悪徳不動産屋日記 私のマンションを売ってもらえる
お昼過ぎ、電話が鳴った。
「はい。不動産情報館です」といって電話に出ると、相手は「お世話になります。こちらは〇〇エンタープライズ(架空名)の鈴木と申します」と、おしゃれな会社名と自分の名前を名乗る。
住友銀行だとか三菱商事だとか、はたまた鈴木商店だとか、日本語で聞き取りやすい会社名なら問題なく聞き取れるのだが、外国語が混じった会社名での電話だと、会社名が聞き取れないことが多い。
それで毎度のように私は、「会社名が聞き取れなかったんですが、なんでしょうか」と聞くことになる。
それに対して再度会社名を名乗ってはくれるのだが、早口でしゃべられると、2度目でも聞き取れないことが少なくない。
私はいい加減に話をすすめていくことはきらいなもので、そんな場合には聞き取れるまで、3,4回聞き直すこともある。
だいたいの場合、電話をしてたきた目的は電話の主の営業だとはわかる。
私が相手の会社名がわかったところで、電話の要件となる。
今日の電話は、私が所有しているワンルームマンションを欲しいお客様がいらっしゃるので、売っていただけないかという要件だった。
この内容の電話は1年に3~4度はかかってくる。
ここ数年で、同じような内容の電話を10回以上受けている。
手口は似たり寄ったりである。
おおむね、「当社は賃貸マンションを主な仕事しておりまして、あなたさまがご所有のマンションを欲しいと言っておられるお客様がおられます」というような内容だ。
今日の電話は、「180万円であれば買うというお客様がおられます」というトークだった。
このマンションと言うのは、専有面積18㎡という極小のワンルームマンション。
私が所有していたアパートの入居人を退去させる際に、退去先としてやむを得ず購入したワンルームマンションで、正直言って5年前に180万円で買ったもの。
180万円なら迷わずに売りたいところだが、電話の主の話は真っ赤な噓。
そんなお客さんがいて電話してきているのではないのだ。
このマンションの家賃の相場は3万円程度。私の部屋は32,000円で貸している。
この場合、年間家賃収入が384,000円。
180万円で購入しても、年間の管理費、修繕積立金を差し引いても表面利回りは15%くらいある。
200万円以下という低額投資だから、若い人でも手をだしそうな投資物件として商談するための物件を集めているだけの話なのだ。
私の部屋のお客さんは、保証人も身寄りもいない一人暮らしの方で、部屋いないということで市役所の福祉課から頼まれて、この人を引き受けるためにずいぶん前に購入した物件で、32,000円で借りてもらっている。
18㎡という広さは、現在当地(宮崎県の北端の町・延岡市)での賃貸条件としては狭すぎる物件だから、空き室ができるとなかなか決まりが悪くて2万円台で募集している部屋もある。
電話の不動産屋は、このマンションの状況も承知の上で、とりあえず売主が売ってもいいかなと思う高値で買うお客さんがいるという話で所有者をつりこむための営業をしているのだ。
所有者がその気になって売却を依頼すると、しばらくすると、予定していたお客様とな話はだめになりましたとかなんとか言って、しばらく泳がせておいて、価格の見直しが必要ですという流れになる。
不動産屋の仕入れ作業なのである。
「ひかえろ!ひかえろ! こちらにおわす御方をどなたと心得る!おそれおおくも、宮崎県の北端の町・延岡市の悪徳不動産屋にあらせられるぞ!」という心境である。
しかし寄る年波、最近の私はやさしい。
こんな電話には、「いいですよ。売りますよ」と即座に答える。
電話の先の若い営業マンが嬉々とした声になる。
180万円で売れないこともないだろうが、180万円と言うのは、右左に売れる価格でもない。
敵は、とりあえず高値で売れるとつりこんで、売却の依頼を受けたら、なかなか売れないと言って価格を引き下げさせようという作戦なのだ。
1日に数十件、百件もの電話セールスをして何件成果があがるのだろう。
この若手営業マンは、無知な田舎者のお客さんがひっかかったと喜んでいるところだろう。
そんな人のいい営業マンを、喜ばせすぎるのは罪作りというもの。
少しこちらの手の内もお知らせしてあげる。
「私はね、こちらで不動産屋を経営しているんですよ。私の経験では180万円ではなかなか売れないと思いますよ。だけど、あなたの方に180万円で買うと言っているお客さんがいるという話だから乗っかっているので、それだったらどうぞ売ってください。買うと言っているわけだから値引きの話には一切応じないからね。手数料は割増しで払ってあげるよ」と付け加えることにしている。
不動産屋と名乗れば、それは恐れ入りましたと殊勝な態度になるかと思いきや、人の言葉などみじんも意に介さないようす。
「ありがとうございます。さっそく商談に行ってまいります」などと言っていた。
きっと、すぐに、お話していた商談が何かの都合でだめになりましたという報告があるのだろう。
そして、他にもお客さんがいるので専任媒介契約を締結してくださいとか、次には価格の見直しをしていただけませんかという話をしてくるのだろう。
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