悪徳不動産屋日記 自宅で死ぬために知っておきたいこと
日本では8割以上の人が病院で亡くなっているという事実がある。
一方、「人生の最期をどこで迎えたいか」というアンケート調査の結果は、自宅で最期を希望する回答が圧倒的に多い。
どの調査でも6割くらいの人が、最期は自宅で過ごしたいと希望している。
それにもかかわらず、実際に自宅で最期を迎えられるのは2割未満の人しかいない。
そのギャップはどうして生まれてしまうのか。
実は、今の日本ではなかなか自宅で死なせてはもらえないのだ。
また、最近よく耳にする尊厳死で死なせてもらうのも簡単ではない。
尊厳死とは終末期の医療について、死期が近づいたときに人工呼吸器や生かすためだけの胃ろう等の延命治療は施さないでほしいという意思表示をすること。
尊厳死を希望する人は、自分の意思を文字に書いて明示し、家族にも自分の意思を伝えて意思を明確にしておくことが大事だとされている。
しかし、自宅で死ぬためにも尊厳死を実行するためにも、一番重要なことは、重篤な状態に陥ったときに救急車を呼ばないことなのだ。
自宅で終末期の医療を受けている人が延命治療を望まないと意思表示していても、その人が突然重篤な状況に陥ってしまうと、人はどうしても救急車を呼んでしまう。
救急車を呼んでしまうと、こうなる。
救急隊員は救命することを職務としている。
心臓が止まっていたら、直ちに心臓マッサージを施す。
心臓は動き出す。
心停止時間が長くて脳の機能は戻らないかもしれないが心臓は動き出すことがある。
救急隊は患者を救急病院に運び込む。
救急病院は患者の命を救うのが第一だから、即座に延命長にかかることになる。
今は、救急病院に運び込まれた患者が高齢者の場合、器官内挿入や人工呼吸器の装着を望むかを聞いてくることもあるが、多くの場合、家族は「最善の処置をお願いします」と答えることになるだろう。
こんなときに、「父(母)は延命措置を望んでおりません。なにもしないで死なせてください。」などと言える人はいない。
「最善の治療をお願いします」となる。
そうして生命維持装置がとりつけれる。
そして、一度取り付けられた生命維持装置をはずすことは簡単ではない。
かくして尊厳死の希望は叶わず、点滴、人工呼吸器、尿をとる管、脈拍や血圧を調べるためのチューブ類を体にとりつけられ、意識のないまま生かされ続けることになる。
ましてや自宅に戻ることなどできやしない。
もう一つ、やっかいなのは、救急車が到着したときに、あきらかに死亡している状態の場合だ。
すでに死亡している状態のときは、救急隊は警察に連絡してなにもせずに帰ってしまう。
警察が来ると、警察はまず事件性を疑う。
遺族は事情聴取され、現場検証が行われる。
通常は、医師の立ち合いもと、検視官が事件性の有無を検証し、事件性がないと判断された場合には、病院に引き渡され、医師が死体検案書を作成することになる。
遺体検案書は死亡診断書と同じようなもので、これがないと葬儀を行うことはできない。
ここで大事なことは、遺体には一切触れず、そのままにしておくことだ。
たとえば風呂場で亡くなっていたような場合でも、裸のままではかわいそうだからと、服を着せたりベッドに運んだりすると面倒なことになる。
遺体を動かしたことで事件性を疑われ、取り調べを受けることになり、遺体が司法解剖に回されることもある。
とはいえ、通常は大きな問題にはならず遺体検案書を作成してもらえるのだが、肉親を失い気も動転している最中に警察の事情聴取を受けたのでは、亡くなった故人に思いをはせて見送ることなどできやしない。
かくのごとく、今の日本で病院以外で死ぬというのは、なかなか面倒なことなのだ。
病院で死ぬは易く、自宅で死ぬは難いのである。
おもいおこせば、私が子供の頃は、医者の往診があたりまえだった。
夜、急に子供が熱を出すと、家までかけつけてくれるかかりつけのお医者さんがいた。
往診鞄を持って自宅まで駆けつけて診てくれる、かかりつけのお医者さんがいた。
3世帯同居が当たり前で、具合の悪い年寄りを抱える家庭には、往診の医者が訪れて診てくれてていた。
年老いたおじいちゃん(おばあちゃん)は、食事を受け付けなくなり水も飲まなくなる。
そのころには、食べることも水をほしがることもなくなる。
医者は、「そろそろ身内の方に連絡を取っていた方がいいでしょう。水を欲しがるときは少しだけ飲ませてください。無理に食事をさせることはありません。」などと言う。
医者は、いわゆる老衰で亡くなりそうになった患者を、安らかに死ぬための手伝いをしてくれていたのだろう。(これは、今、拙が思うことであって、当時は病気を治しにお医者さんが来てくれているのだと思っていた)
おじいちゃん(おばあちゃん)は苦しむこともなく、静かに眠り続ける。
知らせを受けた身内の者や親戚・知人が家に集まり出す。
それぞれが、「じいちゃん、俺だよわかるかい」「がんばりなさいよ」などと声をかける。
ある日、往診に来た医者は聴診器を胸に当て、「今晩が山ですね」などとつぶやく。
家族は覚悟を定め、おじいちゃん(おばあちゃん)の寝ている布団の周りに集まり、「おじいちゃん、わかる?」「おじいちゃん死なないで!」「おじいちゃん、がっばって!」などと声をかける。
その声が聞こえているのか、おじいちゃんはうなずくように頭を動かしたりする。
いよいよ最期を迎えそうになると、かかりつけのお医者さんに電話する。
夜の遅い時間であっても、お医者さんが駆けつけてくれる。
医者は、寝ているおじいちゃんの脈をとる。
おじいちゃんの寝ている布団の周りには家族や親せきが集まって、「おじいちゃん、死なないで!」などと泣き叫んでいる。
脈をみていた医師は、ふっと脈を測っていた手をはずす。
聴診器を胸に当て、瞳孔を確認し、「〇時〇分」御臨終です。ご愁傷さまです。」と死を告げる。
その声に家族や親せきは、さらに号泣する。
これが普通の見送り方だった。
そして看取ってくれた医者が死亡診断書を発行してくれて、葬儀にかかることになる。
病院以外で亡くなると面倒なことになってしまう今、無事?自宅で死ぬためにはどうしたらいいのか。
まずやるべきことは、かかりつけ医を持つこと。
そして大事なことは、自宅で急に容態が悪くなって亡くなったような場合や、朝起こしに言ったら亡くなっていたような場合には、絶対に救急車を呼んではいけない。
なかなか難しいことだが、救急車を呼ぶのをぐっとこらえて、かかりつけ医に連絡をすることだ。
亡くなって24時間以内であれば、医師が到着する前に失くなっていたとしても、かかりつけの医師が病気による死亡だと確認すれば死亡宣告できることになっている。
そうして、医師が死亡診断書を発行して葬儀の準備にかかれるようになる。
「終活」だなんだと、どう死ぬかの手ほどきの本や雑誌がたくさん出回っているご時世、本気で死を意識しているのなら、まずは、かかりつけのお医者さんを持ちましょう。
そして、自宅で最期を迎えるための手伝や、万一突然亡くなった場合の処置をやってもらえるのかを相談しておくとよい。
24時間対応してくれるお医者さんは見つからないと思います。
市町村で、在宅療養支援病院の設置を進めているようですが、なかなか受け入れ病院が少ないようです。
ちなみに、拙は、日本尊厳死協会の「終末期医療の事前指示書」をそのまま書き写し、署名捺印日付をいれたものを財布に入れて常に携帯している。
そして、そのことは家族にも伝えてあるし、ことあるごとに周りの人にも話をしている。
それは、とりもなおさず自分のためであり、次に家族のためだと思っている。
しかし、現実的には死んだ後のことは自分ではどうにもならない。
死んだ後のことは、なるようにしかならないと思っている。
この2,3日、悪徳不動産屋の、おせっかいなウンチクでした。
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