の知識では、空き家になってる老朽化した建物は社会問題になっていて、危険な建物の解体費用については全国の各自治体で補助金を設けている。
建物解体助成金は地方自治体が行っている事業で、国の助成制度はなかったはずだ。
助成金の対象となる条件も各自治体によって定められていて、助成金の額も工事代の一部を助成してくれるだけ。
通常、工事代の〇〇%まで、かつ上限〇〇万円までという規定になっているはずだ。
当地(宮崎県の北端の町・延岡市)にも「不良空家除去補助事業」という制度がある。
助成額は工事代金の80%、上限80万円までである。
対象の建物の条件として、建物の不良度の基準は市の職員さんが現地調査して判断するというのは当然のことだが、一番問題になるのは道路に接していない土地や土砂災害特別警戒区域内にあるなど、建替えなどが困難な土地であることという条項だ。
道路に接していない土地も、土砂災害特別警戒区域も、建物の新築はできない。
この条項を読んだだけで、悪徳不動産屋としては当地の補助金制度は仕事には役にたたないと頭の中に記憶としては残さなかった。
しかし友人からの電話は、国の補助金と言うこと。
工事費を上乗せして全額補助金でまかなうというのは、違法で詐欺罪にもかかる論外の話だが、私の不勉強で国の補助金があるのかもしれない。
話を持ち掛けてきた友達というのは、建物解体を仕事としているようだから、自分に建物を壊させてくれといっているだろう。
小学校の同級生でいまだに付き合いのある友人らしいから、信用のおける友達であれば任せればいい。
相談者が私に相談してきたのは、「こんなうまい話があるだろうか」ということで不安になってのこと。
これがまともな人間の考え方だ。
騙されたと騒いでいる人たちの大半は、自分が欲に目がくらんだ結果。
世の中そんなにうまい話はない。
私は悪徳不動産屋。私の仕事にならないことに余計な口ははさみたくないし、今はつきあいはないが元同級生の仕事の邪魔をして恨まれたくもない。
そこで、こう言ってやった。
「俺は、延岡市の補助金制度があるのは知っているが、それには該当しない。しかし国に建物解体の補助金があることは知らなかった。俺の知識では全額補助するという制度があるとは思わないが、そいつができるというのならやってもらえばいいじゃないか。ただし、申請の手続きすべてをそいつにまかせたほうが良い。ただ、補助金が全額でることは考えられないし、補助金を上乗せするようなインチキな申請をして、補助金詐欺の片棒をかつぐことにならないように注意することだ。」
「大事なことは、補助金申請をするのに手数料がいると言って、先に手数料などのお金を請求されたら断ること」
「もう一つ大事なことは、補助金が出ることが決定したことを確認するまでは、建物解体工事にかからないこと」
「いいか、この二つは絶対に忘れるなよ」とだけ助言しておいた。
相談をしてきた友人は私の話を聞いて、建物解体工事を持ち掛けてきた友人の話は断ると言った。
私は、国に建物解体費用の助成制度はないと思うのだが、ひょっとして私の知らない制度があったのであれば、友達を損させることになる。
私は、そんな心配をしている、情けない気弱な悪徳不動産屋なのである。
お前たちには欲に目がくらむことはないよな
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