悪徳不動産屋日記 不動産屋を何と心得る
る忙しい時に限って、仕事の邪魔が入る。
今日は家主さんへの家賃の振りこみ日。
昨日までに済ませておけばよかったのだけど、半分くらい今日に残ってしまった。
なんとか午前中には終わりそうな感じだったのだが、こんなときに限って余計な仕事が飛び込んでくる。
今日は午前中の早い時間に、月に2回の定例の同業者の情報交換会もあって、それを済ませたら残りの家賃振り込みの手続きをする予定だった。
いつもなら私は、はずかしながら、情報交換会の間に電話が入ることなどない暇な不動産屋なのだが、こんな時に限って電話が入る。
着信表示を見ると、去年の暮、貸店舗の相談があっていたお客さんからだった。
予算も少なくすぐに見つけられそうにもない条件だったし、他に多くの不動産会社さんにも依頼しているようで、あえて当社を当てにしているようでも無かった。
またなにか条件に合う物件が出たら連絡してくださいということだったが、条件に合う物件がみつからなくて、今日までなんの連絡も取っていなかった。
電話もしてきたというのは、親切に対応していたから、その後も当社を当てにしていたのかもしれない。
そうだったら申し訳ないことをしたと、私は情報交換会が終わるとすぐに電話した。
「すみません。電話をいただきまして。こちらから電話もせずにいて申し訳ありません」と切り出した。
すると、「いえいえ、いいんですよ。今日は(当社の)売地の看板を見て、その土地のことで電話しました」と言うではないか。
条件にあう貸店舗物件がないから、自分で建物でも立てるのかと思ったが、その土地は市街地からははずれているし通りから引っ込んでいて店舗には向かない。
どんな話なんだろうと思っていると、「その土地に1日車を3台くらい置かせてもらえないか」と言う。
「車を3台、1日だけ置きたいというのは、どういうことですか」と聞くと、近くに貸店舗を見つけて開店セールをやるので、オープンの日にスタッフの車を置かせてもらいたいというのだ。
当方は、まがりなりにも何も探してあげてなかったと気にしていたのに、さっさと他の不動産屋で店舗を借りていたわけだ。
近くにたまたま、当社の売地の看板があったので電話してきただけで、当社が貸店舗の相談に立ち寄っていた不動産屋だということはわすれていたようだった。
これが善良なる消費者様のあるべき姿。
店舗探しに力を入れてなかった悪徳不動産としては、そんなことかとがっかりするやら、ほっとするやら。
この土地は売却の依頼を受けて3年になるか売れていない物件で、依頼者から再三早く売るように催促を受けてきている。
私としてはすっかり売りあぐんでいて、ここ半年くらい報告もしていなくて、こんな相談はかけたくない。
1日だけなら黙って停めておいても、私も気が付かないままだっただろうし、地主さんも気が付かないでいただろう。
私の土地だったら、1日くらいなら無償で使ってもいいと了解するところだが、土地は売却依頼を受けたあずかりもの。
置いてもいいかと聞かれてしまうと、地主の承諾なしに置いてもいいとは言えない。
地主さんは、しっかりしたシビアな法人様である。所有の不動産を管理する部門を持っておられて、空き室や空き地は定期的に掃除したり草刈りをしたりしておられる。
地主の了解もなしに私の一存で停めさせておいて、もし管理部門の人が来てなぜ勝手に停めているのかともめて、不動産屋さんの了解をとりましたと言われるとメンドクサイことになる。
地主さんにお伺いをたてれば、1日くらいならかまわないよと了解はでそうだが、地主さんは手広く不動産賃貸業をやっておられる会社だから、頼むにあたってタダで貸してやってくれとは言えない。
停めさせてくれと言ってきたお客(過去の見込み客であって、今は私の仕事の邪魔をする迷惑な存在←こんなことを思うから私は悪徳不動産屋と言われるのだ)に、『停めさせてくれというけど、賃料は考えているのか」と聞くと、オープンセールの来客用の駐車場は店の近くに借りていて、そこは5、6台停められて一日2,000円で借りているので、それ以上は無い」という。
私がこんな理由で車を置かせてくれといくのだったら、せめて5,000円くらいは出すだろう。
子供の使いじゃあるまいし、地主さんに、タダで貸してくれというのも気が引けるし、1000円でどうですかなんてもっと恥ずかしくていえない。
地主さんを教えてあげるから自分で行って相談しなさいと言いたいところだが、私から言われて来ましたと、こんな話で行かせるわけにもいかない。
地主さんに貸してあげてくださいと頭を下げて頼むか、勝手に車を停めることは許さんと突っぱねるか。
迷うところだ。
どちらにしても、私にはまったく利益のない話なのに、地主さんにお願いして了解をもらったら、ありがとうございますと頭を下げて、地主さんとの貸し借り勘定でいくと、ちょっと借りができる。
地主に聞くこともせずに、私の一存で車を停めることはまかりならぬと断れば、なんと冷たい不動産屋だと恨まれる。
なんともわりのあわない依頼なのだ。
開店セールといえば、事業スタートの最大のイベント。
そのための駐車場とあれば、1万円2万円の価値はあるのではないか。
たった1000円の値打ちしか認めない話を、悪徳不動産屋に持ち込まないでくれ。
当然、私への報酬なんてことは金輪際頭にない依頼なのだ。
人様の土地をたった1,000円で貸してくれと頼んでもらえないかというのだ。
そんな小さな話をタダで私にしてくれというのだ。
悪徳不動産屋を何と心得る!
と思いつつ、断り切れずに地主さんの会社の不動産管理部門の方に電話した。
「このところまったく商談が切れていて、こんな電話で恐縮手なんですが、当社の売地の看板を見て、1000円で、車3台を1日停めさせてもらないか聞いくださいという話がきているんですが・・・・」
資産数十億円の会社に、1000円という話をするのが恥ずかしい。
自分のことだったら絶対にしない。
想定の通り、「社長にはかってお答えします」とのこと。
待つこと1時間。
ひたすら電話を待っていたわけではないが、話の決着がつくまでは気がやすまらない。
そこに「お貸しします」との回答の電話が入る。
「ありがとうございます。当社にお尋ねのあったお客さんに伝えて、直接そちらに行ってもらいますのでよろしくお願いします」
お礼を述べ、依頼者に連絡した。
「了解をいただきました。つきましては、直接地主さんの会社に出向いて、不動産の管理担当の〇〇さんを訪ねてください。」会社の所在地を教えてボランティア作業完了。
他の不動産屋で店舗を借りた消費者様からは「ありがとうございました」との短いお礼の言葉。
こんなものだよ善良な消費者様は。
蚤の心臓の悪徳不動産屋が気に病んで地主さんにお願いした心の負担の数十分の1くらいの感謝の気持ちしか伝わってこなかった。
電話の後、私の携帯電話からこの人の電話番号を消却した。
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