悪徳不動産屋日記 何が何だかわからない
突然、ドアを開けて「ちょっとお伺いしたいけど、いいですか」と言いながらお客さん?が入ってこられた。
「はい。どういうことでしょう。」と私が応対に出ると、「土地の値段が知りたいんだが・・・」
土地の価格が知りたいというのは、土地の売却や購入を考えている場合のことが多い。
そのほかには、相続や離婚で財産を分ける時にも土地の価格を調べる必要がある。
中には、自分の財産はどのくらいあるのかだとか、親が死んだらどれだけ財産がもらえるのかといったこともあるだろう。
土地についての紛争をかかえている場合も土地の価格が必要になる。
「土地の価格をお調べになるのは、土地を売るか買う予定があるのですか」と聞くと、「いや、別に何の予定もないが大体どのくらい知りたいだけ」という。
少なからずある回答だが、このような回答に、ASDの傾向のある悪徳不動産屋の私の神経は逆立つ。
「何の予定もない人が、土地の値段を知りたいなんてことはないでしょう」
しかし、私も身の程はわきまえている。
不動産屋を信用していないという人種もいらっしゃるのだ。不動産屋に、うかつに売る予定や買う予定があると言うと、売れ売れ、買え買えとうるさくつきまとわれるという心配をする人。
いらだつ気持ちを抑えながら、「場所はどこですか」と尋ねると、「〇〇町あたりだ」という。
「〇〇町は広いけど何丁目ですか」と聞いても、「だいたいでいいから」といって何丁目すら答えない。
こうなると、私にとって目の前の人は話すにあたわない人になってしまう。癇癪を起してつっけんどんな対応になってしまう。
しかし悪徳不動産屋も寄る年波、多少は温厚になってきている。
〇〇町というと、1丁目から6丁目まであって広い。住宅開発がすすんでいて人気のあるエリアでもあるが、昔からの道の狭い集落もあれば、山を背負って土砂災害警戒区域に指定されている区域もあるし、市街化調整区域で家が建てられない地域もある。
幹線道路に面した商業地や、新しく区画整理された土地であればなら坪20万円前後もありえるし、比較的最近の造成で道路が広くて環境の良いところであれば坪17万円といったところ。
しかし古くからの集落で道の狭いところであれば坪10万円前後、さらには市街化調整区域で建築不可の土地であれば坪1万円でも買う人は少ないだろう。
同じ場所でも道路状況、日当たり、学校、病院、買い物の利便性で価格は違ってくる。
そんな説明をして、具体的な場所を教えてもらわないとなんとも答えようがないという説明をしたのだが、「そんな詳しくわからんでいい。だいたいのところでいいから教えてくれ。」と言う。
〇〇町のエリアの標準的な土地の価格を教えてもらえばいいという主張なのだ。
そんな身勝手な話はない。
こちらにも専門家としてのプライドもある。
なにかで紛争を抱えている場合や、個人間の取引で高い方が自分の利益になる場合もあれば、安い方が利益になる場合もある。
専門家に知識を無料で教わろうというのに、その相談相手のことが信用せずに、自分の名前も言わなければ、物件の具体的な所在も明らかにしない。
あの不動産屋がこれくらだと言っていたといって、自分の都合のいい使われ方をしたくはない。
うかつに答えることはできない。
10年前の自分だったら、怒りの感情を抑えられずに、塩をまいてお帰り願ったところだ。
しかし寄る年波、すぐにキレル悪徳不動産屋も多少は温厚になってきている。
「うーん。どんなもんでしょうかねー。」と話をはぐらかせて、沈黙を決め込むことにした。
来訪者は、気まずい雰囲気を感じたのか、「教えてくれんなら、いいわ」。
捨て台詞を吐いて出ていった。
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