天然信仰を見直す
当地(宮崎県の北端の町・延岡市)の秋の風物詩「鮎やな」が、今日オープンした。
当地の鮎やなは、市役所から徒歩で5分くらいの市街地のど真ん中に設営されている。
鮎やなには天然の落ち鮎がかかるが、天然ものだけではまかないきれなくて、天然物を食べたいときは予約が必要。
標準メニューは養殖の鮎となる。
一般的には天然信仰が根強く、天然物を重宝する傾向があるが、私は養殖物のほうが好きだ。
天然物が嫌いというわけではないのだが、天然物には外れがある。
天然物は、自然の中で食うや食わずの生活をしてきているから、栄養状態の悪い鮎や、泥を飲み込んだような鮎に出くわすことが少なからずある。
数年前に、鮎漁をやっている人からもらった天然鮎に、やせ細ったものや食味の悪いものが混じっていて、以来私は、目黒のサンマならぬ、鮎は養殖物がうまいと思っている。
実際、今は養殖技術が格段に進化していて、養殖物は品質が安定していて美味い。
もう20年も前になるが、鮎の養殖会社の社長さんと話をしたことがある。
昔の養殖の鮎は、魚粉などが混じった餌を食べさせていたので、臭みがあるなどといわれていた。
また、ふんだんに餌をあたえるから余分な脂のついた鮎になっていた。
しかし、今は研究を重ねて餌も改良され、出荷の前にはえさの量を調整して、肥満状態の余分な脂を落とし、天然鮎が食べる川の苔の成分の餌を与えて、天然鮎のような香りのある鮎を生産しているのだと言っていた。
そういえば、回転ずしで今一番の人気は、サーモンなのだが、寿司ネタでサーモンを食べられるようになったのは養殖技術が発達したおかげなのだ。
天然のサケ・マス類には、まれに寄生虫がいるので、以前は加熱するか、ルイベのように凍らせて食べるしかなかった。
寄生虫がいない飼料で養殖することにより、サーモンの刺し身が普通に食べられるようになったというわけだ。
日本には、「天然信仰」があって、天然物に比べて養殖物は味が落ちると思っている人が多い。
しかし、食べ比べても、見分けがつかないほど養殖ものの品質は向上している。
満足に餌にありつけなくて痩せひぼなえた天然物より、養殖の方がうまいということもある。
現に、近畿大学が開発した養殖マグロは、たっぷりの餌をくらってトロの部分が天然物より多くて、味も天然物に負けないものになっている。
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