悪徳不動産屋日記 負動産というものは無いと思っていたが
負動産という言葉がある。
親が残してくれた家や土地の管理や処分に多大な労力とお金がかかってしまって、相続財産がマイナス財産になるという意味を表現する言葉だ。
しかし私は、元来、売れない不動産はないと考えてきた。
売れないのは、そこそこ売ってなにがしかの利益を出したいという欲があるからであって、タダみたいに安くすれば売れると思っていたのだ。
私は、相続した家などについて相当数の相談を受けてきた。
その多くは、相続した家の売却の相談だった。
相談の多くは、「こんな古い家、売れるでしょうか」とか、「どのくらいで売れるでしょうか」という相談だ。
私は、前述のとおり「売れない不動産はない」という考えであったから、「売れない不動産はないですよ」と答え、売るためにどうしたらいいか、また売れる価格がどのくらいになるかという助言をすることになる。
売却にあたっては、どのくらいだったら売れるだろうかという価格査定をする。
私の査定方法は、売る人はこのくらいで売りたいだろうなという価格と、買う人はこのくらいの価格を考えているだろうなという両面からは査定することにとしている。
100%の現実として、売る人は1円でも高く売りたい、買う人は1円でも安く買いたいと思っている。
育ちが良く良識の権化と言った体の方でも、いざ取引となると、人間の本性があらわれる。
お互い、なかなか条件をゆずらないで厳しい交渉が入ることが少なくない。
しかし、それはあたりまえのこと。
人生で一番の高額な買い物なのだから、数百万円、数十万円価格の交渉がはいることも少なくない。
この相反する両者の欲の狭間で話をまとめるのが私の仕事だと思っている。
だから、こんな家買う人がいるだろうか、売れるものだろうかとおっしゃっていたお客さんが、いざ私の査定をすんなり納得するかというとそうはいない。
私の査定価格をはるかに上回る価格を想定している方が多い。
「そんなに安くは売りたくない」「近くでもっと高く売れた例を知っている」となるのだ。
私は悪徳不動産屋。人がそう思っていることは身に染みて思い知らされてきている。
だから、売る方が思っているだろうなという価格と、買う方が買う気になるだろうなという2面から価格査定をするようにしているのだ。
しかしお客さんは、買う方のお客さんが思っているだろうなという価格の説明を、不動産屋が値切り倒しているのだと勘違いする傾向があってなかなか納得しない。
そこを、これはあくまでも買手さんはこう思うだろうなという価格なんですよと、価格の実態を理解していただいて、とりあえずは売主さんの希望する価格でお預かりすることになるというのが私のやり方だった。
根底には、「売れない不動産はない」。
売れないのは売主が欲張って、設定価格が高いからであって、売れるべき価格になれば売れると思っていた。
極端に言えば、タダどうぜんに安くすれば売れる。ただで売れないものはないと思っていた。
「思っていた」。はい、過去形です。
最近、タダでも売れないという物件の相談に少なからず遭遇するのだ。
壊れかかった家があって解体して更地にしないと売れないのだが、建築基準法で再建築ができない土地。
建築はできるが、道が狭かったり、利便性が悪くて、家を解体費用が土地代より高くなるという物件もある。
町の中心部の商業地で、土地の値段はそこそこつくのだが、土地いっぱいに鉄筋コンクリート3階建てとか4階建の老朽化した建物が建っているので、解体費用が高額になって土地代で解体費用が賄えないということもある。
「負動産」はないと思っていたが、「負動産」になってしまうこともある。
しかし私は物を捨てることができない年代の不動産屋。
知恵を絞れば、「負」とまではならないこともある。
私は物を捨てることができない世代の不動産屋。
手っ取り早く解体しての売買だけでなく、古い建物をなんとか生かせないかを考えて、不動産を「負」にしない売り方に知恵を絞っている。
ただし、不要不急の不動産は早めに処分の方法を考えることが肝要。
「売れない不動産もある」と思い直している、今日この頃の悪徳不動産屋である。
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