悪徳不動産屋日記 これは不動産屋の仕事ではありません
当社で、日向市美々津町に中古住宅の売却の依頼を受けている。
美々津は神武天皇が大和の国(奈良県)へ向かわれたときのお舟出の地として知られている。
売却依頼を受けている中古住宅は、美々津を走る国道10号線から100メートルくらい坂を上った高台にあり、太平洋を一望できる。
お船出の神話にちなんでデザインされた石灯籠型の灯台、通称美々津の灯台を眼下に見下ろす景勝の地で、私は気に入っている物件なのだがなぜかなかなか売却が決まらない。
そんな中、久しぶりに先日問い合わせが入ったと思ったら、庭に置いてある大きなコンテナ倉庫のみを売ってもらえないかという話だった。
思いがけない問い合わせで、正直相手にしたくはない話だった。
売りに出している中古住宅の倉庫だけを売ってもらえないかとわざわざ電話してくる心境が私に理解できなかった。
倉庫なんてホームセンターかなんかで買えばいい。
売りに出している中古住宅の倉庫なんてなくてもいいはずだから安く譲ってもらえるのではないかというくらいの発想だろう。
私は悪徳不動産屋。こんな話を売り主さんに相談するのはメンドクサイ話でしかない。
私が売り主であれば即座に断るはなし。
しかし物件は私の所有物ではない。
なにがしかの対価の支払いがあるのであれば売り主さんは売りたいと思うかもしれない。
それで、「売ってくれという話ですが、いくらくらいであれば買いたいと考えていますか」と聞いてみた。
すると、「相場はどのくらですか」ときた。
こんな倉庫が頻繁に取引されているわけではない。
繰り返し言うが私は悪徳不動産屋。ストレートに「こんなもの相場もへちゃちゃもないですよ。いくらなら買ってもいいと思っているのですか」と聞く。
すると、「売り主さんはどのくらいなら売ってくれるでしょうかね」と聞いてきた。
悪徳不動産屋は答える。「売り主は倉庫だけを売るなんて考えはないのだから、高ければ売ってもいいと思うだろうし、タダみたいな値段を考えているのだったら売らないでしょう。大した金額を考えている訳ではないだろうし、そんな話の間をとって調整するのもメンドクサイ話で、いくらなら買ってもいいという数字を出せば聞いてあげます。」
すると、「10万くらいだったらどうでしょう…」というので、「10万ですか」と、おそらく私のことだからぶっきらぼうに確認すると、「15万円くらいまで考えます」とのこと。
家がなかなか売れていない状態で、倉庫のみの売買の話で手数料なんかもらえる話ではない。
私にとって手間はかかるが、残念ながら善良なる消費者様から感謝されることもないので楽しい話ではないが、売り主さんとしては15万円なら売ってもいいと思うかもしれない話だ。
それで、売り主さんにはそのまま意向を伝えた。
売り主さんの第一声は「どちらがいいと思います?倉庫があった方が売りやすいか、なくてもいいか。どう思います。」
私が今まで、案内をしたお客さんは、全員倉庫があることはセールスポイントとしてとらえてくれていた。
私は、それを強調した。
倉庫があるとなにかと便利がいいというお客さんばっかりで、倉庫がないほうがいいというお客さんはいなかった。
だから倉庫だけ売ってくれという話は断りましょうかと誘導するつもりで話をした。
売り主さんは考えて返事をしますとのこと。
しばらくして電話があり、15万円なら売りますとのこと。
売り主の返事を、倉庫購入希望の方に連絡。
これまた、考えて返事しますとのこと。加えて、一度コンテナの中を見せてもらえますかとのこと。
ほれほれ、中も見ないで買いますってことにはならないよね。
それから2日、返事がなかった。
15万円なら購入したいといったものの、よく考えたらやめますってことかな。
悪徳不動産屋は、むしろ、そうなってくれることを希望していた。
ところが今日の朝まだ開店前に倉庫のお客さんから(私に収益をもたらせない人なのだけど、お客さんなのか)電話が入った。
今日、中を見せてもらえますかとのこと。
美々津までは車で片道約1時間。
行ってきました。
コンテナについて私は説明を求められても答えるすべを持っていない。
挨拶をかわして、コンテナのシャッターを開けて、勝手に見てもらうしかない。
いろいろ質問を受けても答えようがないので、「私は不動産屋で、これは不動産屋の仕事ではなくて、ホームセンターか古物商の分野の仕事ですから、質問を受けてもお答えできません。どうぞこころおきなく見てください。」と先制宣言。
お客さんは「それは、そうですね」と快諾。
何にコンテナを使うのか。今どちらにお住まいなのか。もともと美々津のご出身なのか。この近辺の土地相場はどのくらいだと考えていますとか、私の聞きたい情報収集をさせていただいた。
結局、想定通りコンテナの購入については即決はされず、検討してご返事しますということで別れた。
往復の時間と内見の時間の3時間とガソリン代を使って、どちらに転んでも私は1円の収入にもならない話であったが、売却依頼を受けているお客さんへのご奉仕と思っての仕事。
ただ、このお客さんとの会話の中で思いがけない情報収集ができ有意義な時間となった。
果たして、倉庫は売れるのかな。
売れることになると、商品の受け渡しと代金の授受。責任は負わされそうだが、その見返りのない仕事。わりにはあいません。
こんな愚痴を言うからこその悪徳不動産屋。
双方がこのブログを見るかもしれないけど、腹に一物は私の主義に合わないものでご容赦いただきたい。
ただし、裏をかくようなことは絶対にしない。
悪徳不動産屋を自負しているが、漫画の正直不動産の主人公の考え方と行動が私に似ているなと思っている今日この頃。
テレビドラマは見ていないが、単行本は現在14巻
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