悪徳不動産屋日記 国有地売却現地説明会
今日は、国有地売却の現地説明会に行ってきた。
数日前の朝刊に、「財務省九州財務局 国有地新聞のお知らせ」という折り込み広告チラシが入っていた。
国有財産に限らず、県や市といった公有財産の売却は原則的には競争入札による競売(公売)が行われる。
人気のある地域に売り物が出ていたので、参考までに説明会に参加してみた。
道路付もよい物件だったので、思いのほか参加者が多かった。
顔見知りの不動産業者が2社、建築関連会社が3社、一般消費者(素人さん)が4,5人といったところ。
参加者には立派な「国有財産の一般競争入札案内」という立派な冊子が渡された。
さすがは財務省。一冊数千円はかけているような立派な冊子である。
案内書には物件の内容の詳細が説明されており、それをもとに物件の現地説明を受けた。
古い住宅を取り壊して土地としての利用が妥当な物件だから、取壊し費用や車の乗り入れを考えた整地費用を計算すると、最低入札価格で購入したとしても、相場より1割から2割弱安いだけだろう。
拙は不動産屋だから商品としての仕入れ、わかりやすく言うと転売が目的である。
一見して、不動産屋としてはあまりうまみのある商品ではないと感じた。
一般消費者が直接購入するのであれば相場より安いには安いが、建物解体、整地を自力でやる労力を考えるとそんなに安い買い物ではないと思う。
物件調査説明には、隣接地の建物が越境しており、またこの土地のブロック塀が隣地を越境しているが、この件に関して売主である国にはそれを理由とする損害賠償責任は負わない。
また、本件土地は道路より1.2mから1.8m高く擁壁が築かれているが、擁壁が建築基準法に適合しているかは不明で調査はしていない。
この件についても、売主である国は一切の損害賠償責任を負わないということになっている。
つまり、時価よりちょっと安く販売するけど、買った後に物件に問題点があることが分かっても、売主たる国は物件に対する責任は一切ないということである。
無責任なようだが、売主である国は宅地建物取引業者ではないので、法律的に売主が物件に対する責任は負いませんよと明確に説明して販売することはなんら問題は無いのである。
入札で落札した人は、財務局が作成する売買契約書により売買契約を締結することになるが、その売買契約書にはくどいくらいに売主は物件に対して一切責任はないですよという内容になっているはずです。
一方、拙ら不動産屋は宅地建物取引業で、このように、売主に一切責任は無いという売り方は許されていない。
もし、物件に-表面的にはわからない欠陥があることが後に判明した場合には、その責任を取らなくてはならないのだ。
だから、1割程度の利益しか見込めないようでは商品としては仕入れられない。
拙の判断では今回の物件は転売目的の商品としての購入するには能わないから入札はしないという結論になった。
不動産屋は、土地ころがしだ、安く買いたたいて暴利をむさぼる悪徳不動産屋のそしりをうけるが、見えない苦労を背負わされている。
仲介業務においても同じこと。
仲介物件にあとで欠陥が見つかった場合、調査義務を怠ったということで損害賠償責任を負うことがある。
不動産屋は人のふんどしで仕事をして高い仲介料をとると思われている善良なるお客さんがいるが、裁判を起こされ、調査ミスを指摘されて手数料以上の損害賠償を負わされることもある。
今回の国のように、見たままのものを売るので後の責任は一切取らないという売買で、もし問題があってもすべて買主の費用負担で処理しなければならない。
手数料がいらないというと、ものすごく得をしたと思うお客さんが少ないくないように感じるが、手数料を払って仲介してもらうほうが結果的に安い買い物になることもある。
これは悪徳不動産屋の切なるため息の言葉である。
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