ずっと空いたままだった物件を取り置きしたとたんに内覧希望
不動産に限ったことではないのだろうが、重なるときには重なるもの。
長い間商談のなかった賃貸物件や、売り物件に、次々と問い合わせが入ったり商談が進みだすことがある。
拙の、不動産仲介の姿勢は、早く買わせようとして急かすことはしない。
一勝に一度の大きな買い物だから、迷われるのは当たり前のこと。
決断に時間がかかるのは当然のことだと思っている。
そのかわり、気に入られたお客さんが、検討するのでしばらく取り置きしてくれませんかと言われても、原則的には取り置きはしない。
これは拙が不動産業に入りたての頃師匠に教えられたことで、全然商談のかからなかった物件でも一つ商談がかかると不思議と別な商談がかかる。
先に商談をしているお客様が取り置きしてくれといって取り置きしている時に限って、買いたいというお客さんが現れる。
そんなとき、取り置きしているお客さんが結局買わないという結論になった後に、待たせていたお客さんと商談を進めようとすると、待っていたお客さんが買う気を無くしていたということが多いというのだ。
拙は、依頼40年余り不動産業に携わっているが実にその通りである。
商談の無かった物件でも、商談がかかると不思議と別な商談がかかるのだ。
この他にも、拙は、師匠の10か条を金科玉条として不動産屋を続けている。
この不動産の取り置きをしないということもしっかり肝に銘じているのだが、ついついお客様の頼みに負けて取り置きの了解をしてしまうことがある。
とりわけ、長い間商談のかからなかった物件については、よもや別な商談がかかるわけはないと、了解してしまうことがある。
しかし、この「よもや」が、たびたび起こるのだ。
今日も、この「よもや」が起こった。
6戸の小さい貸家が建つ賃貸物件があった。
普通車が止められないような狭い駐車場が1台分しかないせいで、3軒が半年以上空き家になっている物件があった。
そのうち一番最初に空き家になった物件は簡単にリフォームをすませ、すぐに入居できる状態にしていた。
その物件が半年たっても次の入居者がみつからないまま、2軒目、3軒目と退去が続いた。
2軒目、3軒目の物件は入居期間が10年以上の物件のため、リフォーム費用が1軒目の空き家が半年も決まらなかったので、2軒目、3軒目のリフォームは保留していた。
そこに先週、予約が入った。
内覧した方が気に入って借りたいという申し出があったのだが、入居は10月中旬を予定していて、今まだ入居金が足りないのでそれまで取っておいてもらえないかということであった。
今年の繁忙期に決まらず、このところまったく商談がかかっていなかったので、家主に了解をとり10月まで待つことにした。
この物件がリフォーム済みの物件だったので、ついてはもう2軒の空き家のリフォームの段取りしなければならない。
その旨家主に連絡をして、リフォームの見積もりにかかることしたが、10月中旬までまだ1カ月半ある。
入居金が少し足りないからちょっと待ってくださいということで正式契約まではしていない。
絶対に借りるので、この物件は押さえておいてくださいということだったが、拙は悪徳不動産屋。
善良なるお客様の約束を真に受けないという性癖がある。
残りの2軒にすぐ商談がかかるわけはないと思い、いつでもリフォームにかかれるように段取りはしたが、着工は少し先に延ばしていた。
そんな矢先、昨日、ホームページを見て内覧希望のメールが入った。
他の2軒があるので、この物件写真を削除していなかったのを見ての電話だった。
問い合わせのあったお客さんには、事情を説明し、まったく同じ間取りの物件があってリフォームをする段取りをしているところなので、ホームページ掲載分と、リフォーム前の物件を一緒に見てもらうことにした。
予約のお客さんは、絶対間違いなく借りるから取っておいてくれと言っていたので、よもや借りないことはないとは思っていたが、キャンセルがあればホームページ掲載の物件を借りてもらってもいいという説明もした。
私の説明を納得してくれたお客さんは、今週の土曜日に内覧させてくださいということになった。
果たして、予約を入れてきたお客さんに確認の電話をしたところ、私の悪い予感の方があたってしまったようだ。
借りようと思っているけど、はっきりした返事はちょっと待ってくださいとの返事。
番迷惑な回答だった。
内覧をしたいというお客さんがいるので、案内してもいいかと聞くと、自分が借りるか借りないかはっきり決めるまで待ってくれという。
これが善良なるお客さんの正当なる要求なのだ。
借りるかどうかわからない状態で一か月以上の取り置きはできないことを丁寧に説明する。
理解してもらえるように丁寧に説明しないと、「待ってくれると言ったじゃないか!」と逆切れする善良なる消費者様もいらっしゃるからだ。
私の説明を理解されたこの善良なる予約者様は、「いつまでに返答すればいいのか」と聞いてこられた。
間違いなく借りるから10月まで取り置きにしてくれという申し込みだったわけで、借りるかどうか迷っている状況であれば取り置きはできませんと言いたいところであったのだが、内覧したお客さんが借りるかどうかはわからない。
借りる可能性のあるお客さんとの関係を打ち切るのももったいない。
内覧希望のお客さんは次の土曜・日曜日の内覧を希望している。
それで、土曜日まで待つことで話しはついた。
やはり師匠の10か条は守らなきゃいけないと、またしても反省。
ただ、拙は、師匠の10か条を忘れたことは無いのだ。
今回も、ふっとこんなこともあるのではないかという思いが頭をよぎった。
しかし、お客さんと話をしていると、みんな善良なる消費者様に見えてくる。
こう見えて(どう見えているかはわからないが)拙は善良なる消費者様の味方。
頼まれればなんとかしてあげたい。
そんなとき、情にほだされ、悪徳不動産屋の看板をとりはらい、師匠の10か条にそむいて善良なる消費者様ごお願いを聞いてしまうことが少なからずあるのだ。
そんな思いも知らないで、善良なる消費者様は平気で自分から約束を反故にしてくる時がある。
そんなときは、常に自分に正当なる事由があると主張されて悪びれることは無い。
そんな時不動産業者が窮地に陥るのは、不動産の取引が双務契約であること。
双務の言葉通り、買主(借主)に対して、売主(貸主)がいるのだ。
約束を反故にされた相手方のお客さんからみると、間に立っている不動産屋がいい加減な話をしていたのだと思うお客さまもいらっしゃる。
かくして、またしても悪徳不動産屋が涙することになるのだ。
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