藤井聡太八冠を見直す
にわかラグビーファン。にわかバレーボールファン。
日本選手の活躍のたびに、テレビが生み出す、にわかファン。
ひごろ、将棋の話題なんて、少なくとも私の周りでは一切聞かない。
それなのに、藤井聡太棋士の活躍の度に将棋が大きな話題になる。
達成するだろうという、大方の予想通り藤井名人が八冠を達成した。
昨日の夜のニュースから、今朝のワイドショー、藤井八冠誕生がトップニューだった。
イスラエル、ハマスの戦争より、大きなニュースとなっていた。
藤井棋士が大きなタイトルを取ったときのインタビューへの解答が、すこぶる謙虚であると言われるが、斜め目線の正確の悪い私には、藤井棋士の謙虚な回答を素直に受け取れなかった。
一見、謙虚に見えるけど、自分の力はまだまだこんなもんではないのだという自慢に聞こえてしまうのだ。
今朝の朝日新聞では、藤井八冠誕生に1面の3分の2を割いていた。
さらに、話題の人をとりあげる「ひと」というコーナーでも、藤井棋士を取り上げていた。
「ひと」は署名入りの記事だが、記者は藤井棋士が話題になりはじめた16歳の頃のインタビューに対する藤井棋士の答えに思いをはせていた。
改元前の年、記者は、将棋の世界で三年小記録を続ける藤井棋士に対して、平成で最も大きな出来事は何だと思うか、と尋ねた。
長考に沈んだ後、当時16歳の少年は言った。
「9・11の(米同時多発)テロはすごく大きな出来事だったように感じます。アメリカとソ連のイデオロギー対立からの世界の変化の象徴だったのかなあと」
生まれる前年のニュースを挙げる関心。高校生らしからぬ視点。
突拍子もない質問と2分以上も向き合い、答えを導く真摯(しんし)さが、問うた記者の心に今も残っているとあった。
この記事を読んで、私の藤井感は大きく変わった。
この記事を読む前に、私が同じ質問を受けていたらなんと答えただろう。
平静で最も大きな出来事と言われて、なにを思い出したか。
9・11は思い出さなかった。
敢えて、今、落ち着いて考えたとき、私が一番大きな出来事として思い出すのは3・11の東日本大地震だろうか。
実際には、私は、急な質問に頭が混乱してなにも思い出せなかったかもしれない。
私が「ひと」を読んで感じたのは、藤井棋士が9・11を一番大きな出来事として答えたことより、むらがるインタビュアーたちの、将棋のことだけにおさまらない突拍子もない質問にも真面目に答える藤井棋士の態度だった。
私のねじ曲がった藤井感は間違いだったようだ。
彼は、彼が発する言葉通り、真摯に人生を生きているのだと見直させられた。
同時に、私は、すこぶるいい加減に生きてきたなと反省させられる今日の出来事であった。
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