机上の電話が鳴った。
ちらりと着信電話番号を見ると、市内の固定電話の番号からであることが分かった。
最近は、固定電話から受ける電話は少ない。
受話器に手を伸ばしながら着信した電話番号を見ると、電話番号の下4桁が0110となっている。
何か見たような番号だなと思いつつ受話器を取った、その瞬間、これは警察署の代表電話番号ではないかと気づいた。
何か警察にご厄介になるようなことをした覚えはない。
もしかして、家族の誰かが交通事故にあったのか。
ひょっとして、気が付かないまま交通違反でもしたのだろうか。
それとも、管理しているアパートで事件でもあったのか、はたまたアパートの住人が問題を起こしたのか。
それでなくても、町を歩いていて警察官とすれ違うと、何も身に覚えが無くても緊張してしまうし、車の運転中にパトカーの姿が見えるとスピード違反をしていないかとブレーキを踏んでしまうものだ。
ADHDの私の頭の中は運動会、警察からの電話に、一瞬にいろんなことを想像してしまう。
心臓がきゅっと縮まる思いだ。
しかし、どう考えても私が警察の御用になル幼なことはしていない。
気持を整えて電話を取る。
「はい、不動産情報館です」と電話に出ると、相手は案の定、「こちらは延岡警察署です」と名乗る。
気持は冷静によそおっているが、私の心の緊張感はマックス。
「はいなんでしょう」
「〇〇町に、御社が管理している駐車場がありますよね]
ちょっと一安心。私が起こした問題ではないようだ。
駐車場内で車どうしがぶつかったのか、それとも車上荒らしでもあったのか。
「はい。その駐車場でしたら当社で管理していますけど・・・」
続く警察官の言葉は、バラエティ番組のお笑い芸人だったらドタッとこけるようなセリフ。
私の緊張の糸は一瞬でほぐれて、お笑い芸人よろしく電話を持った手をガクリと倒してしまった。
「駐車場に無断で車を停めている人がいるのですけど、誰が停めているかわかりませんかね」というのだ。
契約者の車も、全部ナンバーを控えているわけではない。
駐車場の管理をしていると、契約者から無断駐車をされていて自分の車が停まらないので、なんとかしてくれという苦情を受けることがある。
自分は駐車場を借りているお客だ!すぐに何とかしろ!」と、どなりつけてくる人が少なくない。
自分の車が停められないと困るだろうし、腹立ちはわかる。
しかしそう言われても、契約者の車のナンバーはわかるが、無断駐車をしている人がどこのだれやらはわからない。
一方、警察は車のナンバーから所有者がわかる。
だからこんなとき、不動産会社として警察にお願いすることもあるのだが、そのときの返事は「警察は民事の問題には関与できないので、自分でなんとかやってくれ」と言われることが多い。
それを説明しても、「自分は金を払って借りているんだから何とかしろ」と、許してくれないお客さんも、また多い。
それで当社の駐車場契約書には、「無断駐車については、地主及び仲介業者は一切責任は負いません」という条項を付けている。
このことは、契約締結前にきっちり説明することにしている。
納得していただけないお客様には、「無断駐車は警察に頼んでもなかなかすぐに撤去はできないのですよ。『すぐに無断駐車をどけさせろ』と言うお客さんがいますが、私にはできないのです。だから、これが納得のいかないお客様には駐車場はお貸しできないのですよ。」と説明して、納得していただいたお客さんとだけ契約をしている。
加えて、警察は、これが管理不動産屋の仕事だからと思って協力してくれないのかもしれないという気がします。
経験としては、お客さんが警察になんとかしてくれと厳しく注文をつけると協力してくれているようですよという余計な助言をすることはある。
実際、今回の警察の方が動いたのは、この駐車場を借りている人が警察に苦情の電話を入れたのがその理由だった。
それにしても、不動産会社に「無断駐車の犯人はわかりませんか」と警察の方が聞いてくるのはお門違いですよね。
それを教えて欲しいのは私たちの方です。
警察の方はナンバーから所有者を見つけることができるんですものね。
困り切って警察に問い合わせをしても、それは個人情報で教えられませんと言われてしまいます。
そして、「警察は、民事のことには介入できません」ということもよくある話です。
これは警察の怠慢ではないのです。
警察には、野良猫がいて迷惑だからなんとかしてくれとか。犬がはねられて死んでいるのでかたづけろとか、道路にゴミが散らばっているからなんとしろとか。
とても警察の仕事と思えないようなことでも行ってくるヤツがいる。(というようなニュース報道を見たことがある)
民事のことや、刑事の範疇でも事件性の小さい軽時のことに全部掛り合えないのは知っている。
だから、ひょっとしたら管理している不動産屋で無断駐車をしている人がわからないかなと、わかり駐車してどこかに行ってしまった人のことは、多少神がかり的な神通力をもっている悪徳不動産屋の私にもわかりません。
ともかく、なにごともなく平穏に終わった今日の出来事でした。
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